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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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126/207

第百一話 中編 追憶令嬢15歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンです。

平凡な生活を夢を見るのに全然平凡な毎日を送れない公爵令嬢です。


リオのおかげで寝不足も解消し頭痛も治まりましたわ。

なんとセリアが安眠道具をくれました。珍しく物騒でない物に感動してさらによく眠れるようになりました。

なぜかセリアとリオが笑顔で見つめ合っていましたが気にしません。

困ったことに私はルメラ様に謎の決闘を申し込まれ、気付いたら受けることになっていました。

リオに相談したら笑顔で手続き等を了承してくださいましたのでお任せしてあります。

こんなくだらないことに多忙なリオを巻き込みたくなかったですがニコル様がリオに報告は必須と譲ってくれませんでした。お説教もお小言もない奇跡が起こったのは唯一の幸運ですわ。

それでも心は晴れません。

今は教室でラウルが直してくれたエイベルからもらったオルゴールを聴きながら心を癒しています。

授業も終わりしばらく経つので生徒も少なくセリアは隣の席で小瓶を並べてます。何をしているかは気にしません。そろそろ帰りましょう。この時間なら偶然帰りにルメラ様に会うこともないでしょう。玄関で会うことがないように、帰宅時間を遅らせました

シエルが控えているので一人で行動しても問題ありません。ただ私の考えは間違いでした。今世は運がありません。本当についてませんわ。

廊下をばたばた走る音がします。今から急いで帰っても逃げられません。公爵令嬢が窓から帰るなんて許されませんし。同じ平民出身のラウルはあんなにまともなのに…。生まれで差別はいけませんわ。


「レティシア様!!どうゆうことですの!?」


幻聴が聞こえてきましたわ。


「決闘にマール様が参加するなんておかしいです」


リオ、参加するんですか?手続きだけしてもらうつもりでしたのに…。審判役でしょうか?ルメラ様は私の席の前に立ち大きな声で瞳をうるませ演説を始めました。


「手続きを全部押し付けるなんてひどい!!また権力を使って―」


この件は気付いたらもう私の手を離れていましたの。いえ、すでに最初から私の手にはないものでしたわ。誰一人私の意見を聞いてくれませんでしたわ。いかに私が権力を使って傍若無人に振る舞っているか熱く語ってますわ。教室に生徒も少ないですし、もう放っておいていいでしょうか。ルメラ様の取り巻きの生徒はうちのクラスにはいません。


「聞いてるの!?」


バンっと机が叩かれ、机の上の荷物が振り払われました。え?まずいです!!嘘!?咄嗟に手を伸ばしますが、間に合わずバサッ、ガチャンという音が…。この悲しい音は。せっかく直ったのに。落ちた本とオルゴールを拾うために立ち上がる。膝を折ってオルゴールを見ると、蓋が取れ部品が飛び散ってます。やっぱり、せっかく…。


「無視するなんて酷い。私が」

「何するの!?」


演説をやめたルメラ様の相手をする気がおきず、壊れたオルゴールを眺めているとセリアの悲鳴が聞こえます。セリアを見ると赤い瞳が大きく開いてます。セリアに怪我はなさそうですわ。パンと肩に何かが当たりじんわりと冷たくなり制服に染みが広がりました。


「レティ、大丈夫!?」

「つめたい」


セリアが冷たくなった肩をハンカチで拭いてくれました。目の前にはオルゴールがあります。どんどん視界が歪んでいきます。


「せりあ、こわれました。せっかく……」


「そんなことで泣くの!?お金持ちなのに」

「非常識よ。人の物を勝手に使うなんて。レティ、大丈夫?」

「う、これ、らうるがね」


心配そうなセリアに顔を覗かれます。ラウルが一生懸命直してくれました。ネジを代え、全然簡単じゃないのに大丈夫って笑いながら。

オルゴール、せっかくなおったのに。これだいじなのに。


「騙されない。嘘泣きしても無駄よ」

「あなたにだけは言われたくないわよ。消えて、目障りよ」

「私が男爵家だからってひどいわ」

「伯爵家より下位なんだから話しかけないで」

「ひどい。どうしてそんな意地悪言うの」

「最低限のマナーよ」

「私は仲良くしたいだけなのに」

「その涙目も不快。私は仲良くなりたくないから消えて」


言い争う声が聞こえますが、どうでもいいです。

オルゴール…。せっかく。こんなになったらもう、


「シア!?」

「マール様!!セリア様がひどいの」

「リオ様遅いです。私の自白剤をレティにかけられました」

「遅いって。シエルに呼ばれて急いで、は?自白剤!?大丈夫なのか!?」

「強い薬ではないので時間と共に薬効は消えます。治癒魔法は効きません。情緒が不安定になり全てを話します」

「解毒剤は?」

「一時的な物だから作ってません。どっちの相手します?」

「シア」

「手を出したら許しませんよ」

「わかっている」

「あれはどうしますの」

「後日手を回す。シア優先」

「マール様!!聞いてください」


どうしよう。オルゴール。壊れました。


「シア」


目の前にリオがいます。オルゴール…。


「シア。大丈夫。直るよ」

「なおる?」

「ああ」

「せっかく、らうるが、なおしてくれたのに」

「俺が直すから泣かないで」

「でも、悲しくて」

「おいで」


両手を広げるリオの首に手を回します。

涙がどんどん流れて止まりません。


「シエル、オルゴールとシアの荷物の回収を」

「マール様、レティシア様は嘘泣きです。騙されてます」

「うそついてない」

「人の物を勝手にレティにかけて何を言うのよ。慰謝料請求するから」

「ひどい。偶然ぶつかっただけなのに」

「しらじらしい。お望みなら貴方にも薬をかけてあげるわよ」


ふわりと体が浮きました。本当に大事だったのに。悲しくて涙が止まりません。


「うそついてない」

「わかってるよ。大丈夫だから泣かないで」


抱き上げて胸に顔を埋めさせながら頭を撫でる優しい手と声に安心してさらに涙が溢れます。

リオの部屋に着くと膝の上に乗せられました。机の上に道具と部品を並べてリオはオルゴールを真剣な顔で見てます。


「りお、なおる?」

「直るよ。少しだけ待ってて」


涙を拭う優しい指が離れてリオの手がラウルのように迷いなく動き始めました。外れたネジがどんどんもとにもどっていきます。


「りおはすごいね。なんでもできる」

「ほら。直ったよ」


ネジを回して蓋を開けると音が聴こえました。明るい音色が部屋に響きました。


「リオ、ありがとう」

「涙、止まった?」

「うん。嬉しい。りお、大好き」

「俺もだよ」


優しく笑うリオの顔が近づいて唇が重なりました。胸の鼓動が大きくなり、自分がおかしくなる。唇が離れていくのが寂しい。


「りお、もっと」


リオの顔が赤くなり近づく顔に目を閉じる。何度も口づけられ、目を開ける綺麗な瞳が細められ笑う顔にうっとりします。リオとの口づけはおかしくなるけど嬉しくてたまりません。


「嬉しい。大好き」

「シア」


うっとりしてしまう極上の笑み。頬に添えられる手に手を重ねます。大好きなものに囲まれて嬉しくなり笑みがこぼれます。甘い瞳のリオに首に口づけをされ、くすぐったく笑いが止まりません。リオがディーネみたいになりました。


「リオ、レティにこれ以上手を出したら許さないわ」


ディーネが机の上に出てきました。


「ディーネ!!」


跳びついてくる可愛いディーネを受け止めます。


「かわいい。ディーネも大好き」

「私もよ」


胸に甘えるように頬擦りするディーネが可愛いです。


「俺のシアが!?でも良かったか。シアの成人まで後三年。長い。なぁ、シア、そのオルゴールそんなに大事?」

「うん。大事」

「なんで?」

「ターナー伯爵家の思い出がいっぱいつまってるから。それにラウルとリオが直してくれたから。

この曲、はじめてリオと弾いた曲。聴くと元気になる」


リオにギュッと抱きしめられました。リオの腕の中は大好きです。


「俺のシアが可愛くてどうにかなりそうだ」

「嬉しい」

「リオ」

「わかってるよ。ディーネ。これ以上は手を出さないから。満面の笑みで無防備なシアが可愛すぎる」

「リオとディーネが仲良いのは嬉しいけど寂しい」


リオとディーネが二人の世界にいます。腕の中のディーネが頬を舐めました。


「ディーネ、くすぐったい」


あまりのくすぐったさにまた笑ってしまいました。



温もりに目を開けるとなぜがディーネを抱いてリオに抱きしめられてます。ディーネが呼んでないのに出てくるのは珍しいです。リオとの距離の近さに胸の鼓動がまた速くなり、体が熱くなります。きっと頭から湯気が出てますわ。心の用意が出来ないのにリオの顔を見るとまだ私の体はおかしくなります。リオの胸を押して離れます。


「リオ、恥ずかしいから、降ろして」

「シア?」

「私、どうしてここにいますの?」


リオの膝の上から降りようとするとお腹に回っている手がほどけません。気合いを入れてリオの顔を見上げると残念そうな顔をしています。


「色々あって、シアの様子がおかしかったから保護しただけ。気にしないで」


保護?

どういう状況ですのリオの顔が近づき口づけられます。どんどん自分の体がおかしくなりきっとさらに顔が赤くなっていますわ。


「名残惜しいけどこれで。そろそろ帰らないとな」


頬に口づけられ、どんどん心臓の動きが速くなります。恥ずかしい。顔が赤いのをなんとかしないと帰れません。

しばらくリオの胸に抱きしめられ宥めるように頭を撫でられていましたが、全然落ち着きませんでした。

顔が赤いのは諦めて外に出ると真っ暗でした。リオに送られ寮に帰りました。私の顔を見てもシエルは咎めることはありませんでした。お母様にも報告しないので安心してくださいと言われて力が抜けました。

ベッドに入ってから気付いたんですが、リオに保護された理由がわかりません。ディーネが気にしなくていいというので、気にしないことにしました。訳のわからないことばかりですわ。早く平穏な日が来ることを願い目を閉じました。

翌日に目がギラギラしたセリアに尋問されました。物騒な思いつきではないといいんですが。怖いことは知りたくないので気にするのはやめました。

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