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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
共通ルート 第一部
43/51

決めました。

遅れてしまい申し訳ありません!

ようやく選ぶときが来ました。

 

 あの家族旅行から帰ってきて三日。志木家にはふとした瞬間に妙な緊張感が走るようになっていた。

 ……志木家、というか俺と義姉さんたちとの間にだけど。


 ▼


「あ、は、春斗」

「夏希姉ちゃん」

 ばったり遭遇。って言っても家の廊下だけど。


「あ、あー。あはは、今日も暑いね」

 えー、何そのとりあえず感溢れる話題の振り方。


「35度超えるらしいよ。『姉ちゃん』は今日も生徒会?」

「う、うん。そうだよ!」

「大変だな」

 ちなみに旅行から帰った後も、『姉ちゃん』呼びのルールは残っている。

 というか、止め時がわからずにとりあえず続けている。


「は、春斗も! 夏休みだからってダラダラしてちゃダメなんだからね!?」

「わかってるよ」

「ホントに? じゃ、じゃあ! 春斗の、その、夏休みの予定を、……教えてよ」

 あー。

 そんなに上目遣いで見られるとですね、こっちも緊張するんですよ?


「明日は優美たちとバイト。他は、まあ、ボチボチ」

「ほらぁ! ダメだよ春斗。夏休みって言っても、たくさん時間があるわけじゃないんだから、ちゃんと計画的にいかないと。でさあ、他の予定、教えて欲しいなぁ、……なんて」

 最後の最後で自信失くさないで!

 いやまあ、その原因は俺なんだけどさ!


「大丈夫。ちゃんと考えてるから」

「そ、そうなの!?」

 慌てすぎだからね!?


「『姉ちゃん』は知りたいの?」

「う……」

「どうしてもってんなら話すけど、夏休みの予定」

「あ、あの、それはそのぉ……。知りたいというか知りたくないというか私だったらいいけどそうじゃなかったら凹みそうだしやっぱりちょっと──」

 すげー早口。まさか夏希姉ちゃんにアナウンサーの才能があるとは。


「ごめんね春斗! 私急ぐから! ほら、生徒会の時間に遅れちゃうし! 春斗も熱中症にならないように気を付けてね。じゃ、じゃあ! 私、行くから!」

 とか言って、夏希姉ちゃんはそそくさと去って行ったしまう。

 バタンと閉まるドアの音を聞きつつ、少しだけ後悔する自分がいた。


 ▼


「──ッ!? ……いたの~?」

「まあ、リビングだし」

 珍しい。秋ねえがあんなにびっくりした反応を見せるなんて。


「そっか~」

「あれ、『姉ちゃん』?」

「ん~? なに~?」

「や、なんか用があったんじゃないの?」

「はる君に~?」

「リビングに」

 だから顔を出したんじゃないの?


「う~ん。……大丈夫~」

 うーむ。あの秋ねえがこんな反応をするとは。



「秋ねえ。あのさ、」

「あ、あ~。ごめんね~、はる君~。私これから学校なんだ~」

「学校!? 秋ねえが!? 夏休みに!?」

 嘘だろ!?


「え~、驚き過ぎじゃない~?」

「いやいやいや。だって、秋ねえだよ!?」

 あ、驚き過ぎて『姉ちゃん』呼びを忘れてしまった。


「む~。はる君とは私のイメージについて~、話し合わないとだね~」

「話し合うも何も。怠惰を画に描いたような人じゃん!?」

「それはちょっと失礼だよ~」

 にへら~、と笑いながら言われても説得力がない!


「てか、マジで? え、大丈夫? 今日、雪降ったりしないよね? ちゃんと真夏日だよね?」

「そこまで言うか~。この~」

 ぎゅー、と抱きしめてくる秋ねえ。

 待って。これはこれで意味わかんないんだけど!?


「私を~、選んでね~」

「──」

 耳元で囁かれる一言。

 そして秋ねえは甘い匂いを残して離れていく。


「じゃ~ね~。行ってくる~」

「あ、ちょ。『姉ちゃん』!!」

 ……ホントに出かけるんだ。靴を履く秋ねえなんて、久しぶりに見た気がする。


「なに~?」

「ちゃんと、決めてるから」

「ッ。知ってるよ~」

 にへら、と笑う秋ねえ。

 知ってるってことは、つまり──。


「やっぱりあの時、起きてたんだ」

「どうでしょ~。あはは~」

 なんて誤魔化し笑いと共に、秋ねえは本当に外出してしまった。


 ▼


「春斗君!」

「な、なに? 冬華姉さん」

 よかった。声をかけられたのが脱衣所に向かう途中で。

 服を脱いでる途中にばったりなんて、そんなのは勘弁してもらいたいし。


「私はこれからゲームをします」

「あ、うん。付き合う?」

 風呂から上がった後でよければ、いくらでも付き合える。

 何しろ夏休みだし。


「!? い、いえ結構です。大丈夫です。どうしてかというとこれから私がやるのはちょっとエッチなゲームだからです。春斗君にはまだ早いのです」

 なんて早口にまくしたてらたのはいいけど、じゃあなんで呼び止めた?


「そ、それじゃあ春斗君。お風呂にはゆっくり浸かってくださいね」

「ああ、うん。そうする。ありがとう」

 で、なぜ冬華姉さんは立ち去らない?


「そ、その」

「うん。何?」

「えっと、まだ私のところには来ていないのですが、その、えっと」

 すごい。まるで要領を得ない。


「だ、だからですね! その、秋奈か夏希には、その、もう、言ったんですか?」

「……何を?」

「……りょ、旅行のことを」

 あー。そういうことか。


「いや、まだ」

「そ、そうですか!」

 そんなに嬉しそうにされても困るからね!?

 ていうか、俺が言うのもなんだけど、冬華姉さんも先延ばしにされてるからね!?

 ほんと、俺が言うのもなんだけど!!


「あ、大丈夫です。それが聞きたかっただけですから。じゃあ、お風呂入ってきてください」

 え、マジでこれだけでいいの!?


「なんて、俺が言えた義理じゃないけど」

 ひとり脱衣所の扉を閉め呟く。


「ま、仕方ないか」

 などと嘯いてみる。

 でも実際しょうがないのだ。だって、俺がまだ誰と旅行に行くと決めたのかを義姉さんたちに伝えてないのだから。


 ▼


 風呂上がり。そして俺はノックする。彼女の部屋の扉を。

『姉ちゃん』に決めた。そう告げるために。


三姉妹それぞれのルートを、5日(金)の17、18、19時に投稿します。

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