すぐに脱ぐ義姉たちのせいで、日常の定義がわからなくなってきましたよ?
「ねーねー、はる君~。これどうやって動かすの~?」
「それはこっちのボタン。Aボタン押せばジャンプ出来るから」
「お~、本当だ~」
秋ねえの操作するキャラがぴょんぴょんと跳ぶ。
「はる君~、なんか落ちた~」
「ああ、うん。だろうね」
わけもわからず操作してたらそうなるだろうさ。
「もう終わり~?」
「またすぐ復活するよ」
「そっか~」
とか言いながら腕を組んでくるのは何!?
ゲームするのにこんな密着する必要ある!?
「秋奈。あなたは一体何をしてるんですか」
ほら、もう一人からもツッコミが入った。
「ん~? ゲーム~」
「それならそんなに春斗君にくっつく必要ありませんよね!?」
「あ、復活した~」
「無視しないでください!」
いや、本当に無視しないで。
そういうことすると、十中八九──、
「それなら私は春斗君の膝の上でプレイします!」
ほーら、また頓珍漢なこと言い出した。
「春斗君。なぜ体育座りをするのですか?」
「気分」
「今の今まで胡坐をかいてましたよね?」
「うん。だから気分」
「その座り方だとゲームしにくくないですか?」
「いや、あんまり。むしろやりやすい」
誰かさんに膝の上に乗られるよりはね!
「うう。義弟がいじめてきます」
「人聞きの悪い事言わないでくれない!?」
冬華姉さんの部屋だから誰が聞いてるわけでもないけど!
「はる君~、この座り方はダメ~」
「秋ねえまで!?」
ていうか、何してんのこの人!?
「よいしょ~」
「!?」
「あ、秋奈ずるいです!!」
「えへへ~。極楽~」
「ああ! いいなぁ、膝枕! 春斗君。私も! 私も膝枕してください!」
いやいやいや。
「秋ねえ」
「何~?」
「重い」
「え~」
『え~』じゃなくて。
そんな全身で乗っかってきたら重いに決まってるだろ!?
「はる君~、女子に体重の話したらダメだよ~」
「して欲しくなかったら降りて」
「してもいいから~、ここにいる~」
しぶといな!?
「春斗君。春斗君」
「なんでしょうか」
「私は秋奈より軽いですよ」
だから!?
「膝枕するなら私にしませんか?」
「何の提案なの? それは。しないって言ってるじゃん」
「でも秋奈にはしてるじゃないですか! 私もして欲しいんです。重い秋奈が大丈夫で、軽い私がダメっておかしいです!」
おかしくないからね!?
なんにも、おかしくないからね!?
「とーかちゃん~。あんまり人のこと重いって言わないでよ~」
「事実じゃないですか」
「でも~、とーかちゃんも太ったんでしょ~?」
「……なぜそれを?」
「なっちゃんに糖質制限したいって相談してたの知ってるよ~」
へー。
「そ、それはですね。やっぱり夏休みに入ったら授業もないですし、普段より体力を使うこともないというか、職員室にもお菓子がたくさんありますし……」
「あ、やっぱりお菓子あるんだ。いいな、教師」
まあ、休み時間には普通に食べてるけど。
「そんなとーかちゃんが~、膝枕なんかしたら~、太ったのバレちゃうよ~?」
「大丈夫です! 太っても秋奈よりは軽いですから!!」
「む~」
お、秋ねえがどいてくれた。って──!?
「何してんの!?」
「脱いでる~」
「見ればわかるわ!!」
なんで脱いでんのって聞いてんだこっちは!!
「やっぱり~、とーかちゃんより私の方がおっぱい大きいよね~」
とか言われても知りませんから!
ていうか、それを俺に聞いてどうしたいの!?
「む。私だって負けてませんよ」
「いやだから、なんで脱ぐの!?」
何!? 何が始まったの!?
「これでもスタイルには自信があります」
「お肉乗ってるよ~?」
「摘ままないでください!!」
「え~、でも~」
「秋奈だって何ですかこのお肉は! たぷたぷ、……え、たぷたぷしてない?」
「ふふ~ん」
いやだから、得意げにこっち見ないでくれない!?
「え、え、嘘。どうしてですか? 普段あんなに寝てばかりなのに、贅肉がないなんて。そんな冗談やめてください!!」
「すごいでしょ~。私の自慢~」
「ずるいですよ、秋奈。そんなことが許されていいはずがありません!!」
「はる君も触ってみる~?」
「触りません」
「すべすべだよ~?」
「触らないから」
「きっと気持ちいよ~?」
「だから触らないって」
ていうか、普段あれだけ抱き着いてきてるんだから、それぐらい知ってますからね!?
秋ねえの肌って、めっちゃ気持ちいいんだわ。
「春斗君。私はとても傷ついたので慰めてください」
「ストレートに来たね」
「この状況でひとり冷静にゲームが出来るそのメンタルの強さを分けてください」
「これは単純に慣れ」
毎日こんなことがあれば、さすがにね。
「美人でおっぱい大きくて頭も良くてお金も持ってるなんて、秋奈はチートだと思います!!」
「冬華姉さんも十分美人だから」
学校での人気っぷりを自覚して!
「美人!? 私を美人だと思ってくれてるんですか!? 春斗君が!?」
「ああ、うん。思ってる思ってる」
あ、くそ。敵が強い。
「秋奈、聞きましたか!? 春斗君は私を美人だと思ってるんですよ!?」
「よかったね~」
「ああ!? ずるいです! 膝枕は美人な私のものなのに!?」
「秋ねえ、また?」
「後でおっぱい触らせてあげる~」
「体で何でも解決しようとしないで」
本当にいつか耐えられなくなるから。
「うぅ~。わーたーしーもー!」
「はる君~。とーかちゃんが壊れた~」
「壊した張本人がどうにかして」
とまあそんな感じで、これもまた義姉さんたちと過ごす当たり前の日常だったりする。
最近は色々と諦めてきました。