義姉さんたちとの家族旅行。二日目! ~夏の泊りはカレーと共に~
39話投稿です‼
「出来ましたっ!!」
「……すっごい大変だった」
「……ひとつ聞くけど、夕飯を作ってたんだよね?」
それが何で二人揃ってそんなにボロボロなの。
表情は対極的だけど。逆にそれが不安というか、心配というか……。
「はる君~、今からでも遅くないし~、ピザでも取る~?」
「やめて! そんなことされたら私の努力が報われない!!」
おお、夏希姉ちゃんの絶叫が響き渡る……。
ていうか、秋ねえはちょっとひどいからね!?
「え~、でも~」
あー、チラチラ見ないで。
わかってるから、言いたいことはわかるから。
「ちなみにさ、冬華姉さんと夏希姉ちゃんは何を作ったの?」
「カレーですっ!!」
「それで何でそんなにボロボロなの!?」
カレーだよね!? 材料切って煮込むだけでも形にはなるよね!?
「春斗ぉ。大変だったんだよぉ。本っ当に! 大変だったんだからぁッ!!」
「そ、そこまで……?」
「あ~、なっちゃんずるい~。私もはる君に頭撫でて欲しい~」
いや、秋ねえ何もしてないじゃん。
「え、待って。確認するけど、本当にカレーを作ってたの?」
「ええ。自慢じゃありませんが美味しく出来ました!」
えー……。
そんだけ髪がほつれた状態で言われても説得力ないというか、逆に不安が煽られるというか……。
「聞いて。ねえ、春斗、聞いて。すごいんだよ、冬華姉さん。なんて言うかもう、色んな意味ですっごいんだよぉ」
「泣くほど……?」
待って待って! 本当に待って!!
カレーだよね? 本当にカレーを作ってたんだよね!?
「ち、ちなみに材料は……?」
なんか変なもの使ってないよね……?
「玉ねぎと人参とジャガイモ。それにお肉です」
あ、普通だ。
「調味料は?」
「そっちは夏希に任せていたので、私はよくわかりません」
あ、じゃあ大丈夫だ。
「……で、なんでそんなにボロボロなの?」
別に変な事してないよね?
「あのね、春斗。驚かないで聞いて欲しいんだけど。冬華姉さんが触ると、なぜか材料がなくなっていくんだよぉ!!」
「どゆこと?」
その感じだと冬華姉さんは材料切ったぐらいだよね!?
「はる君~。これ見て~」
「…………何それ」
「う~ん、じゃがいも~?」
「見た目はそうとしか言いようがないよね」
ただ、聞きたいのそこじゃない!
「それ、皮……? 分厚過ぎない……?」
普通に5mmぐらいある。ぶっちゃけ、可食部がふんだんに残ってる。
だが、まな板の端に避けられている。つまりは、捨てようとした……? え、なんで?
「春斗も冬華姉さんと料理をすればわかるよ。この人、不器用だ!」
「ですが、私はやり切りました」
ドヤ顔!?
これだけ俺らが騒いでるのにとびっきりのドヤ顔!?
「冬華姉さんの強メンタルがつらいよぉー」
「夏希姉ちゃんの心が折れてる……」
俺が秋ねえとイチャついてる間に一体何があった!? ──って、聞くまでもないけど。
「はる君~。これ多分、普通の倍ぐらいの量を使ってるよ~。わ~、材料の無駄遣い~」
「秋ねえも少しは歯に衣を着せようよ」
さっきから言いたい放題ですよね!?
「だって~。これは呆れちゃうよ~。見て見て~、この人参~」
「なんでそれを煮込まなかったのか逆に聞きたくなるな」
実じゃん、それ!
皮剥けば十分食べれるじゃん!!
「春斗君。ダメですよ。ちゃんと皮を剥いたものを食べないと」
「皮を剥けなかった人が何言ってんの?」
おっと。俺も秋ねえのことを言えないな。もっとオブラートに包まないと。
「? 何を言ってるんですか? ちゃんと剥いてるじゃないですか」
「剥けてないから! 全然剥けてないから!! まだ残ってるからね!? こんなの、もったいないお化けが出るレベルだから!!」
「ふふ。お化けを怖がるなんて、可愛いですね春斗君は。大丈夫ですよ、怖くないように今夜は私が一緒に寝てあげます」
「ちょっとは人の話を聞こうか!?」
冬華姉さんの認知が時々歪むのは何なの!?
「春斗君。わかりますか? 私、今とってもはしゃいでるんです」
テンション上がってるのが原因!?
人の話が聞けなくなるほど!?
「だって、初めてちゃんと料理が出来たんですから」
「う……」
そんなに無邪気に喜ばれると、ツッコむこっちが悪いことをしてる気分になる。
「そういう優しさが春斗のいいとこだって知ってるけど、今回はちゃんとツッコミ切って欲しかった!!」
「ごめん、夏希姉ちゃん。あんなに喜んでる冬華姉さんにそれは出来ないや」
「じゃあ、私を慰めてぇー!」
「はいはい。よしよし」
「じゃあ~、私がはる君を慰めてあげる~」
秋ねえは抱きつきたいだけでしょ!?
ああもう、背中でおっぱいが潰れてる!!
「むう。なんだずるいです。三人だけで楽しそうにするなんて」
「はいはい! さっさとご飯にしようね!!」
これ以上、バカ騒ぎをしてる余裕はない!!
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というわけで夕飯です。
メニューはシンプルにカレーとサラダのみ。
というか、夏希姉ちゃんの苦労を鑑みるにこれが精いっぱいだったんだろう。
「わ~、普通に美味しい~。なっちゃんすごいね~」
「うう。ありがとう秋奈姉さん」
「秋奈。どうして夏希にばかり。私も作ったんですよ?」
「そうだね~」
……ていうか、秋ねえ辛辣過ぎない?
「普通のカレーでも、いつもと違うシチュエーションで食べると別の美味しさがあるよね」
とまあ、目の前に広がる海を見つつ下手なフォローを入れてみたりする。
「そうですね。昨日のバーベキューもよかったですが、これはこれでいいですね」
「テラスが広くてよかったね~」
「シンプルなメニューが逆に功を奏したよね!!」
「夏希姉ちゃんって前向きだよね」
「そりゃそうだよ! せっかくの旅行だもん!! 凹んでばかりはいられない!!!」
たくましいなぁッ!!
「旅行も明日で終わりだからね! 最後まで楽しまないと!!」
40話は明日8日の19時投稿です!
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