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第一話 開かないアプリ

 冴島康太(さえじまこうた)は部屋で一人スマホのアプリストア画面と睨めっこしていた。

あと30分で無料ゲームアプリ『クロニクルカース』がリリースされるからだ。

何でもこのアプリは有名ゲーム会社ファクターが10年もの時間をかけて作り上げたアプリで今までに開発されたどのアプリよりもお金・時間がかかっている期待の新作だ。

前回よりもあらゆる機能がパワーアップしており、グラフィックはもちろんキャラの技やストーリ性すべてにおいて新感覚を味わえるらしい。


それに今回実装される機能の一番の醍醐味はキャラクターの顔を自分の顔写真を使いそのままの顔にできる機能が搭載されている。

もちろんある程度の補正は入るが。



「今まで爆発的な人気作を出し続けてきたファクターさんよ、裏でこんな待望作を作っていたとは侮れませんな。ここ半年間このアプリを実際にプレイするのをずっと待ち侘びてきたんだ、絶対に誰よりも早くプレイしてやる・・・」



康太はスマホ画面を片手にWIFIルーターの通信確認をする。



「よし、WIFIも問題無し。充電もMAX。通知もすべてOFFだな。準備万端だぜクロニクルカースよ」



康太は今までにファクターが開発してきたゲームすべてをプレイしていた。

ファクターはキャラ同士の交流に力を入れたオンラインRPGアプリを多く輩出しており、その中でも特に人気作となった『ファーム戦線』だけは目いっぱいやりこんでいた。


プレイ時間は優に3000時間を超える。

血のにじむような努力をゲームに費やした康太は今ではゲーム内の有名人になっていた。

名前は毎回「NMK」に固定化している。

NO・MONEY・KOTA略してNMK、読み方は「ナマケ」だ。

中学生の時からゲームにハマっている康太は当時お金が無かった。

課金したくても出来ない中学生の悔しい気持ちを名前にしたのだ。

それにゲーム仲間からナマケと言われすぎて康太よりもナマケと呼ばれる方がしっくりくるようになってしまった。


そして大学生になった今康太はアルバイトというものをしていない。

したこともない。

NO・MONEY・KOTAを貫いているのだ。

そしてもちろんお金が無いため課金もしたことが無い。

いつのまにか課金を絶対にしないことが康太自身の信念になっていた。



「スイッターも新作の話で盛り上がってんなぁ。お、HAHOOニュースでも取り上げられてるじゃねぇか! マジでこれは気合いれていかねぇと」



一人で部屋でスマホ片手に熱狂するその姿は大学生というステータスが無ければ世間からオタクニートというレッテルが貼られていたことだろう。




 長期休み中の康太はここ3日間ずっとゲームに浸り、風呂も入らずスマホゲームに熱中していた。

そのため少し長めの髪の毛は汗でベトベトで、目の下には隈ができ、部屋にはお菓子の袋やペットボトルのゴミが散乱していた。

窓も開いていない暗い部屋の中、時計の針だけがカチカチと音を立てる。



「あーそれにしても一人暮らしは快適だ。何をしようが俺の勝手だし、親にも何も言われねぇ。まじであの時、親に頼み込んで正解だったぜ。・・・・・・お、そうこうしてる間に後5分切ってるじゃん! もう今から一回も瞬きしねぇ」



と言いながら数回瞬きをした後、残り4分になると同時にストップウォッチを起動させた。


―3分前


―2分前


―1分前


―10秒前


・・・


―3秒前


―2秒前


―1秒前


-0


康太は配信開始の22時になると同時にストアアプリの更新をし、いち早く『クロニカルカース』と検索。そしてダウンロードボタンを押した。



「はぁはぁ、5.4秒か。我ながらなかなか上出来だ」



康太はダウンロード時間の合間に汗をタオルでぬぐい、普段電気代を渋ってあまりつけないクーラーの電源を入れた。

そして水を飲み一息つく。



「お、容量ありそうなゲームだけど案外スイスイいくじゃん」



そうこう言っている内にダウンロードを終え、アプリを開く。

すると、真っ暗な画面にファクターの会社名が現れ、すぐに次の画面に映る。

希望に満ち溢れたBGMとともにクロニクルカースのスタート画面が開かれた。



「つ、ついに来たぞ!! まだ配信されて1分32秒しか経ってねぇ! 日本最速なんじゃねぇか!? とりあえずまだインストールが残ってる。はやくはやく!!」



スタートボタンをタップするとインストールが始まった。NowLoadingの文字と共に可愛らしい妖精のキャラクターが走っている。

2分程経つとインストールが終わり、名前を打ち込むスペースが現れた。



「毎度の事だけどここは、N・・・M・・Kっと」



NMKと名前を打ち込みゲームが始まった。

するとスマホ画面に少しアナログテレビのような砂嵐が出る。

そして、突如ガチャ画面が現れた。

そこには<初回無料10連ガチャ>と書かれている。



「え、砂嵐の演出はすごいけど、ファクターってガチャの前に絶対にチュートリアル挟んでなかったっけ。てかキャラ作成もやってねぇし。どういうことだ?」



しばし考えるが、ガチャが引きたくてウズウズしてくる。

その衝動を抑えきれず、康太は考えることをやめた。



「まぁいっか。無料ガチャは初めてやるゲームの醍醐味なんだ。気合い入れていかねぇとな。今回はこんな感じでくるって事で許してあげよ・・・・・・え? ちょっとまて」



康太は急なガチャ画面の出現に少し驚いたが、それよりもその上に書かれている数値に驚愕した。



「SSSレア装備の確立0.00001%!? はぁぁぁっ!? ふざけるなよ!? これまでどれだけレアな装備でも0.0001%だったじゃねぇか! 桁間違ってるぞコレ!! それに俺は無課金でやっていくんだぞ。当てれるわけねぇよ・・・・・・。初っ端から地獄かよ・・・・・・」



無課金勢において初回ゲーム時の無料ガチャ10回に求められることは絶対に1つは最強レアの装備をゲットすること。

いわゆるリセマラというやつだ。

今回のゲームにいたっては今配信されたばかりでネットに解析も出ていない。

意地でも何か一つは当てないといけない。



「まだだ! まだ、日本で一番早くプレイするという夢が絶たれたわけじゃねぇ。とりあえず、・・・一回引いてみるか。頼むぜ・・・オラァァァァ!」



部屋中に康太の叫び声が響き渡り、スマホの<ガチャを回す>というボタンが押された。

康太はそれと共に目をギュッと瞑り、今までに無いくらいグッと両手を掴みSレア装備が出るよう祈った。




 5秒程経っただろうか。

音にガチャを回しているような音が無いため一度康太は目を開けた。



「あ、あぁなんだ、まだローディングしているのか。このゲーム、装備とかにもめちゃくちゃ凝ってるって言ってたしな。それにこの確率だろ。めちゃくちゃ期待できそうだ」



そういって康太はまた目を瞑る。

それからさらに10秒程経っただろうか。

康太は痺れを切らしまた目を開ける。



「いや、おそくね? って、はぁ?? アプリ落ちてるじゃねぇか!! クソ! なにやってんだよこのおんぼろケータイ!! いいところが台無しじゃねぇか。てかこれガチャ無効化されてたりしねぇよな? さすがに・・・・・・」



康太は少し焦りながらアプリをもう一度起動させる。しかし、何度やってもアプリが起動しない。

少しイライラし始めた康太は徐にスイッターを開き、アプリが起動しない人を探した。

だが一向に見つからない。



「どうなってんだ!? 俺だけかよ。マジで運ねぇじゃん。しかもみんなチュートリアルやってるし。はぁ、やっぱり壊れてたんだな。通りでおかしいと思ったんだよな。初めからガチャ引かせてくるクソゲーがファクターから出るわけねぇし。はぁ、マジでついてねぇな俺」



そう言いながら康太はベッドに寝転がった。

スマホを見ていると気分が滅入ってしまうため枕の下にスマホを隠した。

そしてクーラーを止め、ベッドの上をはいずりながら窓を開け、部屋を換気する。



「なんだか疲れたな。まだ22時半か。今日は久々にゆっくり寝るか・・・・・・」



いつもオールをして、昼まで寝ていた康太だったが今日は疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。




 「ん・・・・・・、なんだまだこんな時間か・・・・・・。そーいや昨日は早く寝たんだったな」



スマホの時間をみると4時半を指していた。

そして寝る前に起きた惨事を思い出し、枕元からスマホを取り出した。

そしてスイッターを開き、クロニクルカースの反響を確認した。



「え・・・? 誰もクロニクルカースの投稿してないじゃん。面白くなかったのかな。てか、ゲームに関連すること何も出てきてない。どういうことなんだ? アプリは残ってる。意味が分からない」



寝る前にクロニクルカースのダウンロードをしたことは確かなようだが、ネットニュースやユーザーの反応に一切クロニクルカースの事が触れられていないのだ。

触れられていないというよりも、元々存在しなかったように感じられる。

頭が追い付かない事態に康太は大学が同じのゲーム仲間、勇作に電話を掛けた。



「おい、勇作! クロニクルカース始めたよな? 昨日の22時にファクターから配信されたやつ。あれってそんな有名にならなかったの?」


「・・・・・・・・お掛けになった電話番号は使われておりません」


「あれ、あいつケータイ変えたのかな。言っといてくれよ」



康太はその後、3時間かけてネットサーフィンを繰り返し、クロニクルカースの事を調べた。

しかしその努力も水の泡となった。

全く情報が出てこなかったからだ。


そして一番の問題は誰とも連絡がつかないことだ。

勇作に掛けてから色々な人に電話を掛けたが誰にもつながらない。

スイッターを見ても知らない人しかいない。



「とうとう、やばいなコレ。アニメ的展開で異世界にも飛ばされたか? いやでも冗談言ってる場合じゃねぇな。完璧に昨日とは違う何かが今起こってる」



そして康太は最終手段としてファクターの問い合わせ画面を開いた。

どう書いたらいいか分からないがとりあえずクロニクルカースの事についてメールを書いた。


<いつもお世話になっております。御社の方で昨日の22時頃、クロニクルカースという新作ゲームを配信されませんでしたか? 実際に私はダウンロードしており、とても困惑している状況です。何かそれに関連する情報などがあれば教えてください>



「とりあえず、こんなもんでいいだろう」



送信。

そしてスマホを枕の横に置く。

ブーブー、送信した直後スマホがバイブした。



「ん、メールだ、まさかもう返って来たのか? いや送れなかったのかも?」



スマホを開くと、株式会社ファクターから一通のメールが届いている。

件名は無しだ。

康太は少し怯えながらメールを開く。



<ゲーム名NMKこと、冴島康太様。ご連絡ありがとうございます。お待ちしておりました。今あなたが困惑していることは大変存じ上げております。申し訳ありません。あなたに今何が起こっているのか知りたいですよね。一度クロニクルカースを起動してください。どうかご武運を>


「やはり、クロニクルカースは存在した。何か裏がありそうだな。それと最後のご武運をってのはなんなんだ。」



そう言いながら、今までビビッて起動していなかったクロニクルカースのアプリを震える指でタップした。

すると昨日は開けなかったアプリがスッと起動した。



「お、起動し・・・」


「・・・。」


「・・・ここは?」



アプリが起動したと同時に康太は一瞬意識を失った。

そして次に目を開けるとそこには森が広がっている。

木々の間から日差しが差し込み、空気が澄んでいる。

地面に出来た水たまりを見て自分のいつもと変わらない顔を見て少しだけ安心する。



「ちょっとイケメンになってない? ってかどこかにテレポートしたのか? あれ、なんだこのぼろっちい服は」


「おーーい! そこの冒険者さーん!」



どこからか少女の声が聞こえる。

周りを見渡すがどこにもいない。



「こっちだよ! 冒険者さん!」



どうやら声は真下から聞こえているようだ。

康太が下を向くと、目の前に小さい妖精の姿をした少女が飛んでいた。



「うわぁぁぁ! なんだ!?」


「そんな驚かないでください。私は案内人のネマルです! あなた見るからにこの国初めてでしょ! よかったら私が案内してあげますよ!」


「いや、妖精というものが実際にいると思わなくて・・・。俺は冴島康太。初めても何も急にテレポート? してしまったらしくてここがどこかもわからないんだ」


「康太くんって言うんだね。ってあれ? プロフィールにはNMKって書いてあるけど。どっちが本当の名前なの? ふふふっ、おかしな冒険者さん。自分の名前も間違えて、ここがどこかわからないなんて! まぁ何があったにしろ、ようこそ! クロニクル国へ!」



ネマルは笑いながら康太の周りを飛び回る。

幻想的な光景に一瞬目を奪われそうになるが、ネマルの発言に康太は突っかかる。



「ク、クロニクル?? ちょっとまてネマル。それってクロニクルカースのこと? 昨日ファクターから出たやつ! あ、俺の事はNMKナマケって呼んでくれ」


「ファクター? については存じ上げないけど、クロニクルカースの事を知っているとは驚きました。ナマケくんはクロニクルカースについてどこでお知りに?」


「知ったもなにもゲーム名でしょ? あぁまって、話がかみ合いそうにないから、俺が何も知らないっていう程で一から説明してくれないか? 昨日からよくわからないことだらけで正直頭が整理できてないんだ」


「わかりました。説明してあげます


区切りがわからなくてセリフの途中で区切らせてもらいました。

次の話からもっと内容が深まっていくのでよろしくお願いしまス。

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