表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
各ヒロインルート
45/51

二人っきりの旅行~秋奈編~

ifルート:秋奈編です

 


「なぜ……?」

「はる君~、出国ロビーはこっちだよ~」

「なぜ……???」

 どうして俺は空港の、しかも国際便の出国ロビーを目指しているのです?


「急がないと飛行機に間に合わないよ~」

 そして秋ねえがそんな俺の腕を引いているのはなぜ?


「はる君のパスポートはこれ~」

「なんで秋ねえがそれを持ってるの!?」

「はる君が忘れそうになってから~」

「そっか~、じゃなくて!! なにこれ!? なんで俺は秋ねえと海外に行こうとしてるの!?」

「ん~? だって~、はる君と旅行に行くんでしょ~?」

「そうだけど! 確かにそう言ったけど!!」

 今聞きたいのはそこじゃない!!!


「百歩譲ってパスポートはいいとしよう。でも費用は!? お金は!? さすがに海外旅行に行けるほどのバイト代は入ってないよ!?」

「私がはる君にお金出させるわけないじゃん~。全額私持ちだよ~」

「マジで!?」

「ぶい~」

 そりゃ得意げにピースされるわ!

 いや、じゃなくて!!


「元々俺が旅費を出すって話だったじゃん!」

「その話長い~? ちょっと急がないとまずいよ~」

「納得出来ないままに駆けだすこの感じ。モヤモヤする!」

「はる君は繊細だな~」

 そういう問題じゃないと思う!!!


 ▼


「で、結局飛行機に乗ってるし」

「楽しみだね~」

「どうしてこうなった……」

 しかもここ、エコノミーじゃないし。

 え、なにこれ。俺が考えてたのはもっと気楽な旅行だったはずだけど!?


「着くまで時間かかるから寝てた方がいいよ~」

「って、ひとりでさっさと寝る体勢に入らないで!」

「もっとお話しする~? でも~、11時間ぐらいかかるから~、寝てた方がいいよ~」

「何それ聞いてないよ!?」

「あはは~。おやすみ~」

 だから寝るの早いって!


「到着~」

 本当に来てしまった。本当に外国だ。聞こえてくる言葉がまるで馴染みないし……。


「ていうかさ、秋ねえ。ここどこ?」

 今更過ぎる質問。

 でもしょうがなくない? 秋ねえってば機内はずっと寝てたし!!


「タヒチだよ~」

「どこそれ!?」

「ハネムーンのメッカ~」

 ……なんだって?


 ▼


「ということで~、ホテルは水上コテージ~」

「すげぇ。テレビで見たことあるやつだ」

「日本の海よりきれいだよね~」

 ていうか、さっきから気になってたけど……。


「秋ねえって海外よく来るの?」

「たまに~。学会の発表とか~」

 ……マジか。なんか違う世界の話をされてるみたい。


「はる君も~、パスポート持ってたじゃん~」

「一回だけ親父の海外出張についていったことがあるだけだよ」

 たまたまゴールデンウイークだったしな。


「さ~てと~」

 って、何いきなり脱ぎだしてんの!?


「秋ねえ!!」

「ん~、何~?」

「着替えるなら言って! 外出るから!!」

 おっぱいが! 秋ねえのデカい胸が!! 目の前に!!!


「あはは~、いちいちいいよ~。お風呂も一緒の入るんだし~」

「……は?」

「それとも~、はる君は温泉の方がよかった~」

「いやいや、そういう問題じゃないから!! え、何。風呂一緒?」

「そりゃそうだよ~。コテージだよ~、ここ~」

 確かに。

 って、納得してる場合じゃないから!!


「今更慌てても遅いよ~」

「笑いごとで済ませていい問題じゃないからね!?」

 ていうか、よくよく考えたらこんなワンルームみたいな部屋で秋ねえと過ごすの?

 なんか色々ヤバくない?


「ほらほら~、はる君も着替えて~」

「いつの間にこんなものを」

「頼んどいたの~」

 なんか、なんか。秋ねえのスケールってすげぇ!!


「ていうか、秋ねえって引きこもりじゃなかったの?」

 それとはかけ離れたアグレッシブさじゃない?


「やりたい事なければ~、そりゃ~、引きこもるよ~」

 さいですか。


 ▼


「のんびりしてていいよね~」

「未だに外国に来た衝撃が抜けないんですが」

「はる君って意外と繊細だよね~」

「こんな強引なことされたら誰だってこうなるからね!?」

 俺が特別みたいに言わないで欲しい。


「じゃあ~、来なければよかった~?」

「そうは言ってない」

「素直じゃないな~」

「せめてもの当てつけだよ」

 何しろこれだけきれいなビーチを散策しているんだ。

 文句は早めに言っておかなければほだされてしまう。


「まだ日が高いし~、市内の方行ってみる~?」

「土地勘ないから任せる」

「私も初めて来たんだけどね~」

「……不安になるようなこと言わないでくれない?」

「あはは~。大丈夫~、なんとかなるよ~」

 本当だろうな!?


「やっぱり日本と全然違う」

 街並からして外国って感じだ。


「タヒチって~、フランス領なんだよ~」

「あ、だから標識とかもよくわかんないんだ」

 英語表記はまだ読めるけど、他は全然意味わかんないし。


「あれは~、フランス語とタヒチ語~」

「秋ねえ、読めるの?」

「フランス語はね~」

「……マジで?」

「あと~、ドイツ語と~、中国語と~、韓国語ならわかるよ~」

「…………マジで?」

「はる君~、同じ反応になってる~」

 そりゃなるでしょうよ!?


「え、待って。なんでそんなにわかるの?」

「ん~? 暇だから覚えた~」

「ごめん。その感覚が理解できない」

 え、暇だから? 暇だとそれだけの言語に精通出来るの?

 ホント、なんでこんなにすごい人が家でゴロゴロしてるんだか。


「タヒチって~、真珠が名産なんだよ~。知ってた~?」

「知ってたも何も、タヒチの存在を知ったのも今さっきだってば」

 降り立つまでそんなとこがあることすら知らなかったからね!?


「じゃあ~、罰ゲーム~」

「まさか、真珠をプレゼントしろと……?」

 いくらするのか存じませんが、そんな持ち合わせはございませんよ!?


「そこまでは言わないよ~。私に似合う奴を選んで欲しいだけ~」

「で、選んでどうするの?」

「私が買う~」

「それはちょっと男として情けなくない……?」

「私を侍らせてるだけじゃ不満~?」

「侍らせてるって、それはまたちょっと違う気がする」

 どっちかって言うと、こっちが従者みたいな気分。

 秋ねえはワガママお嬢様。

 あ、しっくり来た。


「も~、はる君はもっと楽しんでいいんだよ~」

「って言われてもね。庶民には中々ハードル高いっすよ」

「大丈夫~。今回で慣れてくれればおっけ~」

「今回でって、次があるの?」

「まだまだたくさん行きたいとこあるの~。それに~、ハネムーンも来るし~」

「え……?」

「言ったでしょ~? ハネムーンのメッカだって~」

 何その予行演習。聞いてない。


 ▼


「ご飯美味しかったね~」

「食べたことない料理ばっかだった」

 リゾート! って感じの料理が勢ぞろいしてたのは圧巻だった。


「お酒も飲みたかったな~」

「あんたまだ未成年でしょうが」

「はる君ってば真面目だよね~」

「ええ、ええ。そうですよ、それが取柄ですからね」

「知ってるよ~」

 って、皮肉のつもりで言ったんですが!?

 なんで頭を撫でてくるの!?


「きれいだね~」

 秋ねえだってきれいだ、とか言えればいいんだろうか。

 まあ、無理ですけど!

 海外の夜のビーチでっ、美人の義姉と二人きりっ!

 そのシチュエーションだけでもういっぱいいっぱいだっての!!


「いい風~」

「……うん」

 髪に遊ばれる長い髪。月明りにぼんやりと浮かび上がる整った顔に、身に纏ったサンドレス。

 なんか、やっぱり秋ねえって美人だ。


「静かだね~」

「夜だし」

「波音って落ち着くね~」

「砂の感触もね」

 静かなやりとり。

 喧騒の少ない海辺の神秘的な空気。心がすうっと穏やかになっていく。


「秋ねえ?」

「な~に~?」

「や、別に」

 だから、秋ねえがすっと腕を組んできても、違和感はない。


「なんか、いいね。こういう雰囲気」

「気に入った~?」

「うん」

「へへ~、よかった~」

 コテージへと続く桟橋を歩く。星をちりばめたような海が周囲に広がる。


「ねえ、はる君~」

「何?」

「ううん~。なんでもない~」

「何それ」

 小さく笑い合った声が、波音に紛れる。


 そうして穏やかな時間が心に染み渡る中、気づけば俺と秋ねえはコテージからぼーっと海を眺めていた。


「帰るのやめちゃおっか~」


 ぽつりと呟かれた言葉に返すことが出来ず、ただ波音に耳を澄ませる。


 ▼


「ていうか、四泊もするなんて聞いてなかったんだけど!?」

「堪能したくせに~」

「そりゃ、帰りようがないんだから楽しむしかないでしょ!」

 二日目の夜からは半ばやけくそだからね!?


「楽しかったね~」

「そうだね!」

「も~、はる君ももっと余韻に浸ろうよ~」

「今の状況を考えてから発言して貰っていい!?」

 そんな余裕ないから!


「大丈夫だよ~。飛行機には間に合うって~」

「全力で走ればね!」

「待って~、荷物が重い~」

「そんなに買い込むからでしょ! ああもう! ほら貸して。半分持つから!!」

「お~、男らしい~」

 緊張感ないなぁ、もうッ!!


 なんで旅先から帰る時ってこんなにバタバタするんだろう。

 どうにか落ち着いたのも、飛行機に乗ってからだし。


「あ~あ、帰っちゃうのか~」

「そりゃ帰りますよ。夏休み空けたらまた学校だし」

「え~、やだ~。こっちでのんびり過ごしたい~」

「あんた日本でも十分のんびりしてるでしょうが」

 四六時中寝てるのは誰さ。


「次来る時は~、もっとゆっくりしたいね~」

「行く前からね。全く今回みたいに突然連れてくるのは勘弁してよ」

「わかった~。二年後まで覚えとく~」

「なんで二年後?」

「だって~、二年後にははる君も結婚できるようになってるでしょ~?」

「サラッとそういうこと言わないでくれます!?」

 年数が具体的過ぎて逆に怖いわ!


「次来るときは~、初日の夜に言ったことも~、ちゃんと考えてね~」

「……」

 それに関してはノーコメントで。


『帰るのやめちゃおっか~』


 波音と共に聞いたその言葉は、しばらく封印で。

 真面目に考えるには、ちょっと色々と早い気がする。


「それとも~、はる君的にはその後の方が思い出深いかな~?」

「その後って、──ッ秋ねえ!」

 ここ、飛行機の中だから!!


「またしようね~」

 ちゅ、と頬にキス。

 そして飛行機は一路日本を目指す。


冬華編は1時間後の19時投稿です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ