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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第九十五話  追憶令嬢14歳

ごきげんよう。

レティシア・ルーンです。ステイ学園三年生です。


最近はなぜか握手を求められます。

学生時代に頻繁に握手を求められた記憶はありません。笑顔で手を差し出されると断れません。


「ルーン様、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


笑顔で祝福されて握手し去る令嬢を今日も見送りました。隣にいるステラは動揺することなく優しい目で見ています。


「ステラ、事情を知ってますか?」

「見守る会のご令嬢です。最近お二人の仲が進展しましたので」


見守る会?

お二人?


「進展?」

「はい。両思いおめでとうございます。レティシア様、お顔が赤いですわ。最近のいっそう可愛らしいレティシア様にファン急増は仕方ありませんわ」


これは知らなくていいことでしたわ。ありえません。顔が羞恥で染まっているでしょう。公爵令嬢としてあるまじき姿ですわ。

視線を集めるのには慣れましたが、両思いって……。

困ったわっと微笑むステラが可愛いですが複雑です。昔ならリオの所に駆け込みましたがもうできません。落ち着かずさらに悪化しますわ。赤くなるなんて公爵令嬢としてあるまじきとわかっているのにどうにもなりませんわ。


「やぁルーン嬢、グレイ嬢」

「ごきげんよう。グランド様」

「グランド様、私は怒ってますのよ。約束したのに」


耳心地の良い声の持ち主を私は尊敬していました。だからといって許せません。生徒会にいるはずのリオがあの場にいたなんて明らかにおかしいです。グランド様はきっと腹黒ですわ。


「約束を破ってないよ。他言してない」

「ノア様にリオを呼びに行かせたましたわ」

「駄目って言われてないよね」

「意地悪ですわ」

「リオの友人だから。また訓練付き合ってあげるから許してよ。最近リオ忙しいんだろ?」


睨んでも笑顔で流されます。まさかグランド様が…。薄々気付いていましたが……。でもグランド様の申し出はありがたいです。最近はルメラ様が殿方をイチコロして取り巻きを作りました。その所為かリオに二つ忠告されています。一つは一人で行動しないこと。もう一つは監督生のいない訓練の禁止です。最近はリオは多忙のため全然訓練に付き合ってくれません。

エイベルを訓練に誘うと忙しいからと断られました。取引も全てお断りされ、忙しいから出てけと部屋から追い出されました。


「わかりましたわ。はい。リオは訓練も付き合ってくれません」

「今は挑戦者を叩きのめすのに忙しいからね。武術大会より真剣にしてるよ」

「挑戦者?」

「最近のルーン嬢、綺麗になって人気が出たでしょう?それでリオに挑戦者が絶えない」

「人気?どうしてリオに挑戦しますの?」


苦笑しているグランド様のよくわからない言葉に首を傾げます。


「自覚ないかぁ。リオを倒してルーン嬢とお近づきになりたいってことだよ」


ルーンと親交を深めたい方でしょうか?リオではなく私にお話をしていただきたいですわ。


「リオに迷惑をかけていることはわかりました。私に面会依頼をくだされば」

「わかってないね。リオの訓練だから気にしないで」

「訓練でしたら私も混ぜてほしいです!!」

「修羅場だよ。わかった。俺が付き合う。俺と訓練しよう。俺も体を動かしたいから付き合って?」


ありがたい申し出に遠慮はしません。私は強くならないといけません。笑みを浮かべて頷きます。


「光栄ですわ」

「お邪魔でなければお傍で見ててもいいですか?」

「ステラ?訓練室は暑苦しいですが」

「レティシア様がいればどんなところも大丈夫です」


愛らしく微笑むステラを連れて訓練室に移動しました。訓練室で待ち合わせたグランド様に剣の指導をしていただくのをステラは静かに見ていました。

ステラが殿方に絡まれたらグランド様が訓練を中断して颯爽と追い払ってくれました。ステラはグランド様に見惚れる様子がないのが残念ですわ。いえ、人の色恋には関わりませんわよ。


一旦剣を置いて休憩をしているとドコン、ドバンと騒がしい音が響いてます。訓練の森の方でしょうか?


「グランド様、森から凄い音がしますが、大丈夫なんでしょうか?」

「いつものことだから気にしないで。リオが訓練してるだけ、ごめん。忘れて、余計なこと言った」



目を見張りごまかすように笑ったグランド様の言葉を聞き逃したりしませんわ。リオの訓練している所はあまり見たことありません。


「見たいですわ」

「私も!!」

「グレイ嬢も!?」

「武術大会見るの好きなんです。駄目ですか?」


おねだりするステラは可愛いですわ!!私も便乗しましょう。


「グランド様、お願いです。私、リオの訓練をあまり見た事がありません。いつかリオに勝つために!!」

「そろそろリオに勝つのは諦めようよ。わかったよ。遠くからね。危ないから」


じっと見つめているとグランド様が溜め息をつきました。勝利に笑みを浮かべます。


「わかりましたわ。ステラは私が守りますわ。ご安心を」

「ルーン嬢は人の話をよく聞こうね」


グランド様と一緒に森に入ってすぐに結界で覆われました。人の気配がする方向をじっと見つめると濃紺を見つけました。

ん?

リオがいましたが複数の生徒に囲まれています。黙視できるだけでも8対1?訓練ではなくいじめですか?


「グランド様、これはさすがにひどくありません?私達は大人しくしてますので加勢にいってくださいませ」

「大丈夫。余裕だから」


隣に立ち笑っているグランド様は加勢する様子はありません。リオの魔力の気配がして視線を向けると風で大柄な先輩方が吹き飛ばされました。さすがグランド様。確かに余裕ありそうですわ。


「お前らいい加減にしろよ。敵わないのわかるだろ?」

「敵わなくてもこの時間が大事だろう」


リオと訓練したいんですわね。吹き飛ばされた先輩方が魔法で攻撃し、リオが相殺してます。皆様、笑顔で楽しそうですわ。


「お前らも邪魔しやがって」

「俺達は混ぜてもらってもいいんだが」


詠唱なしで仲良くお話しながら魔法を披露してますわ。意地悪ではありませんでしたわ。訓練というよりじゃれ合いですわ。


「誰が混ぜるかよ。視界にいれるのも嫌だ」

「心が狭い男は嫌われるよ」

「邪魔だから諦めてほしいんだが。お互い時間は有意義に使いたいだろう?」

「俺達は十分有意義に過ごしているよ」


多忙なリオの時間は取り合いですのね。お友達と過ごす時間は有意義ですわ。私はお邪魔をする前に退散しましょう。お友達との大事な時間ですわ。それにリオは最終学年。卒業すれば中々会えなくなるお友達も多いでしょう。


「グランド様、リオはお友達がたくさんいますのね」

「友達?」

「訓練よりもじゃれ合いですね。仲良きことは美しきですわ。ステラ、邪魔してはいけないから行きましょう」


ステラと手を繋ぎ立ち去る前にリオに手を振ります。楽しそうなリオは気づきません。リオのお友達と目が合ったので、リオのことをお願いしますとの思いを込めて、笑顔で礼をします。お友達が固まりました。淑女の笑みでは駄目ですか?アナを真似してニッコリ笑顔を浮かべてみます。


「ルーン嬢、行こう。急いで」


グランド様の焦った声に促されて急ぎ足で進みます。

後方で大きな音が聞こえました。あそこにいれば巻き込まれましたわ。

流石グランド様です。私はこんな大技が出るとはわかりませんでした。離れていても木々が飛び散るのがよく見えますわ。ステラは怖がる様子もなく足を進めています。

制服に着替えて玄関に行くとリオがいました。


「サイラス、シアは俺が送るから、グレイ嬢を」

「わかったよ。グレイ嬢、行こう」

「ステラ、また。グランド様ステラをお願いしますね。手を出したら許しませんよ」

「手は出さないから安心して。またね。リオわかってるな?」

「あぁ」


ステラは第二寮で方向が違います。別々のほうが早く帰れますものね。二人を見送ると手に持っていた荷物がリオに取られました。


「訓練お疲れ様です」

「シアも訓練してたんだな」

「グランド様が付き合ってくれました。リオは人気なんですね」

「は?」

「あんなにリオと一緒に訓練したい人たちがいますもの。私も混ぜてほしかったですが諦めましたわ」

「え?諦めた?」

「殿方の友情には入れませんわ。時々でいいので私にも時間をくださいませ」

「シアにならいくらでも俺の時間をあげるけど」

「無理な申し出はいけません。それにリオのお友達に私が嫌われてしまいますわ」

「俺は嫌われてくれるほうがありがたいんだけど」

「ひどいですわ」


リオに手を繋がれて歩き出します。温かくて大きい手に包まれると体が熱くなります。今までどうして平常心を保てていたのか不思議でたまりません。まだ照れますわ。


「可愛いシアをあんなやつらに見せたくないからな」

「焼きもちですの?」

「あぁ」

「お友達思いですわね。殿方の友情羨ましいですわ。たまには私のことも思い出してくださいませ」

「え?俺はいつもシアのことだけ考えてるよ」

「まぁ、お友達に聞かれたら大変ですわ」

「おぞましい勘違いはやめて。本当に。頼むから」

「リオ?」


腕を引かれて抱きしめられました。また胸の鼓動が大きくなりどんどん速くなっていきます。目を開けるとリオの顔が正面にあり、美しい銀の瞳に見つめられています。頬に手が添えられ、甘く微笑む顔に自分がおかしくなるのがわかり目を閉じる。唇に触れた感触に口づけされていることがわかりさらにおかしくなりますわ。呼吸もできずに息が苦しく力がどんどん抜けます。


「俺にはシアだけだから。わかった?あいつらのことは忘れて、俺の事だけ考えて」


目を開けるとリオの甘い瞳と声に何も考えられず頷くしかできません。恥ずかしくてたまらないことだけがわかりリオの胸に顔を埋めます。


「シア、顔あげて、顔みせて」


甘く囁く声に首を横に振ります。無理です。きっと真っ赤です。

頬に添えられた手に無理やり顔を上げさせられます。銀の瞳が細くなりまた顔が近づき、頬に口づけされました。心臓が・・。死んじゃいます。


「その顔、俺以外に見せないで」


リオの甘い声が耳に響きます。待って、ここまさか・・。

顔をあげて、周りを見渡します。

リオに甘い瞳で見つめられてますが、負けては駄目です。

リオの胸を力いっぱい思いっきり押します。

ここ外です。人に見られたら耐えられません。マナー違反ですわ。

令嬢としては駄目ですが、全速力で寮への道を駆けだします。

リオの声など気にしてはいけません。リオに捕まる前に寮の自室に飛び込み驚いているシエルに抱きつきました。突然主人に抱きつかれたシエルは困惑しています。それでも優秀な侍女は何も聞かずに背中を撫でてくれました。

私はどうやって生きたらいいかわかりませんわ。

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