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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第三章

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第百五話  追憶令嬢17歳

こんにちは。ルリです。

砂の国のDランクの冒険者です。


ギルド長との話を終えて受付兼事務担当のレラ様に説明を受けています。初めてお会いした時は警戒されていましたが今は明るい笑顔を浮かべています。この国もよそ者に厳しく身内に甘い風習なのでしょうか。


「おめでとうございます。冒険者として歓迎します」

「レラ様ありがとうございます」

「レラでいいわ。何か困ったことがあれば相談して。今は女性冒険者はルリだけだから」

「レラさん、ありがとう」

「可愛いわ。ギルド長が気に入った理由がわかるわ。これは守らなきゃね」

「レラさん?」


ギルドの仕事は掲示板に貼ってありそれをレラさんに見せて手続きをしてもらいます。

手続きを終えて仕事をこなし報告書を提出しレラさんの確認後に報酬が支払われます。

砂の国ではお金は現金支給かギルドカードに振り込みか選べるようです。

ギルドにお金を預けて必要な時に引き出す。冒険者は家を明けることが多いのでギルドカードにお金を預けている人が多いみたい。私はマジック袋があるのでそこに報酬をいれるので必要ありませんわ。それにいつ発つかもわかりませんから。

作るつもりはありませんでしたがギルドカードは砂の国では身分証明書にもなるのでなくさないようにとペンダントに加工してギルド長が贈ってくれました。ディーネにもお揃いのペンダントの首輪をくれました。

首輪は嫌がると思ってましたが、お揃いと喜んでました。

ディーネが喜ぶならいくらでも贈りますのに。私のディーネの可愛さにギルド長は顔がニヤケていました。ディーネが多くの冒険者を可愛さで魅了するのはいつものことなので気にしません。


ギルド長に借りた庭つきの小さい小屋には生活必需品が全て揃っていました。お金は受け取ってもらえませんでした。

未成年は大人に甘えなさいと豪快に笑うお顔が素敵でした。旅をしてから、たくさんの大人に助けてもらってます。フラン王国では非常識な方とお話することが多かったので良識のある人々を見ると力が抜けそうになります。言葉が通じることがいかに有り難く尊いことかは冒険者になってからしみじみと感じますわ。冒険者には身分は関係ないので生まれなんて些細な問題ですわね。いえルーンの血に生まれた恩恵もありがたみもわかっていますよ。



村に住み始め三日目に初任務として雨乞いを任されました。

私が水属性の魔導士なのはギルド長とレラさんしか知りません。ギルドには守秘義務があるので他言はしないと約束してくれました。

砂の国は太陽神を信仰する国。サンサンとした太陽が輝き昼間はうだるような暑さに襲われます。太陽が沈むと気温が一気に下がり冷たい空気と闇夜を支配します。そのためローブが重宝されています。雨が少なく乾燥も激しいため植物が育ちにくく自然の恵みが少ない国です。フラン王国がいかに自然に恵まれていたか痛感しますわ。

この地域は半年以上も雨が降っていないそうです。

国に雨乞いの依頼をしますが、辺境地への魔導士の派遣は拒否されました。砂の国は魔法が盛んではないので、雨乞いができる魔道士は他国からの派遣になり国として動く案件ではないそうです。捨て置く理由がわかりませんが私が介入できることではないので事情を調べません。

魔法を使える冒険者は報酬の高い首都のギルドに流れるため、辺境の村にある田舎ギルドに立ち寄ることがないそうです。そのため雨が降らないことにギルド長をはじめ周辺の村の方々は途方にくれているそうです。


いつもの装いだとルリだとわかってしまうので、レラさんの協力で変装をしています。

金髪の長い髪のカツラを被り、白い巫女服。頭にはヴェールを被り顔を隠します。

他国から訪問した巫女姫設定。巫女とは他国の神に仕える神官のことらしいです。

旅の途中で偶然立ち寄った巫女姫が、雨乞いを引き受けてくれたことになっています。


雨乞いは外の広場で行います。

周りには邪魔が入らないように護衛が配備されてます。

魔道士は詠唱中に無防備になり高度な魔法になればなるほど途中で邪魔が入ると魔力が暴走する危険が伴います。そのため大技を使いたいなら単独では動きません。

ギルド長に周辺の村や設備等の話を聞き降らせる雨の量と範囲をディーネと相談しました。ディーネが調べに行った結果、日照りの村の回復のための雨乞いが私の想定よりも面倒なものと知りました。

周辺の村も含めて安全な量の雨を一週間程降らす予定ですが私も魔力切れで3日は寝込むと思います。一気に降らせるのなら簡単ですが、雨の少ない地域に大量の雨は災害を引き起こす危険があります。自然の回復にはある程度の量の水が必要であり村人達が対処できる程度に調整するのは緻密なコントロールと大量の魔力を使います。

今回はディーネの力を借りることにしました。

ディーネが力を貸してくれるので詠唱も魔力の消費もありませんがパフォーマンスは必要です。

雨乞いは自然の流れに逆らうため高度な魔法の一つです。自然の流れに逆らうことは術者の負担も大きく雨乞いができる魔導士はフラン王国でもそこまで多くありません。私は水の加護を受けているルーンの血筋のおかげで簡単に使えますが、他の一族はそうはいきません。治癒魔法はセンスですが雨乞いは魔力保有量が鍵なので・・。フラン王国全土に雨をもたらすならルーンの魔導士が数人で合同魔法を、もしくはお父様か叔父様が呼ばれますわ。自然に恵まれているフラン王国は雨乞いは必要がないので練習として使うくらいですわ。ですが水属性を守る一族としては周囲には雨乞いの価値を貴重なものという認識を持ち続けていただかないと困ります。正直こっそり雨を降らせて終わらせたかったのですが大衆の前でやる必要があるそうです。ギルドにも事情があるので仕方がないので従いますわ。



さて面倒なことは早く終わらせましょう。

パフォーマンスをはじめましょう。

空に祈りを捧げ詠唱を始めます。もちろん詠唱はフラン王国のものとは変えました。

詠唱しているフリをしながら私の周りに水魔法で蜃気楼を漂わせます。魔法を使っている姿が見えないように。


「親愛なる女神様。

この地に恵みの雨をもたらすことをお願い申し上げます。

恵みの雨の祝福を。あわれな我らにお恵みくださいませ」


乾いた風が止まり、サンサンと照りつける太陽が雲で覆われ薄暗くなりました。雨の気配に空を見上げるとポツポツと雨が降り始めました。ディーネの降らせた雨が気持ち良くうっとりしてしまいますわ。祈る姿勢はそのままにして雨を堪能しながらしばらく待ちます。

雨量が安定したので、口をゆっくりと開きます。


「ありがとうございます。

女神様の慈悲の心に感謝と忠誠をお許しください」


歓声が響いていますが気にせず祈るのをやめてレラさんとギルド長の下に向かいます。


「天使が、天使が降臨した!!」

「物語の世界!!」


興奮している二人にドン引きです。水は生きるのに必要な物なので、きっと水の女神様に感謝を捧げているのでしょう。あれはディーネへの感謝ですよね・・。天使への称賛等の訳のわからない言葉は聞き流します。

苦笑している護衛役の冒険者に先導され控室に移動します。

お礼を伝えると赤面したので、彼も久々の雨に興奮していたんでしょう。

控え室で着替えてルリの姿に戻りました。

この後はレラさんが巫女姫に変装をして、村から去ったように見せかけてくれる予定です。


「ディーネありがとう」

「おやすい御用よ。遊びに行ってきてもいい?」

「気を付けてね。ご飯までには帰ってきて」


私の肩に乗っていたディーネが姿を消しました。旅を始めてからディーネが私の傍を離れたのは初めてです。優しいディーネは私を心配して傍にいてくれましたわ。でも久しぶりの雨に興奮しているのかもしれません。水の精霊のディーネも水は大好きなので降り注ぐ雨を楽しんでいるのでしょう。

仕度を整えたので私はギルド長の執務室にいます。ギルド長の隣にはレラさんが座っています。


「お疲れ様。これが報酬だ」


ギルド長の目配せでレラさんから金貨10枚差し出されました。


銅貨が100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。

銀貨1枚で一ヶ月暮らしていけます。


「多いです」

「正当な報酬だ」


フラン王国には冒険者の文化がないので雨乞いの価値はわかりません。でもギルド長が提示するなら正当と言うことです。


「わかりました。1枚頂くので残りは日照りで困った方々に寄付をお願いします。ただし報酬は全部私が受け取ったことにしてください。私が寄付したことも内密にお願いします」


ギルド長とレラさんが固まっています。

砂の国は裕福な国ではありません。フラン王国ならともかく力のない弱小国の平民が金貨を用意するのは大変なことです。この金貨はこの村と周辺の村の住民達のなけなしのお金を集めた依頼料。

ただでさえ日照りで困り生活は苦しいはず。砂の国で私が見た村は貧しい村ばかりでした。どんなにお金に困っても精霊によって与えられた力を使って貧困層からのお金を巻き上げるのは私の矜持が許しません。ですが雨乞いが安いと思われては困ります。今後大量の魔力を使う雨乞いを任される魔導士のためにも、きちんとした価値を。一番が雨乞いに頼らない生活方式の確立か水の魔導士を派遣してもらうために動くことですがそれは私が口に出すことではありません。この国の王族や貴族が動くことですわ。


積み上げられた金貨から1枚だけ受け取ります。そして受け取った1枚の金貨をギルド長の前に置きます。


「お願いがあります。これで水の女神や精霊様のための祠を建てていただけませんか?」

「祠?」

「女神様も精霊様も気まぐれですが、大切にすれば慈悲の恵みを与えてくれます」

「祠を祀れば、雨が?」

「わかりません。気まぐれですから」


昔、クロード殿下が言ってました。信仰心があるから精霊は力を貸してくれる。王国の豊かな自然も魔法も精霊の力によるもの。日頃の感謝を忘れてはいけないと祠を見つけるといつも花を添えて祈ってました。

金貨を1枚目の前に返されました。


「それは俺が建ててやるよ。せめてこれくらいは受け取ってくれ。ルリ、お前苦労してるのにな」

「この子本当に、天使なんじゃ」


物凄い生暖かい視線で見られています。私は善人ではありません。善人ならこの国の王族に面会してフラン王国を紹介し、水の魔導士の派遣の仲介をしますもの。


「祠に祀って祈りを捧げるなんて思いつかなかったよ。そんな考えがあるんだな」

「気まぐれです。でも雨が降らなくても祠は壊さないでください」

「わかったよ。正直お前の心遣いは助かる」


ギルド長の手が伸び大きな手で乱暴に頭を撫でられました。


「ルリ、俺はお前の味方だ。お前の能力を売ったりしないよ」

「ありがとうございます」

「今日は魔力使って疲れたでしょ?ご飯を作りに行くわ」

「お気持ちだけで充分です」

「これくらいさせて。子供は大人に甘えなさい」

「ルリ、レラの飯はうまいぞ。俺はお前の後見だからな。レラを姉と思って甘えていい」

「しっかり食べて大きくならないと。夜に行くから待ってて」

「わかりました。ありがとうございます。レラさんも気をつけてください」


生温かい笑顔を浮かべて二人の断れない雰囲気に負けて頷きます。

いつまでここにいるかはわかりませんが味方ができたのは助かります。

砂の国の食材は見覚えがなく使い方がわからないのでレラさんが料理を教えてくれるのは助かります。

礼を言って一階に降りると名前を呼ばれて足を止めます。声を掛けられた青年は見覚えがありますが名前は知りません。


「ルリ、来てたんか。天使様の雨乞いは見たか?」

「見てない。天使様?」

「金髪の天使様が雨をもたらしてくれたんだ。貴重な物だから見れば良かったのに」

「雨で濡れるの嫌だったから」

「まだルリには早いか。ほらこれ食いな」

「ありがとう、いただきます」


ギルドは雨乞いの話で持ち切りです。

変装しててよかった。

このギルドは外見は怖いけど優しい人達が多いです。

なぜかたくさん食べ物を与えられています。食費が浮いて助かります。

貧民からはお金は取りませんが、好意は甘えます。生きてく上でお金は大事です。


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― 新着の感想 ―
[一言]  第二章までは、面白いのに、途中途中でとんでも話が出てくる、共感出来ない、わけわからん、には閉口させられました。  面白いと思えるだけに辛かった。  第三章に期待。
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