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第六話 脱出

 深いところに沈んでいくような感覚が体全体を覆う。

そして少ししたら体が底についたように感じた。

辺りは真っ暗だ。



(俺死んだんだよな。どっちにしろゲームオーバーだったってわけか……)



そして視界の左下に何か文字のようなものが現れた。


【復活の秘薬×1を使用しました。】



(なんだこれ。あ、そういやさっきお詫びか何かでもらったのか。)



その直後、康太の目の前の暗闇の中心部分から光が差し込む。

その光はだんだん大きくなり、康太を包み込む。

とても明るいが何故かまぶしいとは感じない。

何か温かみを感じる。

そんな光。


しばらくすると光が消えた。

そして体の感覚があることに気付く。

辺りからはダジルと監視員の喋り声が聞こえる。



(どうやら本当に生き返ったみたいだ。ただ今目を開けると奴らにバレてしまうかもしれない。少し様子を伺おう)



「おい看守、こいつの体全てを調べ上げろ。内臓の中まで全てな。後処理も頼んだぞ。それにその横の女も始末しておけ。ドナークを殺した今そいつにも用は無い」


「はい! ダジル様! 即急に取り掛かります!」



そしてダジルの足音であろう音がだんだん遠のいていく。



「まったく、ダジル様も人使いが荒いな……。でも逆らうと俺が殺されちまうんだ。早いとここいつを調べよう」


「な、なにも殺すことなかったんじゃないの!?」


「なんだ? 口答えすんじゃねぇよ。先にお前から殺っちまおうか?」


「あんたたち人間じゃないわよ! それに……さっきドナークを殺したって、あれ本当なの……?」


「あぁ、ダジル様が心臓と脳みそを切り刻んだらしい。クロニクル国の連中も可哀想だなぁ! デスカイザーに占領されちまうなぁ? お前ら全員殺されちまうなぁ??」


「……っ」


「なんだぁ? 泣いてんのかぁ?? あ、そうか確かお前はドナークの娘だったなぁ。残念なこった。ただ安心しろ。お前も今から親の元へ送ってやるからよぉ。」



(なに? コレアが王様の娘? そうだったのか。)



「じ、上等よ! やれるもんならやってみなさいよ! このデブ!!」


「あぁ!? もうキレたぜ。お前今からぶっ殺してやる。」



ドスンドスンと看守の足音が聞こえる。

かなりキレているようだ。



「お前、よく見ると案外可愛い顔してんじゃねぇか。ただ殺すだけじゃ物足りねぇ、死ぬ前に俺が遊んでやるよ。」



その時だった。

康太は目を開け、看守のところまで走り、思いっきり頭を蹴り上げる。



「ぐはっ、お前なんで生きてやがる!?」


「一度死んで生き返ったんだよ。気持ちわりぃことしてんじゃねぇこの悪党がっ!」



俺はそう言いもう一度看守の頭を蹴り上げる。



「コレア、こっちに来い! 俺の後ろに隠れろ!」


「えっ! う、うん!」



その時のコレアの顔は少し赤くなっているように感じた。

でも今はそんな事気にしている状況ではない。

奥で倒れていた看守は何もダメージが無いかのように起き上がりこちらに向かってくる。



「やってくれたな小僧。お前相当死にたいらしいな。お前らまとめて相手してやる。ぶっ殺してやるよぉ!!」



看守はそう言いながらポケットからナイフのようなものを取り出し、走ってくる。

それを康太とコレアは危機一髪で避ける。

息が上がっている康太に対し、コレアは中々運動神経がいいようで落ち着いている。



「すばしっこい餓鬼め。絶対に逃げられないようにしてやる。これならどうだ? 小刀生成(ブレードフォーム)!」



看守が呪文のようなことを唱えると、持っていたナイフが赤黒く光りだす。

すると、看守の背後から大量のナイフが出現した。

100本は超えているだろう。

そのナイフが宙に浮き、刃先はこちらを向いている。



「あ、あんた、今何かアイテムとか装備持ってないの!? あれまともに喰らったら私たちもろとも死んじゃうわよ。何か対抗しなさい!!」



康太はそう言われ死に物狂いで何か持っていたかと確認する。

石に手を伸ばすが死ぬ未来しか想像できない。

そこでさっきお詫びでもらった時止の勾玉を思い出す。



「これだ。」



【アイテム】を開き、時止の勾玉を選択。



【使用しますか?】

【はい】

【いいえ】



と表示される。



即座に【はい】を選択する。

それと同時に左下に【時止の勾玉×1を消費しました。】というログが出てきた。

次の瞬間、目の前に時止の勾玉と思われるアイテムが出現し、それから灰色の何かが漏れ出る。

あっという間にあたりがそれで包まれた。

どうやら灰色の何かで包まれた所から時が止まっていくようだ。



「と、止まったのか?」



目の前には看守がこちらにものすごい表情で突っ立っており、後ろを見るとコレアが焦った表情で康太の服の裾を掴んでいる。

そして視界の右上には【28秒】という文字がある。



「そうか、時間は30秒しかない。この間にどうにかしてこいつを倒さないと」



康太は急いで看守に近づき、顔を思いっきり殴る。

しかしとてもダメージが入っているようには思えない。



「これで無傷だったらヤバい。どうしようか……」



右上には【18秒】という文字が浮かんでいる。



「そうだ……もうこれしかない」




 【0秒】

それと同時に灰色だったあたりに色が戻る。

そして看守が思いっきり叫ぶ。


「死ねぇぇぇええ!!!」



俺はニヤリと笑いこう返す。



「死ぬのはお前だ」



康太がそう言い放つと同時に看守の体全体に100本を超えるナイフが突き刺さる。



「お、お前どうやって……」


「さぁな」



看守は倒れ、辺りは血で真っ赤に染まった。



「あ、あなたもしかして、時止の勾玉を持っていたの?」


「え、うん。なんでわかったんだ?」


「一瞬時空が歪んだ気がしたからよ。それに私も一度使ったことがあるの。お父さんのだけど」


「そうなんだ。……その、さっき話を聞いていたよ。お父さんの件は残念だったな……。それでその事なんだけど」



その時、檻の外からコツコツという足音と共に、誰かの声が聞こえた。



「何の音だ??」


「コレア、この事は後で話すよ。それよりここを離れよう。」


「え、ええ。でもどうやって。」


「これを使って。クロニクルカース前で集合だ。」



そういうと康太はアイテムボックスから転移石を選択する。

そして【捨てる】を選び、個数を選択。


【転移石×1を捨てました。】というロゴが表示される。

そして手の上に現れた転移石を



「あなた転移石も持っているの!? どれだけレアアイテム持ってるのよ。」


「そんなことで後でいいだろ! 早く行くんだ!」


「う、うん」



その会話と同時に転移石を選びなおす。

コレアが先に転移したのを確認し、康太も転移した。

慌てた別の看守が檻の外からこちらを見ているのを横目に体がその場から消えていく。




 すぐにさっきとは別の視界が広がる。

辺りは夜だが、見覚えのある場所。

この世界に来て初めてネマルに案内してもらったクロニクルカースが目の前に佇んでいる。


そして少し離れたところに人影が見える。



「あんたも無事着いたみたいね」



どうやらコレアみたいだ。

クロニクルカースから漏れ出る光で顔を確認する。


「ああ、コレアも無事に着いてよかったよ」


「あ、ありがとね。助けてくれて」



コレアは近づきながら顔を赤らめてそう言った。

初めてコレアの顔をまじまじと見た康太の顔も少し赤くなっていた。


「お、おう。それより早く宮廷へ向かおう。何があったか伝えないと。それに今の所はまだ大丈夫そうだけど、すぐにあいつらが攻めてくるはずだ。戦争が起きるかもしれない。」



康太とコレアはその場から走り出し、宮廷へ向かう。

しばらくするとコレアが喋りかけてきた。



「あんた、さっき転移する前に言おうとしたこと何だったの?」


「あ、あぁ、それはな……」



康太は意識を失うまでの出来事を走りながら伝えた。

もちろん違う世界から来たとは言わずに。

王様の死に様を聞いてコレアは少し頬に涙をこぼしたように見えたがすぐに前を向き、悲しい表情を見せずに走り続けた。



「そ、それでその聖具ってやつ9個も盗られたんでしょ。クロニクルやられちゃうんじゃないの?」


「ああ。たぶんこの状況はかなりヤバいと思う。でも何か策はあるはずだ」


「そういえばさっきダジルという男とあんたが喋ってた時、10個目の聖具がどうたらって話してたわよね。それはなんなの?」


「あぁ、俺もその事が重要なカギになってくると思ってる。たぶんこれの事だと思うんだ。これ以外見当もつかない。」


「なに、それただの石じゃないの??」


「俺も始めはそう思ったんだけど、これから何かを感じるんだ。希望みたいななにか。」


「あ、あんた言ってること臭いわよ。」


「な、なんだよ。別に良いだろ。」



まさかゲーム内でもこんな風に言われるとは思わず、少しどぎまぎしながら宮廷へ向かう康太であった。









あれ、まだ最強シーン出てきてなくね?

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