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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
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幼馴染だっているんだから!

お待たせしてしまい申し訳ありません!

幼馴染回です。

「夏祭り?」

イベントスタッフのバイト終わり。

腹が減ったからと、俺と優美はファストフードで駄弁っていた。

佑樹? あいつはアホだから『ナンパしてくる!』ってどっか行った。


「というか、花火大会かな。あ、でも屋台とかも出るみたい。見て見て、これ去年の」

優美のスマホを覗き込む。


「え、すげぇ盛り上がってんじゃん」

「ね。楽しそうでしょ? だからさ、一緒に行かない……?」

「いいぞ」

「ホントに!?」

「ああ。約束してたし」

その日なら何の予定もないしな。


「じゃあさ、じゃあさ。浴衣着ようよ、浴衣!」

「え、俺も?」

持ってないぞ。


「うん! その方が絶対楽しいよ」

「甚平じゃダメか? そっちなら持ってる」

「甚平って何?」

おお、マジか。


「こういうやつ」

今度は俺がスマホを差し出す。


「え、これ浴衣じゃないの?」

「浴衣っぽいけど浴衣じゃない。上下に分かれるし。下、短パンっぽいやつだし」

「あ、可愛いのもあるよ。私もこっちにしようかな」

「めっちゃ足出るぞ」

虫刺されとか、日焼けとか、女子は色々気にしそう。


「もうっ。春斗のエッチ!」

「何でそうなる!?」

俺は別の心配してたんですけど!?


「わぁ、ねぇねぇこれ可愛いよ」

「ん? ああ。確かに」

正直、よくわからないけど。

優美ならどれ着ても似合いそう。


「ねえねえ、春斗」

「何だよ」

「春斗のってどんなの?」

「どんなって。普通に黒いやつ。あーこれ。こんなの」

うわ、地味。

女子のを見た後だからかもしれないけど、男子向けの甚平が地味過ぎる。


「何か普通だね」

「な。地味だ」

「えー、でも春斗は似合うよ」

「そりゃどうも」

誰が着ても大差ないと思うけどな。


「ねえ、春斗。この後ちょっと暇?」

時間は17時前。


「ちょっとなら」

あんまり遅くなると義姉さんたちから鬼のように電話がかかってくる。


「じゃあさ、ちょっと付き合ってよ」

「いいぞ」

「ありがとう」

「甚平買いに行くんだろ? それぐらいなら全然」

「えへへ。バレてた」

そりゃそうだ。


「何年の付き合いだと思ってんだよ」

「だよね~。さすが春斗。じゃあ、行こう」

サッサと立ち上がった優美を追いかけファストフード店を後にする。



「ところで、甚平ってどこで売ってるの?」

「そこから!?」

自信満々に歩き出したから、知ってるのかと思ってたぞ!?


「いやぁ、普段買わないし」

「そうだろうけどよ」

「春斗知らない?」

「知らね」

「え、持ってるのに?」

「今着てるの、親父が去年買ってきたやつだし」

どこで見つけてきたんだろうな。


「え~、どうしよ」

「駅ビルとか行けば売ってるんじゃね?」

それか、激安の殿堂。


「というか、暑くない?」

「暑い」

「もう無理なんだけど」

「わかる。溶けそう」

ほら、散歩してる犬もしんどそうだ。


「え、何。なんでこんな暑いの? もう17時になるよ?」

「暑いって言うか息ぐるしい。湿気がヤバい」

「私たちこんな中バイトしてたの?」

「信じられないよな」

今日のイベント、熱中症で倒れた人もいるって話だし。


「ねえねえ春斗。早くどっか入ろう。暑いよ」

「外に出たのは誰だよ」

「私ですー。でももうダメー」

わかるけどな。とにかく暑いし。


「あ、ほらコンビニ。入ろう?」

「お前なー」

駅ビルに着くまでに何回寄り道をする気だ?


「あ、見て見て。限定のアイスだって。美味しそう」

「今食ったら太るぞ」

さっきハンバーガー食ったばっかじゃねぇか。


「でもアイスー。暑いんだってばー」

「ああもう、わかったよ。買えばいいじゃねぇか」

「やったー! じゃあこれね」

「限定のやつじゃなくて?」

そっちが食いたかったんだろ?


「えー。だってこれだと春斗と半分こ出来ないもん」

「……そっか」

いきなり何を言い出すのかと思ったじゃねぇか。


「あれ、照れた?」

「照れてない」

「嘘だー。それは照れてる時の顔だよー」

「だから照れてないって」

「もー、春斗はしょうがないなぁ」

「何がだよ!?」

「お会計して来るねー」

あ、逃げやがった。


「はい。半分こ」

「おう」

「まだ照れてる?」

「そっちこそまだ言うか」

「いいじゃん。……だって、春斗と二人きりなんて本当に久しぶりなんだもん」

……急にそういうこと言うのやめてくれません!?

それこそ照れるんですけど!?


「寄り道だけど、デートなんだから」

「いつもと変わんないだろ。……義姉さんたちが来る前と」

「うん、そうだよ。だから、これ上げる。半分こ」

「おう」

何が『だから』なんだろうな。


「ん~~~」

「何してんだ?」

おでこ抑えて盆踊りか?

気が早い奴だ。


「頭! キンキンする!!」

「あー」

「ん~~~」

「なるよな、それ」

「春斗は何でならないの!?」

「ゆっくり食べてるからな」

急に食べるとそうなるんだよ。知っとけ。


「いただきー!」

「あ、おい!」

人のアイス盗るなよ!?

何が半分こだ!


「ちびちび食べる春斗のせいだからねー」

「意味わかんないぞ!?」

ていうか、あ。


「人が食ってるもんを食うなよ」

「えー? 何―? 聞こえなーい」

うわ、うざい。


「間接キスになるだろ……」

「ッ!? バッカじゃないの!? な、何言ってんの!?」

「そうだよな。高校生にもなってそんなこと気にしてもしょうがないよな」

「そ、そう! もう高校生なんだから! 大人なの!!」

「どの辺が?」

「胸! おっきくなったんだから!!」

って、堂々と胸張ってんじゃねえよ!!

往来だぞ、ここ!!


「あ」

あ、自分が何言ったか気づいた。


「あ~~~」

すっげぇ赤くなってる。


「ん~~~」

「痛い痛い」

八つ当たりはやめてくれない!?


「もー、春斗のバカ」

「どっちがだよ」

俺のせいじゃないよね!?


「いいから行くよ」

「わかってるよ」

ていうか、やっと着いたよ駅ビルに。

何でこんなに疲れてんだ。バイト上がりだからか。


「涼しー」

「エアコン最高」

さすがは文明の利器。


「どこに売ってんだろ」

「あそこじゃないか。夏セールって書いてあるし」

「あ、ホントだ。行こう、春斗」

だから引っ張るなっての!


「あ、あったあった。春斗、あったよ!」

「ん? おお」

横の水着に意識を奪われたのは秘密だ。

ちょっと義姉さんたちのことを思い出したのも。


「あ、見て見て。これ可愛くない?」

「そうかー? 派手じゃないか?」

「えー。じゃあこっち?」

「いいじゃん。似合う」

「!? えへへ~。じゃあ、これにするー」

「そんな簡単に決めていいの?」

もっとちゃんと選んでもいいと思うけど。


「いいの。春斗が似合うって言ってくれたんだもん」

「……そうですか」

俺の幼馴染はたまに純粋過ぎる。そしてまあ、可愛い。


「じゃあ、お会計してくるねー」

「いやいや、一緒に行くから!」

「何―。もしかして買ってくれるのー?」

「バイト代が入ってたら考えてたな」

「ちぇー。惜しいことしたなー」

本当は女物が並んでるとこにひとりされるのが恥ずかしかったからです。

口が裂けても言わないけど!


「甚平まで買ったんだから、絶対に夏祭り行くからね!?」

「わかってるって」

そんな言われなくても、大丈夫だって。


「お義姉さんたちとの予定が入りそうになっても、ちゃんと断らなきゃダメだからね」

「……わかってるって」

俺だってさすがにそこまでバカじゃない。


「ホントにホントだからね!?」

「だから大丈夫だっての」

「う~、心配~」

信用なさすぎませんかね!?


「大丈夫だって。ちゃんと約束は守るから」

「うん。わかった」

「ほら、帰ろうぜ」

「うん」

そうして最寄り駅まで電車に乗り、俺たちはそれぞれの家路につく。


「春斗!」

「何だよ」

「絶対! 約束だからね!!」

「おう」


優美と別れ、ようやく日が傾き始めた夕焼けの中を歩く。

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