表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 冒険の記録

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/207

冒険者の記録 九話

俺はリオ。砂の国のSランクの冒険者だ。


長年想い続けたレティシアと結婚した。

国に申請はしていないが、結婚したという事実が大事だ。

戸籍がなくても抜け道はあるからいずれ手続きをしておくか。

念のため。

今は手続きに時間を使うより愛しいシアを愛でたいからそれは後でいいいだろう。

砂の国にもいくつかパイプがあるからやる気になれば簡単だからな。

シアはあんまり結婚の意味をわかっていなかったが、俺のためならと頷いてくれた。

不思議そうに頷くシアは可愛いかったよな。シアは押しに弱いし、のせられやすいからこれからも俺が気をつけないと。



ここまでの道のりは長かった。

シアには他の男が近付かないように害虫駆除してきた。

徹底したくても、限界があり心配だった。

殿下やビアードとか、序列一位のマール公爵家とはいえ三男の俺より権力を持つ男は特に。

シアを俺に依存させるために、策を巡らせてきたが思い通りにいかないしな。

なぜかシアがビアードを頼りにするのはおもしろくなかった。

シアの無自覚は長所であり、短所でもある。シアは人たらしなのに、自分が嫌われてると勘違いしてるよなぁ。無自覚なシアは可愛いし俺には美味しい状況だったから黙っていたけど。

シアと両想いになるまで長かった。

想いが通じた経緯は情けないしシアに勘違いさせて泣かせたのは後悔している。

だからもう絶対に傷つけて泣かせないようにしようと誓った。

やっとシアに想いが通じて両思いになったと思ったら、シアは姿を消した。天国から地獄に真っ逆さま。希望をくれたエドワードには感謝してる。再会してからも色々邪魔が入ったが、王国にいる頃よりマシだった。

ディーネに邪魔されるのは予想外だったけど。

ディーネはいつの間にかシアが契約した水の精霊だ。昔から水場に行くとシアはなにかと話してることが多かった。その時に出会ったのかな。まぁシアは可愛いし、水の精霊への信仰深いルーン一族だから、水の精霊がシアに魅入られるのも仕方ない。




シアは俺の腕の中でぐっすりと眠っている。

再会してから、俺の腕でぐっすりと眠る姿は愛しいし、腕の中にいることに安心するけど複雑な気持ちもある。

無防備すぎるよなぁ。

つい手を出しそうになってディーネに水攻めにあった数は片手じゃ足りない。

でも、俺はシアが腕の中にいないと眠れないから仕方ない。

目覚めると、シアを探すのは再開してからの俺の癖。

シアが消えたことはトラウマになっている。

思い出すだけで、体が熱を失い、世界が真っ暗になる。

温かい腕の中の温もりを抱きしめると、シアの瞼が揺れた。

そろそろ起きるか?

ゆっくりと開いた焦点の合わない青い瞳への愛しさは募るばかりである。


「おはよう、シア」

「りお?」


寝ぼけているシアは可愛い。

昨日のシアとの甘く夢のようなひと時を再現させたい欲求を必死に抑える。

これ以上は無理をさせるから我慢。

シアといると自然に笑みが溢れるから不思議だ。幸せだ。


「あぁ」

「う、あ、えっと、」


毛布で顔を隠したシアに頬がさらに緩む。

照れてるシアも可愛い。

昨日初めて体を重ねた。シアが愛しすぎた。自制がきかなく、無理させたよな。

ディーネは出かけている。結婚するまで手を出さないって約束だったからな。

ディーネのお許しがでるまで長かったが、俺のいないシアが無事だったのはデイーネのおかげだから感謝している。


「夢じゃないからな」


シアは許容範囲を超えると、夢と思う癖がある。

婚約をルーン公爵に申し出た時も記憶をとばしたな。あれは衝撃だった。まだ俺も若かったからな。決死の覚悟で言ったのに、肝心のシアが覚えてないとは…。


「わたし、へんで、」


可愛いな。俺も幸せすぎておかしくなりそうだったよ。

目に涙をためてトロンとして俺に甘えてくるシアが愛しすぎた。


「シア、へんじゃないよ。顔見せて」

「むり」


これは中々でてこないかな。


「俺が嫌い?」

「ちがう。でも、あんな…」

シアが、毛布から顔をのぞかせる。

「嫌だった?」

「いやじゃないけど、はずかしい」


真っ赤な顔のシアの額に口づける。可愛い。愛しい。

「愛してるよ。シア」


また毛布にもぐった。手を出したいけど我慢。ディーネには、シアに無理をさせるな、手加減しろと言われてる。ディーネを怒らせてまたお預けをくらうのは勘弁してほしい。本気で。


「シア、朝ごはんにいこう」

「ごはんいらない」

「今日はずっとここにいる?俺はずっとこのままでもいいけど」

毛布にくるまったシアを抱く腕に力をいれる。

「え、ふく、りお、でてって」

「今更だろ?」

「やだ。はずかしい」


はずかしがるシアが可愛い。無意識に誘惑するのやめてほしい。

シアは今まで俺の前で着替えるのに抵抗はなかった。さすがに俺は見ないようにしてたけど。

仕方ないから、俺も支度するか。シアを腕から開放してベッドから起き上がる。

シアが毛布からそっと顔を出すので口づける。驚いてきょとんとする顔が可愛い。

段々顔がとろんしたシアにさらに深く口づける。名残おしいけどここまで。幸せだ。シアの髪を撫でて離れる。毛布でわたわたしてるけど大丈夫だろう。そろそろディーネが帰ってくる気がする。さすが俺。

もう少しで水攻めだった。


砂の国の宿に泊まってるけど、これからどうするか。

俺としては、殿下の転移陣が仕掛けられたあの村には帰りたくない。シアに内緒で荷物も持ってきたしな。セリアからもらった四次元袋はなんでも入るから便利だ。原理はわからないがありがたい。

シアはあの村の人に懐いてるが、そこまでじゃない。シアは優しいし、甘いから勘違いされるけど、あんまり自分の領域に人をいれない。いつ離れてもいいように準備しているからな。昔の記憶がトラウマになっているのか、大事な人に捨てられるのが怖いのか、あんまり人を好きになりすぎないように気をつけている。うまくいってるかは怪しいが。

俺はシアには悪いがあんまりシアに大事な人を増やしてほしくない。シアは深入りするとすぐに自分を犠牲にする。シアは自分の幸せのために生きればいい。他人のためにシアが犠牲になるようなことはもう許さないけど。

そろそろ用意が終わったかな。


「シア、終わった?」

「うん。」

まだ顔が赤いな。俺のせいか。ディーネがシアの肩にいる。いつの間に…。

「これからどうする?」

「まだ国には帰れないよね。また逃げちゃったし」


寂しそうに苦笑するシアの頭を撫でる。

帰ってもいいけど、もう少し俺だけのシアでいてほしい。


「帰りたくなったら帰ろう。せっかくだから水の国を目指す?」

「いいの?」

「行きたいんだろ?」

「うん。神秘の泉みてみたい!!」

「せっかくだからやりたいことやろう」

「家どうしよう。」

「荷造りしてきた」


驚いてキョトンとしてる。すぐ顔に出るよな。令嬢モードは完璧なのに。


「アルク達、心配するかな?」

「冒険者なんてそんなもんだ。それに新婚だからな」

「もう二人も大丈夫かな?」


もう一押しかな。


「大丈夫だと思うよ。俺はあの村にいると邪魔が入るからシアと二人で旅に出たいけど。どう?」

「リオはアルクと離れて寂しくない?」

「俺はシアさえいればいい」

シアが考えてる。

「アルク達が大丈夫ならもういいかな。あの村に殿下が来るのも危ないから。リオがいないなら殿下も村に来ないかな」


殿下はシアに会いたくて来てるけど。余計なことは知らなくていい。


「ああ。俺達がいないなら、来ないと思うよ」

「殿下には危ないことしないでほしいし、あの村にこだわる理由もないかな?あそこにいるとリオ取られちゃうし」

「寂しい?」

「うん。旅に出ればずっと一緒?」

「勿論」


そして俺達は水の国を目指した。遠いので時々ギルドで荒稼ぎして、観光しながら旅を続けた。

見慣れない物を見つけては目を輝かすシアは可愛いかった。ただシアの外見は目を惹くからローブを着てもらうことにした。リオも着なきゃ嫌!と騒ぐシアはもう可愛くてつい口づけたら拗ねてしまった。拗ねたシアも可愛い。

最近はシアも妬いてくれるようになった。俺はシアしか見てないけど、俺に見惚れる女を見ると寄り添ってくるシアが愛しい。いつまで独占できるかわからないが、今はシアを愛でよう。

シアが俺の側から離れないようにいつか新たな命が宿ってくれてもいいけどな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ