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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第九十一話  追憶令嬢14歳

ごきげんよう。

レティシア・ルーンです。ステイ学園三年生です。


私は午後の授業を休んでリオの部屋にいます。リオの膝の上に乗せられている状況がよくわかりません。昔はリオや伯父様の膝の上によく座っていましたが入学してからは卒業しましたわ。訳のわからない状況から解放されたことにほっとすればいいんでしょうか?ルメラ様とは関わりたくないですわ。もう何も考えたくありません。


「フウタ、結界を」

「任せて!!」


風の結界で覆われましたわ。私の椅子になりお腹に手を回しているリオは授業をさぼっていいんでしょうか。


「強烈だったな。本当にアレに殿下達がイチコロされたのか?」

「昔はイチコロされましたよ。リオはタイプではなかったみたいですが」

「それはよかったよ。何を仕掛けてくるかわからないから当分は一人で行動するなよ」

「私は意地悪してませんし、直接何かされたわけでもありません。もう関わるつもりもありませんわ」

「朝と帰りは送るよ」

「リオ、お仕事は?」

「朝はセリアと一緒に登校して。放課後は俺のところで過ごせばいい」


リオの部屋でずっと過ごすのはちょっと。脱貴族のための貴重な時間が、


「図書室に」

「俺が欲しい本を借りてやるよ。部屋に置いておく。魔法関係の文献を読みたいんだろう?」

「向上クラブに」

「帰りは迎えに行くから今まで通り付き添いを。訓練も俺が付き合うよ」


いささか警戒しすぎだと思いますわ。でも優しい声に思考するのを放棄したくなりました。リオは心配性です。今は一人ぼっちではありませんのね……。


「わかりましたわ。これから攻略されていきますのね」

「誰もシアの周りを離れないと思うけどな。離れていくなら俺はシアが独占できて嬉しいけど」

「わかりませんわ」

「何があっても俺だけは傍にいるから安心して」


学園ではお友達ができました。時間と共に絆が深まることもエイミー様達を見て知りました。生前に私達が深めたものは呆気なくなくなりましたが。エイベルなんてシエルの美味しいお茶を飲ませてあげたのに傷つけましたわ。命は脆くて強い。命と違い縁や絆は目に見えません。

リオには申し訳ないですが、やっぱり怖いです。私はルメラ様のような魅力を持っていませんもの。可愛らしくて、素直で、優しく守りたくなるようなご令嬢。あの頃はなかった抱きしめてくれる温もりとゆっくりと頭を撫でる手。窓の外には青空が広がっています。青空の下で四人で笑い合っていた頃は知りませんでしたわ。そして知りたくなかったですわ。あの方の語る理想の未来にとって私が邪魔だったなんて。きっと今頃は絆を深めているでしょう。私が結んだ仮初めのものでないものを。私は関係ないですが。優しい手に甘えて思考を放棄して目を閉じました。どうでもいいことですから。



リオの忠告通りに寮以外は一人になることは極力避けました。ですがルメラ様が私に声を掛けることはありませんでした。リオの杞憂でしたわ。よく殿方と一緒にいるのは見て見ぬフリをします。

ルメラ様が殿方をイチコロしはじめると、ルメラ様は私に意地悪されていると噂を流しました。私は関わっていませんが一部便乗している令嬢達がいます。

私にできることは、自分の身の安全を守ることとうちの派閥の令嬢が愚かなことをしないように声を掛けることだけですわ。

ルメラ様の編入から学園の雰囲気が変わりました。男爵令嬢がここまで影響力を持つなんてある意味才能でしょうか。

そして向上クラブも変わりました。

向上クラブはルメラ様の被害者保護の会になっています。

アナ達はなんと一組に上がりました。ノア様も一緒です。ノア様のアナ達と過ごしたいと言う可愛いらしい理由に笑ってしまいました。ノア様はロンと仲良しですものね。アリス様も大喜びでした。そう、アリス様です。

いつの間にかアリス様も向上クラブのメンバーになっていました。

私は向上クラブに顔を出すたびに同じ話し合いをしています。お茶を飲んでいる私の正面には不機嫌な顔のアリス様。


「レティシア様、私は許せませんわ!!殿方に近付くのもレティシア様の悪口を流すのも」

「アリス様、落ち着いてください。あの方は貴方の手におえません」

「ですが…」

「お気持ちだけありがたくいただきますわ。ノア様は大丈夫ですの?」

「ノア様はあんな女になびきませんわ」

「良かったですわ。相手にしてはいけませんわ。ロン達は?」

「ルメラ様は貴族子息ばかり声を掛けていますわ。最近は両殿下にも接触されました」

「イチコロですか?」

「そんな様子はありませんが、令嬢達がいつまで静観しているか。女性のお友達は誰一人いませんし、あんな方はごめんですわ」


アリス様はルメラ様の情報に詳しいです。そして喧嘩をしようとするのでいつも止めます。話が通じない方は相手にしてはいけません。


「そうですか。アナ達が被害に巻き込まれないかだけ気をつけてもらえるかしら。令嬢達の手駒に選ばれたり濡れ衣を被せられないように」

「お任せください。大事なお友達ですもの」

「ありがとうございます。心強いですわ。アリス様も気をつけてくださいね。どうか深入りはしないでくださいませ」


アリス様に任せればたぶん大丈夫ですわ。申し訳ないですがアナ達にマートン侯爵令嬢の後ろ盾がありがたいです。ノア様では色んな意味で心配ですわ。

アリス様も落ち着きましたしこれで一安心ですわ。


今日もリナ達は婚約者がイチコロされて落ち込んでいる令嬢を慰めています。どこから拾ってくるかはわかりませんが。


「ルーン様、私、どうすればいいのですか?」


アリス様が落ち着いたのでお茶を飲んでいた私にできるのはお茶とお菓子の提供くらいですわ。でも何が起こっても変わらない答えがあります。


「貴方の家と名前にに恥じないようにされればいいと思いますわ」

「そうですわ!!あんな女にイチコロされた婚約者なんて忘れて素敵な恋を探しましょう」


お菓子を食べていたアリス様が勝ち気な笑みを浮かべて意気込んでます。恋探し?


「婚約破棄されて困るのはお相手です。相手が望むなら婚約者のためを思う振りをして破棄の打診を受け入れてあげてくださいませ」


アリス様?

何を言い出しますの?


「貴方は婚約者のためを思って身を引いた健気な令嬢。きっと次はもっと素敵な婚約者が見つかりますわ」


納得しましたわ。泣いていたご令嬢はアリス様と同派閥。


「マートン様!!」


ご令嬢の瞳に力が入りましたね。ただ強気な令嬢は注意が必要なので一応忠告をしましょう。


「貴方は可愛いらしいです。品行方正に務めていればご縁に恵まれますわ。嫌がらせなど、無駄な時間を使わずに自分磨きに使ってくださいませ。私は貴方が貴族としてふさわしい貴婦人になると信じてますわ」

「ルーン様!!頑張ります。あんな人より素敵な人を見つけてみせますわ」

「素敵ですわ。ルメラ様には関わらないでください。できればお友達にも伝えてくださいませ」


泣いていたのが嘘のように満面の笑みを浮かべて意気込んでます。この令嬢はもう大丈夫ですね。生前は知りませんでしたが気が強い令嬢が多いようです。淑女の仮面は剥がれてますが、公式の場所だけしっかりしてくれればいいですわ。

この後差し入れを持ったリオが迎えに来ました。エセ紳士モードで私がお世話になったとお礼を言うリオにご令嬢達は見惚れていました。

まさかルメラ様にイチコロされた婚約者を捨てる令嬢が続出するとは思いませんでした。リオは気の強い令嬢に笑っていました。婚約破棄は醜聞になりますが、悪縁を絶ちきるためなら仕方ないこと。淑女らしく過ごしていただけるならご縁に恵まれることを祈りましょう。そして平穏な日が訪れるように祈るばかりですわ。

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