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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第一章

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第九話 後編 追憶令嬢7歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。


私はマール公爵家で遠乗りの準備をしています。

なぜかマール公爵邸には私の部屋があり、大抵の物はそろっています。マールでは好きに過ごしていいというマール公爵夫妻の優しさでしょうか?まぁいいですわ。


乗馬は風が気持ち良く楽しいので好きです。

遠乗りは一人ではさせてもらえないので、いつもリオと一緒です。

乗馬をマールで教えてもらう時に約束しました。一人で勝手に乗馬しないことも。乗馬服は伯母様が鞭は伯父様が贈ってくださいました。

リオに一歩遅れて馬を走らせているとあら?いつも曲る道を通り過ぎましたわ。


「リオ、道が違いますわ」

「大丈夫。もう少しで着くけど休むか?」

「このまま走り抜けますわ!!」

「道がわからないのに先に行くなよ」


スピードを緩めます。ついつい気持ちがよくて走らせてしまいますわ。

乗馬が楽しいものとは知りませんでしたわ。

しばらく駆けるとリオが馬を止めました。


「ここだ。偶然見つけた」

「まぁ!!」


空気がおいしいですわ。そして綺麗な湖もありますわ。

馬を繋いでリオに手を引かれて散策していると、小さい祠を見つけました。

掃除道具はないので、湖の水を汲んで水で汚れを洗い流します。

風魔法が使えればいいけど、私は使えません。学園入学前なのでリオの前で水魔法は使えません。申し訳ありませんがこれで許してくださいませ。

おやつのクッキーとリオが摘んできた木の実をお供えします。

水受けに水を満たして、祈りをささげます。


お邪魔しております。素敵な景色をありがとうございますと。

お祈りを終えたので大樹の下に座り湖を眺めます。湖の中にはいるのは駄目と言われましたので。


「こんな所で暮らすのもいいですね。どうやったら自分で家を建てられるかな」


隣に座っているリオの笑い声が聞こえました。


「お前は何を目指してるんだよ。洞窟探して暮らすか?」

「残念ながら、地形的に洞窟はなさそうです。人里離れて、自給自足、自由気ままな生活!!

夢みたいですわ。火おこしも覚えないといけませんね」

「火は俺がおこすよ。火打ち石があればシアにも簡単だ」


火打石は実物は知りません。知識はあるんですが、


「今度教えてくださいませ。食料は魚釣りですかね」

「魚釣りはまだできないな。肉ならその辺で狩ってくるよ。鳥くらいなら捌いてやるよ」

「リオ!?いつの間に覚えましたの?」


驚いて隣を見ると頭を優しく撫でられ、ニヤリと笑いました。


「無鉄砲なお姫様の夢だからな。植物はお前に任せていいんだろう?」

「勿論ですわ。しっかり覚えましたわ。リオも一緒に生活しますの?」

「シアが望むならな。シアは俺なしじゃダメなんだろ?」


冗談でもいけませんわ。お子様リオに教えてあげましょう。


「セリアのことはどうしますの?セリアに振られますわよ」


ゆっくりと伝えるとリオの手が頭から放れて、頬を包み曇りのない銀の瞳に見つめられる。


「セリアとはシアの保護者同盟を組んでるだけだよ。俺はセリアに惚れてない。勘違いするな。不服な顔しても違うから。絶対ないから。余計なことするなよ。わかったな?」


保護者同盟・・?深く聞かないほうが良さそうですわ。平穏のために必要なこと以外知りたくありませんわ。お子様リオに春はきませんでしたわ。


「協力しようと思ってたのに残念ですわ。たまにはリオのお役に立てると思いましたのに」

「俺の隣で笑っててくれれば充分だよ。シアの願いは俺が叶えるからちゃんと相談して」


優しく笑う身内に甘い従兄に嬉しくなり抱きつくと背中に手が回ります。


「リオの願いも私が叶えますわ」

「ありがとな。帰るか。そろそろ出ないと暗くなるな」

「いつかここに星を見に来たいですね」

「もう少し大きくなったらな」

「約束ですわ」


互いの小指を絡めてベンに教わった指切りをしました。やりたいことが増えましたわ。

最後に祠にお参りをするために近づくとあら?白いなにかが。鳥ですか?

膝を折って、抱き上げると鳥ですわ。目を閉じており、息はありますが冷たい。

リオは帰る仕度をしているので傍にいませんね。


「我が乞う。水の精霊ウンディーネ、かのものに、水の癒しを与えよ」


魔法は発動するのに治癒魔法が効きません。


「乞い願う。水の精霊ウンディーネ。かのものに命の水を」


回復効果のある聖水を出しても飲めませんね。ハンカチに水を吸わせて口元にあてても吸いません。おかしいですわ。


もしかして…。

そっと抱き上げた鳥に魔力を流し込む。当たりです!!でも抵抗が……。


鳥、眷属、水に抵抗?もしかして風の精霊ですの。

属性には相性があります。水と地、火と風は相性がよく合同魔法も使いやすい。水は火と風とはそこまで相性がよくありません。


まさか、ねぇ?


できれば助けてあげたいですが、私の魔力では駄目ですわ。

リオの魔力なら?リオは魔力量が多いですがまだ魔力操作ができないので危険ですわ。助けたいけど、リオを危険にさらしてまでは…。


顔をあげるとリオに真顔で睨まれてます。魔法を使っているところは見られてないはず。

え!?

リオが鳥に手を当ててますが、何考えてますの?鳥が輝きましたわ。

鳥が段々温かくなってますが、リオの体がフラフラしてますわ。

顔から汗が流れて、崩れ落ちるリオに手を伸ばして慌てて支える。冷たいリオの体をそっと寝かせる。

バイオリン筋トレの効果ですわ。

この顔色の悪さと肌の冷たさは魔力の欠乏?

眠っているリオの額に手をあてる。


「我乞い願う。水の精霊ウンディーネ。かのものに水の癒やしと息吹を」


体力は回復させましたわ。

あとはリオの剣を抜いて、人差し指を傷つける。

私の指から流れる血をリオの口に。

噛まないでと願いながら、リオの舌に血を舐めさせていく。

血縁関係が近いので、うまくいけば魔力に変換されるはず。

しばらくすると顔色が戻ってきましたわ。

魔力を送ればいいんですが、まだ魔力操作のできないリオには危険です。魔力は血に豊富に含まれています。自然に溢れる魔力を自分のものに変換し蓄えることは魔力を持つものは生まれつきできます。魔力に富んだ血を少しずつ与えれば相性がいいならリオの身体は自然に変換します。

体に悪いものは自然に変換はできません。魔導士は魔力を使いすぎると自分の魔力の属性に富んだ場所で体を休めます。水魔導士にはルーン公爵領の森にある水の泉が有名ですよ。魔力にも相性があるので各々のお気に入りの場所は違いますが。私はルーン公爵邸のウンディーネ様の像のある隠し部屋がお気に入りです。まだ入れませんけど。

リオの体が温かくなってきましたわ。

良かった。成功ですわ。力が抜けますわ。





目を開けると美しい星空が広がり、体にはリオの上着がかけてあります。

パチパチと音がして、視線を向けるとリオが木の枝を火の中に入れています。


「起きたか。大丈夫?」


体を起こして、顔色の良いリオに安堵の笑みがこぼれますわ。


「大丈夫ですわ。リオは体がおかしくありません?」

「ちょっと力が抜けてる」


「君の魔力を無理やりもらったからね。君の魔力美味しくてついついたべすぎちゃったよ」


リオに腕を引っ張られ抱きかかえられます。聞き覚えのない幼子のような声がしますが、近くに人は見えないですわね。リオが剣を抜いて警戒してますわ。


「ここだよ!!目線下!!君たちが助けた鳥だよ」


白い鳥。銀の美しい瞳を持ってますわ。声の主は、


「と、鳥が話してます?」

「歌う鳥がいるから、話す鳥もいるよな」

「確かに。さすがリオ兄様。サーカスの鳥の歌声は見事でしたわ」


驚きましたが納得しました。


「納得しないで。鳥の姿を借りてるだけだよ。僕の本来の姿は鳥じゃない。擬態しないと、君たちに見えないし話せないからね。彼女は気づいてるけど、僕は風の精霊亅


はい?

頬をつねると痛いので夢ではないですわね?


「へましちゃって魔力が尽き果てて、祠で休んでたんだ。

誰かが来たら魔力を分けて貰おうかと待ってたんだけど、中々こなくて、もう消えちゃうかなって思ってたら、君の祈りが聞こえたの。

だから最後の力を振り絞って擬態したの。

ただ君の魔力だと、属性が違うから、食べづらくって…。

丁度よく美味しそうな魔力を持つ彼がいたから食べちゃった。

彼、すごいよ!!量も、質も最高級!!」


風の精霊様・・・。

リオの魔力を食べた・・?なんて危険なことを。

魔法を自由に使うためには手順があります。魔力は危険なので魔法は学園に入学してから教わります。自分の中の魔力を意識して使えるようになるには訓練が必要です。

魔導士にとって魔力の枯渇は命に関わります。そして他人の魔力を利用することも危険な行為。体に流れる魔力をルーンでは魔力回路と呼びます。魔法を使うには普段は生命維持にだけ使うために閉じている魔力回路を開いて魔力を紡ぎ、祈りをこめて精霊の力を借ります。精霊魔法の代償は魔力。魔力に惹かれた精霊が力を貸してくれれば魔法が使えます。

魔力回路を探り他人の魔力の状態を確認するのは治癒魔法の基本。魔力の乱れは体の不調にも繋がります。明らかにされていないことも多いので今も魔力については様々な研究がおこなわれてます。って違いますわ!!


「色々思うところはありますが、リオは大丈夫なんですよね?無理矢理魔法回路開いたりしてませんよね?記憶が失われたりしませんよね?寿命が縮んだりしてませんか?」

「大丈夫!体に巡る魔力をもらっただけだから、魔力の暴走もしないし、寝てたら自然に回復するよ」

「リオの魔法回路は閉じてますか?このままだと魔力の暴走したりしませんよね?」

「大丈夫だから心配しないで。体に満ちてる魔力をもらっただけだから。助けてもらったお礼に契約してあげるよ」

「契約?」

「知らないの?契約は僕がお願いをして、名前を貰えば契約成立。僕は魔力をわけてもらうけど、代わりに僕をいつでも呼べるし、使役できる」


初めて聞きましたわ。


「使役されるって自由ではなくなるのにいいの?」

「君たちの寿命なんて、瞬きしてる間に尽きちゃうよ。それに君たちと一緒にいるの楽しそうだしね。二人共おいしそうだし」

「おいしそう?リオを食べたら許しませんよ」

「魔力が美味しそうなだけだよ。僕は魂や体を食べたりしないよ。風の精霊だもの」


それなら安全ですわね。


「契約はどちらでもいいんですの?」

「僕はどっちでもいいけど、できれば彼がいいな。君は僕より相性の良い精霊がいるよ」


水属性だからでしょうか?でも精霊様と会えるなんて奇跡ですし、力は欲しい。


「もし俺が契約したら、彼女には見えるのか?」

「彼女も恩人だからね、主が望むなら見えるように擬態してあげる」

「俺が使役して、彼女の護衛を命じるのは?」

「できる。ずっと見えるようにするのは消耗が激しいけど、見えない状態なら力をそんなに使わないから大丈夫」

「契約に伴うデメリットは?」

「君の魔力をもらうことかな。君の魔力量なら問題ないと思うよ。毎日一割くらい貰うけど」



考え込んでいたらいつの間にかリオが話してますわ。魔力をもらう?


「うっかり食べすぎることはないですの?」

「大丈夫だよ。契約中は常にお腹いっぱいだから。まぁ、おいおい色々説明するよ。契約も万能ではないからね。精霊との契約は一生に一度だけ。僕以外の精霊と契約できない」


精霊様は初めて会いました。知識も豊富。もしかしたら、私の願いが叶うかもしれませんわ。利害は一致しますわ。笑みを浮かべて抱きかかえているリオの腕から抜け出し精霊様に向き直ります。


「俺と契約してくれ」

「リオ、私もしたいですわ」

「駄目だ。それにシアにはもっと相性のいい精霊がいるならやめたほうがいい」


まだ魔法の使えないリオはやめたほうがいいかと


「危険ですわ」

「なら、尚更俺だな。シアより強いし」

「そんなのわかりませんよ」

「俺は武術も訓練してるからシアより強いよ。俺に譲って。シアは俺の願いを叶えてくれるんだろう?」


リオとどちらが契約するか見つめ合い折れるのを待っていると精霊様が飛んできました。


「多分彼は譲らないと思うよ。僕を君のそばにおくの、嫌がりそうだし」

「ちょっと静かにしててもらえるか」


リオが風の精霊様と見つめ合ってます。

いつの間に打ち解けましたの?

よくわかりませんが風の精霊もリオのほうがいいんですよね。風の精霊なら風属性のリオの方が適任。私は風魔法使えませんもの。

諦めましょう。精霊様に悪い予感はしないのできっと大丈夫でしょう。


「たまには私にも貸してくださいね。精霊様、リオと契約しても私とお話してくださいませ」

「主次第かな」

「譲りますわ」

「ありがとな。俺と契約してくれるか?」

「僕は大歓迎だよ!!君の名前を教えて」

「リオ・マール」

「我、風の精霊、リオ・マールと契約を結ばん。リオ・マール、我に名を与えよ」


見たことのない魔法陣がリオの足元に浮かび上がり、リオと精霊様が光ってますわ


「フウタ」

「我の名はフウタ。生涯そなたに仕えよう。我が主に祝福を」


神秘的ですわ。風と光が二人を包んで光が次第に消えていきましたが、リオの周りに小さい光が残っています。暗いから一際キラキラと輝いて綺麗ですわね。


リオ、フウタってなんですの?そのお名前は・・。もう少しなかったんですの・・。

気にしたらいけませんわ。私は気付いてはいけないリオの弱点見つけてしまいました。


「リオ、体は大丈夫ですか?キラキラ光ってますけど」

「やっぱり君も魔力が強いんだね。この光はいずれ消えるよ」

「俺には見えないけど、誰にも見えないようにできるか?」

「まかせて!!これで大丈夫」

「キラキラはなくなりましたわ。綺麗だったのに…。暗いので尚更ってまずいですわ。真っ暗ですわ」

「もう約束の星空見えたな」


確かに満点の星空は綺麗ですけど、楽しんでいる場合ではありませんわ。笑っているリオはこの状況に気付いてないんでしょうか。


「違いますわ。伯母様達が心配しますわ」

「フウタ、早く帰る事ってできるか」

「うーん。空を飛ぶ?」

「素敵ですわ!!」

「却下。落ちたら危ないし、人に見られたら問題だ」

「君たちの乗る馬を風の力で疾走させる?ただ君は落ちちゃうかもしれないから、主の馬に相乗りをオススメするよ」

「落ちませんよ」

「いや、相乗りしよう。馬はどうするか」

「僕が誘導して、連れて帰ってあげるよ」

「ありがとう。助かる」


私が何を言っても一人で馬に乗せてもらえませんでした。リオの前に乗せられましたわ。


「舌を噛まないように気を付けてね。主、危いなら教えてね。いくよ!!」


凄まじい風に包まれ、え!?うそ!?

速い!!確かにこれは危ないですわ。体にあたる風が痛い。これは手綱を持っていられない。怖い。乗馬の姿勢も保っていられず馬にしがみついて、目を閉じて耐えるしかありません。





目を開けると、リオに抱き抱えられマール公爵家の廊下にいました。


「大丈夫か?」

「大丈夫です。自分で歩きますわ。ありがとう」


私は気を失ったんですね。リオに降ろしてもらうと足に力が入らず崩れ落ちるのを腰を抱かれて支えられました。


「リオ!レティ!」


伯母様と伯父様が階段を駆け下りて来ますわ。慌てているお二人を初めて見ますわ。


「心配したわ。何時だと思ってるの!?世を儚んで駆け落ちしたのかと」


駆け落ち?私の腰を抱いているリオが頭を下げました。


「ご心配をおかけしてすみません」

「リオ、お前がついていながら、」


伯父様がリオを睨んで怒ってますわ。目を吊り上げる伯父様なんて初めて見ました。

足に力が入らないので、リオに体を預けたまま伯父様の言葉を遮ります。


「伯父様、伯母様、私がわがままを言ったんです。悪いのは私です。リオ兄様ではありません。どうか咎は私に、」

「旦那様、先に食事にしましょう。お説教は後にしましょう。レティ、今日は泊まりなさい」


マール公爵家の楽しい食事が初めて気まずい食事になりました。食事を終えると体も温まり足に力も入ります。

もう力は入るのですがエスコートしてくれるリオに甘えて伯父様の執務室に行きました。

私の隣にリオが正面には伯母様その隣に伯父様が座ってます。

穏やかなお顔なのに静かな瞳の伯父様がリオを見て口を開く。


「疲れていると思うが説明してもらおうか」

「父上、何を話しても不敬を問わないでいただけますか」

「人払いを」


伯父様の声に使用人がいなくなり4人だけになりました。


「父上、レティシアが殿下に見初められた噂はご存知ですか?」

「知っているよ。殿下からレティに恋文が送られてくるんだろう」


国外勤務が多いとはいえさすがに伯父様も知ってますよね。王家の事情、とくに王子の婚約者がどなたになるかで動きも代わりますし。

悪意しか感じられない恋文ではなく不幸の手紙ですけど。

まだ令嬢達のわかりやすい悪意の籠った手紙のほうが安心しますわ。


「レティシアは殿下が苦手で、断っても断っても送り続けられる手紙に悩んでいました。弱った顔で手紙が届かないところに行きたいと言うので、気分転換に遠乗りして湖に行きました。俺が目を離した隙に湖に入ってしまい、話を聞いて落ち着かせたら眠ってしまいこんな時間に。よく眠っていたのでそっと馬に乗せて帰ってきました。馬2匹と眠るレティシアとの相乗りだと、スピードも出せずに遅い時間になり申しわけありません」


リオ兄様、作家でも目指してますの?反省した顔で語っていますがほぼ嘘ですわ。


「湖だと!?レティ、体調は?」

「火をおこして乾かしたんで、たぶん大丈夫だと思います」


今日は風が冷たいので湖に入れば風邪を引くと泳がせてもらえませんでした。

リオの作り出した空気に合せて覚えたばかりの表情を作ります。

ケイトとダンと研究した母性が産まれる表情ですわ。よくわかりませんがお願いするときに使うと効果的だそうです。

目をゆっくりと伏せて、キュッと結んだ唇をゆっくりと開いて小さい声でゆっくりと言葉を音にする。ポイントは伏し目がちに相手の顔を見ないこと。淑女としては許されませんが今は淑女はお休みです。


「伯父様、伯母様、全部私が悪いんです。リオ兄様を巻き込んでしまってごめんなさい。私が、リオ兄様に甘えてしまったから、こんなことに。ごめんなさい。お母様に言いつけてもらって構いません。罰も受けます。だからリオ兄様を怒らないでください」


「シア、俺が好きでやったことだから気にしないで」


リオの手が肩に置かれて心配そうに顔を覗き込まれてます。


「妻よ、うちの子達はなんて良い子なんだろう」


()()()


伯父様の声がいつもの優しい声に戻りましたわ。


「リオ、今日はもういいが明日ゆっくり話をしよう。怪我がなくてよかったよ」

「レティも明日、私と話しましょう。無事でよかったわ。今日はゆっくりお休みなさい」

「父上、母上、申しわけありませんでした。おやすみなさい」

「伯父様、伯母様、ごめんなさい。おやすみなさい」


優しく笑うマール公爵夫妻に礼をしてリオに手を引かれて部屋に送ってもらいました。

使用人の目があるので互いに無言です。反省しているフリをしなくてはいけません。 

お母様のように震えるほど怖いお説教ではありませんでしたわ。マール公爵夫妻のお説教は初めてですわ。もう今日は何も考えずに眠ってしまいましょう。

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