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第二話 クロニクルカース

 「わかりました。説明してあげます。ここクロニクル国は現在クロニクル13世により平和が保たれています。というのもクロニクル国は30年前まで内戦状態だったのです。時は120年前に遡ります。クロニクル10世から11世へ世代交代が行われた年です。普通王の長男息子が次の王に選ばれるのですが、当時二卵生の2人息子が生まれてしまったのです。名前はマローナとデイス。兄弟の区別をつけることが少し難しい状況にあったため、王は次期王としてふさわしい方を対等に決めるため二人を戦わせたのです。そこで勝利したのはマローナ。デイスはこの結果に相当落ち込んだのか自害してしまいました」


「なんともいえんお気の毒な話だな。でもそれとクロニクル国の内戦はどう関係してるんだ?」


「それは王の器に関係しています。クロニクル家は代々世代交代と同時に<聖具召喚の儀(ローティスサモンズ)>という儀式を行っていました。クロニクル家は神に認められた家系。新王には神から聖具が与えられたのです。初代~10代の代々すべての王が神から聖具を与えられてきました。そして、その聖具の力、それはは計り知れないものでした。この世界の装備すべては【C B A S SS SSS】にランク付けされているのですが神からの聖具すべてはランクSSSを優に超えると言われ、聖具一つで国を統治できる力を持つと言われています。まぁ噂程度の事で実際に私は見たことが無いのですが。おっと話がずれてしまいましたね。えっと、マローナの話ですね。もちろん11世になる権利を得たマローナにも<聖具召喚の儀(ローティスサモンズ)>が行われました。しかし、マローナには聖具が与えられなかったのです。神が王の器として認めなかったということですね」


「マローナは聖具を持たずに11世になったって事? あ、でも代々の王の聖具はどうなるの? もらっていたら十分強いし王の器とか関係なしに国を統治できちゃいそう」


「そう簡単な話では無いですよナマケくん。まず<聖具召喚の儀(ローティスサモンズ)>の素材は前王の聖具を使うので残らないんです。それにマローナは王にはなりませんでした。マローナは儀式の後、《デイスを王にすべきだったんだ。王の器じゃない! 神を侮辱した!》などと国民からひどい反感を買いましたから。そして聖具は儀式で使ったが最後、この世から無くなりました。

それからはクロニクル11世の座は10世の弟に儀式無しに譲られました。マローナはひどく心を病ませました。ずっと信じてきた自分の王の器が神により見捨てられたのですから。そしてマローナはクロニクル国に反逆します。マローナを王として讃える数少ない国民とともに」


「なるほどね。それで120年前からクロニクル国に内戦が起こっているわけか。なかなかマローナの陰謀とやらもしつこいんだな。それにしても120年もの間国が壊滅せずに済んでるなんてそれからの王は優秀ですな。」


「まぁ、続きを聞いてください。その後マローナはデスカイザーという反政府組織を作りました。そしてその組織の王になります。それが120年でだんだんとデカい勢力になっていきました。マローナはとても秀才な軍師だったと言われています。その頭を使ってとても上手いこと戦争を乗り越えてきたんでしょうね。そしてクロニクル国はクロニクル派閥とデスカイザー派閥で別れました。それは今でも続いており、現在力はほぼ互角になりました。事あるたびに内戦していた両派閥は互いに威嚇し合い、状況は最悪でした。しかし、クロニクル王が12世から13世になってすぐ内戦がきっぱりと無くなったのです。それが30年前の話です」


「そもそも戦争の発端はマローナの反逆だろ? マローナ自身の問題で内戦が起こって90年も続くってどんなにすごいやつだったんだよ。内戦なんてすぐにやめたらよかったのに。それに、クロニクルカースの話が全く出てきてないけど、いつその話と結びつくんだ?」


「兵士たちの戦う理由はもうマローナのことと関係無いんですよ。やめようと思ってもやめられないんです。敵派閥に家族を殺され、友達を殺された復習心があるかぎりは。それとナマケくんの気になっているクロニクルカースは内戦が無くなった理由と深く関係しています。少しあちらに歩きましょう」



ネマルはそう言うと森の奥の方へゆっくりと飛んでいく。

思えば異世界に転移してから10分もの間、小さい妖精と立ち話をしていた。

我に返って俺は何をしているんだと康太は首をかしげながら少し笑う。



「ナマケくん! こっちですよ!」


「ちょっと待ってくれ!」




それから少し歩くと森を抜け、だだっ広い草原と整備された道が出てきた。

そしてその整備された道の奥にとても大きい石碑が見える。


「おいネマル、あれはなんだ?」


「あれがクロニクルカースです」


「あれが内戦が無くなった理由に関係しているのか? 一体どういうことだ」


「まぁまぁ、そう焦らずに。近くで見てみましょう」



そういって康太とネマルは石碑の近くまで歩いた。



(あれ、この石碑どこかで見たことが・・・? 思い出せないな・・・気のせいだろう)



高さ30mほどのひし形をした巨大な青い石碑が地面に深く刺さっている。

石碑には今まで見たことが無い文字がずらずらと綴られており、そこには大勢の人々がボロボロの服を着て列を作って並んでいた。



「これはなんだネマル。この国の観光スポットか?」


「違いますよ! この石碑は神の落とし物です! 30年前に空から落ちてきたんです。しかもこの石碑すごいんですよ」


「何がすごいんだ? 夜になったら綺麗だとか言わないだろうな?」


「もう! バカにしないでください! この石碑はカースという物質を与えると装備をくれるんです! まぁ中には回復薬だとかあまりいらないものもくれるんですけど。その中には高ランク装備も含まれているんですよ。あと噂によると聖具も含まれているだとか・・・。まぁ聖具がでたら国民全員に王として讃えられちゃうレベルなので多分嘘だと思いますけどね」


「装備? そんなもの必要なのか? もう内戦は治まっているし平和なんだろ」


「何言ってるんですかナマケくん! この世界の敵は人間以外にもたくさんいるじゃないじゃないですか! 今来た森を出るとモンスターがうじゃうじゃいますよ? ってあなたはそこから来たのかと思ってましたが・・・。それにカースはモンスターを倒すとドロップする生命力のことですよ。つまりモンスターを倒さないと装備召喚は行えないんです」



ネマルは口を止めることなくこう続けた。



「それに、この石碑の出現は両派閥の内戦時代においてとても偏りを生むことになったのです。クロニクル派閥の領域に装備召喚出来る物体が落ちてきたおかげでクロニクル派閥は一気に戦況の優位に立ちました。そこで、デスカイザー派閥は断念したのか、すぐクロニクル派閥に泣き寝入りしたそうです。当初内戦があっさりと終わりすぎて、裏があるんじゃないかと両派閥王は疑われましたが、30年も内戦が起こっていない今となっては誰も疑いをかけていません。上層部の方ではピリピリとした雰囲気がまだ絶えないと聞いたことがありますが」



「なるほど、それで内戦が収まったのか。たしかにあっさりしてるな。そして、装備召喚ね。・・・そういうことか」



康太はネマルの発言ですべてを理解した。

康太と似たボロボロの服を着た列に並ぶ者達。

装備を輩出する石碑。

案内人の妖精。

これはクロニクルカース内のガチャだ。


(つまり俺は、クロニクルカースの世界に入り込んでしまったってわけか。

昨日の誰とも連絡がつかなかったりクロニクルカースが実際に配信されていなかったりした妙な現象については未だによくわからないが、今俺はゲームの世界に入り込んでしまった。ということは確かだ。とりあえず今はゲームを進めるかしないな。何か分かってくるかもしれない)



「おいネマル、俺もその装備召喚やってもいいか?」


「もちろんです! あなたはここに初めて来たんですよね! カースも持っていないようですから初回は私ネマルがカースを払ってあげます! えっと、100カースですね。・・・あれ? 100カース・・・無い・・・。なくしたぁぁぁ!!!」


「えっ・・・?」


「私の大事な100カース無くしちゃったぁぁ。毎日モンスターを倒して貯めたのに・・・。はぁ・・・ついてないな・・・。すみませんナマケくん。カースが無くて・・・。少しの間その服で我慢してもらっても大丈夫ですか・・・?」


「え、まじで? まぁ大丈夫だけど。てかネマル、俺この石碑やっぱ見たことあった」


「え、本当ですか!? どこでですか?」


「ちょっとそれは多分コンプライアンス的に言えないんだけど・・・・・・。俺ちょっと前にこのガチャ・・・・・・じゃなくて装備召喚をやった気がするんだ。だけどそこから記憶が無くてな。だから装備がどこにいったかわからないんだけど、たぶん初回のやつはもう終わったんだ。だからそう気を落とさないでくれ」


「はぇ? 何を言っているかわかりかねますが、励ましてくれたのですね。ありがとうございます。ん・・? ナマケくんプレゼントボックスに何か届いているようですよ? 10件も貯まってますね。ずっと置いていると消えちゃうので早く取った方がいいですよ」


「プレゼントボックス? あ、そうか」



(リアルすぎて忘れそうになるな、ここはゲームの世界だ。ファクターのゲーム性だとプレゼントボックスはあそこにあるはず)


康太は周りを見渡した。

すると視界の右上の方で何か丸い球体のようなものが浮いている。

それを指で触った。

すると、


右側に、

【依頼中のクエスト】

【達成済みのクエスト】

【アイテムボックス】

【プレゼントボックス】10件

【メール】


左側に、

【プロフィール】Lv.1 NMK 冒険者

【HP】135

【MP】84

【スキル】たいあたり


という項目がバッと出てきた。


(なるほど、ゲームの世界に入り込んだ時の違和感みたいなものは全く感じられない。ゲームの世界といったよりも近未来の世界に来ているみたいだ。ってかスキルがたいあたりってなんだよ・・・・・・。)



「それのプレゼントボックスってところ触ってみてください!」


「あいよ」


すると10件のアイテムがズラズラと出てきた。

そして何が送られて来たのか見ようとした。



「あっ・・・・・・」



(間違えていつものゲームのくせで一括受け取り押しちまった。一体何が送られて来たんだ?)



「ナマケくん? 一体何が送られて来たんですか? 見せてくださいよ~」


「ん、ちょっと待ってな」



康太はプレゼントボックスを右上の×ボタンを押して閉じ、アイテムボックスを指で触れた。

すると50個のブロックが描かれたアイテムボックスがズラッと目の前に現れた。

その中の上から10ブロック分はアイテムで埋まっているのか何故か黒で塗りつぶされている。


(なんだこれ? バグってんのか?)


康太はその一番上にあったひとつをタップした。


【装備しますか?】

【はい】

【いいえ】


といったメッセージが出現した。

どうやらこのアイテムは装備らしい。

康太は【はい】に触れた。


すると次の瞬間自分の着ていたおんぼろシャツが蒸発するように消え、銀色に輝く鎧が現れた。

胸元には大きいひし形の模様があり、その中に十字架が描かれている。

肩からは触ったら痛そうな突起物が生えていて首元は金色で染められている。



「う、うぉお」



(な、なんだこの装備、かっけぇ! 見た目よりも重くないし頑丈そうだ。なかなかレアなやつゲットしちゃってたりして。)



「ネマル~、この装備っていいのか? あんまよくわからなくて」


「ん~・・・・・・? こんな装備生まれて初めて見ました。この装備本当にこの石碑から排出されたものですか? 私は知りませんね~。でもその胸元にある十字架マークはクロニクルの国旗と一緒ですよ! 国の装備でしょうか?」


「そうなのか。中々かっこいいから気に入ったゾ。ただ装備の詳細が黒く塗りつぶされているせいでレア度がわかんねぇのが残念だな」


「だったら【HP】を見てみるといいですよ! 鎧装備はHPを増やしてくれますから! MPを増やしてくれる装備もありますけどね」


「そうなのか! 見てみる」



この後、康太は自分のステータスを見て驚愕することとなるのは読者の皆さんもご察しだろう。

まだ最強シーンは出てきません。

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