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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 家族の記録

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王太子の後悔 遠い昔の記憶 後編

私はクロード・フラン。

愛しい婚約者との未来のために多忙を極めるフラン王国の王太子である。


相変わらずサラ様もレオも王家の執務を拒否している。

おかげで私は多忙を極めている。父上は二人になにも言わない。ただ穏やかに笑うだけだ。

レティシアがステイ学園入学とともに王太子の婚約者として社交を全面的に引き受けてくれてからは、私の執務は少し楽になった。

ただ、今まで側にいたリオとは距離を置くことに決めたらしい。

私の婚約者だからリオとのことが醜聞になるのを恐れたらしい。

リオは反対したけど、レティが折れなかったらしい。取り巻きに何か言われたのかな。



ただ彼女が無邪気に笑うのはリオとエイベルの前だけだから心配だ。学園は平等だからといくら話しても彼女は私の前では貴族の仮面を外さない。

リオは彼女は意地っ張りだからと笑っていた。


リオは頼りになる友人だけど、レティとリオの関係に嫉妬していた。二人は気づいてないだろうけど。

私も、臆病でレティに素直な気持ちを伝えられずにいた。

彼女はいずれ私と結婚するという余裕もあったから。


彼女が3年生の時に訳ありのルメラ男爵令嬢が編入してきた。

ルメラ嬢は素直で無邪気な人だった。彼女を見ながら、昔のレティを思い出すこともあった。平民育ちの訳あり男爵令嬢は学園に溶け込むのは苦労するだろうと時々気にかけていた。

それがレティの誤解を招くとも気づかずに。

レティは淑女の鏡みたいな人だからルメラ嬢のマナー違反を注意していた。他の令嬢達はルメラ嬢をあざ笑うだけ。ただルメラ嬢には男性の取り巻きが多かったから、レティに無体を働かないか心配で一人の影に監視をさせていた。レティがルメラ嬢と揉める時は教えるように命じていた。

まさかその影はレオの手先だとは思いもよらなかった。

レティはルメラ嬢が来てからは私と距離をおくようになった。

確実に色んなことを誤解している。リオの言うレティの最大の欠点は一度思い込むと止まらない暴走癖の意味がよくわかった。

外交のため私とリオは5日ほど学園を留守にするが、エイベルがいればレティは大丈夫だと思っていた。



外交から戻りレティに会いにいくとレティの姿が、見当たらない。外泊届けも受理されておりレティも公務でいないのかと思われていたらしい。ルーン公爵家に確認するとレティは帰っていないらしい。

レティにつけていた影も消えた。学園の門の記録を調べるも、レティが出かけた記録はなかった。リオがエイベルを連れて戻ってきた。


「殿下、ご用とは?」

「レティを知らないか?」

「それは・・・・」


エイベルが言いよどむ。これは何か知ってるな。

エイベルはわかりやすい。


「お前、レティシアになにをした?隠しとおせると思うなよ」


エイベルはリオに逆らえないから任せればいいだろう。


「俺は殿下とリアナのために。リアナがレティシアが怖いと泣くから。クロード殿下とリアナの将来のために彼女は不要だと」

「本気でそんなこと思ったのか」

「彼女は嫉妬でリアナに冷たくあたり、怪我までさせた。そんな王妃は不要と。クロード殿下のためにならないなら排除すべきだと」


リオが掴みかかっている。


「お前、シアがそんなことするかよ!?。誰よりも貴族としての務めを意識していた彼女が。」

「俺だって最初は信じられなかった。でも実際レティシアはリアナを糾弾していた。庇護すべき相手への態度じゃない」

「シアは彼女が平民なら放っておいたさ。ただ貴族なら許されないと誰もが見放した彼女に規則を教えていただけだ」

「嘘だろ。それにリアナは怪我させられたって」

「裏をとったのか。目撃証言は」

「それは・・・・」

「お前、傍でシアの何を見てたんだよ。それにシアの王妃としての素質を決めるのはお前じゃないだろう」


リオも頭に血が上っているな。いつも冷静な彼が。

今はそんなことより時間が惜しい。


「リオ、落ち着いて。私はレティに何があったか知りたいだけだ。」

「申しわけありません。殿下」

「エイベル、嘘は許さない。何があったか話してくれ」


事情を聞くと、私とルメラ嬢のためにレオが動いたことを聞かされた。リオがエイベルを殴ったのは咎める気は起きなかった。私には人を見る目がなかったみたいだ。エイベルはレオがレティと消えた場所まで知らないみたいだ。役にたたない。影に命じて学園内を探させた。

レオが私のために動くはずがない。

しばらくして彼女が学園の地下室から発見された。真っ青な顔をして眠っていた。

リオが抱えて医務室に運んだ。衰弱と魔力不足による意識不明。

リオが魔力を送るも顔色は回復しない。体も冷えたまま。

影にレオを拘束し王宮に連れていくように命じる。

彼女を連れて転移魔法で王宮に向かい医務官に任せる。

ここなら充分な医療を受けられるから。

レティの傍にいたいけど先にすますことがある。



影が連れてきたレオを執務室で迎える。

人払いをする。レオは魔道具で拘束されているので危害を加えられる心配もない。



「お帰りなさいませ。兄上」

「ああ」

笑顔をつくる気もおきない。レオは楽しそうに笑っている。

「どうされました?」

「何をした」

「身に覚えがありませんが」


どうするか。レオの顔をじっと見て思考を巡らす。沈黙を貫くとレオが突然笑い出した。


「やはり俺の見立ては正しかった。愉快だ。そんなにレティシアが大切でした?。はじめて俺のこと見ましたね。兄上」


歪んだ顔を向けられる。


「レティシアになにをした?」

「母上特性の魔石をしこんだ部屋に監禁しただけです。いつも人形みたいなレティシアが狂って衰弱していく姿は見ものでしたよ。兄上にお見せできないのが残念でした」


「お前!?」


幸せそうにレオが笑う。


「その顔が見たかったんです。憎んでくださって構いません。」


ここで取り乱してもレオを喜ばせるだけだ。動揺を隠し無表情をまとう。兵を呼び、レオを面会謝絶で自室に閉じ込めておけと命じる。

立ち去るレオが歪んだ顔で「この件の黒幕は私でも母上でもありませんよ」と笑いながら連れられていった。

レオでもサラ様でもない・・。

まさか。嫌な予感が頭をよぎる。

父上の執務室にむかう。



執務室に行くと私の顔を見て父上が人払いをした。

「クロード、どうした?」

「父上、はかりましたか?」


父上が愉快に笑う。私の嫌な予感は当たりだ。


「気付いたか。さすがだな。して新しい婚約者はどうする?」

「私の婚約者はレティシア嬢ですが」

「彼女は醜態をさらした。クロードではなくレオを選んだんだろう?」

「ありえません」

「そなたが彼女を大事にしていたのは知っていたが、他にも令嬢などいくらでもいる」

「父上も彼女を認めていたのではありませんか」

「婚約者としてはな。ただお前たちの手落ちだ」

「手落ちとは?」

「聡いお前にしては察しが悪いな。たまには甘やかしてやるか。

私は二人がどんな風に王宮を掌握していくか見ていたのだよ。アリアとサラの対立、クロードとレオの確執。それをそなた二人は放置していた。」

「それは父上の領分ではありませんか?」

「私は掌握した上で好きにやらせている。丁度よい試練だったしな。執務が忙しかったのはわかるが、いつまでも目を背けるべきではなかったな。」


確かに。考えつきもしなかった。


「お前がレティシアを好いていたのは知っていたよ。ただ執着しすぎた。お前は国とレティシアならレティシアを取るだろう?」

「それは…。父上だって母上達を大切にしているでしょう?」

「国のために必要だからな。だが私は国の害になるならためらわずに捨てられる。」

「そんな・・。」

「クロードは聡明だが時々視野が狭くなる。成人までに新しい婚約者は決めればいい。レオのことは好きにせよ。」

「私がレオを殺してもいいんですか?」

「レオはお前の手駒だ。どう事を収めるか楽しみにしている。」

「陛下はレティシアもレオの命も些細なものと?」

「そなたが立派な王になるための贄になるなら本望だろう。レティシアもクロードの役にたちたいが口癖だったからな。手に余るなら私が手をまわすが」

「陛下の手を煩わせることはありません。失礼します」


狂っている。あれが賢王と慕われる父上なのか。


レティのもとに向かうと彼女はベッドで眠っていた。ただ目覚めるかはわからないそうだ。

さいあくだ。陛下にとってレティシアもレオも捨て駒か。

俺も駒であることに変わりはないか。

興味がないからと放っておいた自分が腹立たしい。

もし母上とサラ様の仲を修復していたら結果は変わっただろうか。

痩せた彼女の頬に手をあてる。冷たい。

レティならどうするだろうか。

「力不足ですみません。私のことは気にせず殿下に相応しい方を選んでください」って言うかな。

君に好きだって君のためだけに王を目指していたって言ったら「お戯れを」って笑って諭されるかな。

私が折れなかったら困った顔で「仕方ないですね」って言って笑ってくれるかな。

リオへの嫉妬を話したらどんな顔を見せてくれたかな。苦笑して「単なる従兄妹ですのに」って言うかな。

レティ、話したいことがたくさんあるんだ。目を醒ましてくれないか?

彼女は決して目を醒まさなかった。



後日、ルーン公爵が彼女をルーン公爵邸に連れて帰った。

私の前にはレティシアとの婚約解消の書類がある。

陛下とルーン公爵で決めたそうだ。あとは私がサインをするだけ。

陛下はこの件でルーン公爵家に罪を与えないことを決めた。

肝心のレティシアが目を覚まさなければ裁けもしない。

レティシアとレオの不祥事が噂されている。

私への裏切りの罰として投獄の話も出たが握りつぶした。


一向に婚約解消のサインをしない私に宰相であるルーン公爵が訪問している。


「殿下、レティシアのことは気にしないでください。あの子は醜聞に負けるような弱い娘ではありません」

「ルーン公爵、すまなかった」

「頭を上げてください殿下。不肖な娘を大事にしてくださりありがとうございます」

「私は、彼女以外を妃に迎える気はない」

「おやめください。それこそレティシアが悲しみます。娘は誰よりも王となる殿下を支えたいと思っていましたから。自分が殿下の足枷になるなら迷わず自害するでしょう」


さすが父親。よくわかっている。彼女ならやりそうで否定できない。

レティ、この王宮には君以外に私の言葉を聞いてくれる人間はいないんだよ。


「ルーン公爵もこの婚約に反対?」

「はい。一度でも醜聞を持った娘を後宮にいれることはできません。陥れられたとしても防げなかったのはレティシアの失態です。娘には正妃の座は重たかったのかもしれません。私の教育不足で、殿下のお手を煩わせて申しわけありません」

「頭をあげてくれ。私がこの書類にサインをしたら彼女はどうなる?」

「ルーン公爵邸で目覚めるのを待ちましょう。恥ずかしながら私も、娘が可愛いので投獄や追放などは許しませんよ。」


公爵が守るから彼女のことは心配するなと言われているのか。


「もし目覚めたら?」

「レティシアを後宮にいれることはありません。陛下が許さないでしょう。醜聞があってもルーン公爵令嬢ですから縁談には困りません。レティシアのことはお忘れください」


やはりルーン公爵も父上側か。味方がいない。ため息をつきたい。

レオと逆の立場に生まれたかった。

王位なんていらない。レティが国のことを大事にするから、よい国を作ろうと思った。

私のために努力するレティに恥じない王になろうと。

でもそのレティがいない。


父上が国のことを一番に考える姿勢は尊敬する。ただ私には無理だろう。

義務感だけで王が務まるほど甘くない。

そういえば陛下はレオのことは私に一任すると言ったな。

甘い私がレオを殺すなんて思っていないんだろうな

まぁ王子が二人消えてもまた後継を作ればいい。

以前、偶然見つけた王家秘蔵の魔導書。

封印解くの大変だった。でも苦労して解いてよかったよ。

失敗しても構わない。

フラン王家の最大禁忌、必要なのは王家の血と魂。

魔法の構成が困難で成功する可能性も極めて低い。

ただ後悔はしない。彼女といれないならこの国に用はないから。

陛下に裁かれても構わない。

そして私は禁術に手を出した。

長いお話しになってしまいましたが最後まで読んでいただきありがとうございます。

フラン王家の人間はゆがんでおります。

ただ優秀なので国民には慕われています。


後日小話にもしもの続きの話を更新します。

もしもの話しが許せる方だけお願いします。


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