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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
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夏希姉ちゃんは急にさみしくなったみたいです。

「えー! 今日もバイトなの!?」

「うん」

「最近いつもじゃん! もっと私とも一緒にいてよ!」

夏希姉ちゃん、いくつ!?

何その幼稚園児みたいなワガママ。


「私もバイトしよかっなぁ」

「生徒会で忙しいじゃなかったの?」

「忙しいから少しでも春斗と一緒にいたいのに、春斗がバイトに行っちゃうからでしょ!」

「え、悪いの俺!?」

それは理不尽じゃない?


「大体さぁ、夏希姉ちゃん。今の体勢でそれを言っても何の説得力もないよ」

「そんなことないもん!」

マジで幼くなってない!?

優美ですらそんなこと言わないぞ!?


「私はもっと春斗と一緒にいたいのー」

「はいはい」

それでこの体勢ですか?

俺がソファでテレビ見てたら何を思ったのか膝の間に収まってくるんだから、ちょっとよくわからない。


「あ~、これいいなぁ。病みつきになりそう」

「人をダメにするソファでも買う?」

「? 何それ?」

俺に寄りかかりながら振り向かないで!

顔、近いから!!


「これ」

うわ、ポケットからスマホを出すだけでも変な感じ。

そういや、夏希姉ちゃんとこんなに密着したことないんじゃないか? 秋ねえはしょっちゅう抱きついてくるけど。


「あー、これかぁ。小百合の家にあったよ」

「へぇ、あの人こんなの持ってるんだ」

「押し倒された時の練習が出来るって言ってた」

「!?」

家で何してんだ、あの人は!?


「じゃあ、春斗は“私をダメにする義弟”だね!」

「何その特殊カテゴリー」

夏希姉ちゃん以外のどこに需要があるの?

いや、あるか。少なくともあと二人には。


「春斗春斗」

「何でしょう」

「もっとギュってして」

「……わかった」

「ちょっと躊躇ったね」

「そりゃそうでしょ」

悪いですか!? こんな美少女から抱きしめてって言われて緊張しちゃ悪いですか!?


「わーい。春斗が抱っこしてくれてるー」

「夏希姉ちゃん、マジでいくつなの?」

「何歳でも春斗の姉ちゃんだよ」

「何それ」

「んー? いつでも春斗のことが大好きってこと」

「さらっとそういうこと言うのやめない?」

どう対処すればいいかわからないからね!?


「ねえねえ春斗」

「……何?」

ちょっと緊張。


「私さ、ちょっとおっぱい大きくなったんだ」

「だから何!?」

何? 何なの? さっきから夏希姉ちゃんは何がしたいの!?


「触──」

「らないから」

「えー」

「なんで夏希姉ちゃんが不満そうなの!?」

ただでさえこんなに近いのに、今そんなことしたら歯止め利かないからね!?


「今日は珍しく秋奈姉さんもいないのに」

「だからホントに何!?」

いいの!? これはいいの!? そういうことでいいの!?


「!? 夏希姉ちゃん。着信」

ソファの傍らに置いてあった夏希姉ちゃんのスマホが震えている。


「いいよ、無視して」

「いやいや、鳴ってるの夏希姉ちゃんのスマホじゃん」

ていうか、ナイスタイミング!

電話鳴らなきゃヤバかったかも。


「っと。代わりに出るからね」

「待って。誰から?」

スマホの画面を見る。

ていうか、本当にこの体勢はヤバい。

側に置いたスマホひとつ取るのにも緊張する。


「冴川さんから」

「いいよ、出て」

「何そのチェック」

「姉ちゃんチェック。春斗が出ても大丈夫な相手かどうか判断するの」

随分ガバガバなチェックだな!?

むしろ一番出ちゃダメな相手じゃない!?


「もしもし」

『あれ、春斗君?』

「よく一発でわかりましたね」

『そりゃあ、ね。なっちゃんの義弟だし』

何その理屈。


「私はいないって言っといて」

え、まさかの居留守!?


『あら、今なっちゃんの声が……。もしかしてお邪魔したかしら?』

そしてこの人は無駄に察しがいいな!?


「いや、そんなんじゃないですから」

『どうかしらねぇ』

どうもこうも、言葉通りです。

30秒遅かったら違ったかもしれないけど。


『まあ、そういうことなら。ねえ、義弟君。私今、困ってるのよ』

「はあ」

珍しいな、この人が俺に相談?


『ええ、とてもとても困っているの。だからね、助けてくれない?』

「俺に出来る事なんですか?」

『とっても簡単。本来ならなっちゃんに頼もうと思ってたことだもの』

「それ、難しくないですか?」

夏希姉ちゃんへの頼みごとを肩代わりできるほど、俺は自分のスペックに自信ないよ?


『大丈夫よ。どっちかって言うと力仕事だから』

「具体的には?」

『今日、文化祭で使う資材とかが学校に運び込まれるから、それを受け取るの。簡単なものは自分たちで運んだりもしなくちゃいけないのよ』

「大変ですね、生徒会も」

夏休み真っ最中だっていうのに。


『義弟君も知ってるでしょ? うちの文化祭がどんなものか』

「ええ、まあ。去年見に行きましたし」

大層な盛り上がりだった。一説には、あの文化祭目的で入学を決める生徒もいるらしい。


『そ。だからね、今の内に準備を進めておかないといけなかったりするの。ねえ、義弟君。ちょっとだけでいいから手伝ってくれない? “なっちゃんは、いないみたいだし”』

ああ、そういうこと。

最後の一言を強調されて気づいた。

俺を餌に夏希姉ちゃんを学校に呼び出そうって事ね。

了解した。


「わかりました。いいですよ。何時ですか?」

『11時に来てくれれば大丈夫よ』

「それ、今すぐ出なきゃダメな奴じゃないですか」

『そうかもしれないわね』

「わかりました。行きます」

『待ってるわ』

プツ、と電話が切れる。

バイトまでは時間あるし、大丈夫だろ。


「小百合と何を話してたの?」

で、こっちはちょっと不貞腐れてるし。


「なんか春斗楽しそうだった」

嫉妬ですか? そうですね?


「ごめん。夏希姉ちゃん。俺、今から学校に行かないといけない」

「え!? なんで!?」

「なんか生徒会の仕事をするのに人手が足りてないって、冴川さんから頼まれた」

「うっ」

「困ってるみたいだし、ちょっと手伝いに行ってくる」

「うぅ」

「夏希姉ちゃん?」

良心の呵責に苛まれてるのが、側で見てて伝わってくる。


「……私も行く」

「うん。そしたら着替えて玄関に集合ね」

言うが早いが俺は夏希姉ちゃんとソファの間から体を抜き出し、廊下に出る。


「せっかく春斗と二人きりだったのに……」

背後からはそんな声が聞こえてきた。

夜は夏希姉ちゃんとの時間を作ろうと思った。


今日はそんな一日。


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