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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
共通ルート 第一部
38/51

義姉さんたちとの家族旅行。二日目! ~夕暮れは秋ねえと~

遅れましたが38話投稿です!

 

「ちゃんと水分摂らないと具合悪くなるよ」

「わ~、お水~。はる君、ありがと~」

 だからってそんなにゴクゴク飲むもんでもないけどね!?


「久しぶりに運動したから疲れちゃった~」

「運動って。ちょっと自転車漕いだぐらいじゃん。ここから崖までの往復だけ」

「疲れたから運動なの~。ほら~、はる君も疲れたでしょ~? 一緒に休憩しよ~」

「崖の上でも散々寝てたじゃないか」

 ひたすら昼寝をしてたのは、どこの誰でしたっけ!?


「隙有り~」

「ちょ、秋ねえ!? 危ないから!!」

 狭いビーチチェアで抱き合えるわけないだろ!?


「あ~、呼び方~。今はふたりきりだよ~」

「わかった。わかったから放してってば」

「ちゃんと呼んでくれなきゃ、やだ~」

「『姉ちゃん』いくつだよ。そんな子どもみたいなこと言わないで」

「まだ成人前だも~ん」

 も~ん、ってアンタ……。まあ、いいけど。


「うお、すごい景色」

「ね~。きれいだよね~。とーかちゃんとなっちゃんも見に来ればいいのに」

「二人は今、夕飯の準備中。あと、冬華姉さんの特訓」

「料理の~?」

「そう。悔しかったんだって。おにぎりすら満足に作れないのが」

「わ~、なっちゃんが大変だ~」

「『姉ちゃん』は教えてあげる気はないんだ……」

「私~、教えるの苦手だから~」

 普段勉強を教えようとしてくるのに何言ってんだか。


「のんびりしてて気持ちいいね~」

「うん。風が気持ちいい」

「ちょうど建物の陰になってるしね~。西日が直接当たったらサングラス必須~」

「『姉ちゃん』はそういう恰好も似合いそうだけどね」

 グラビアアイドルみたいな体つきだし。

 ていうか、さっきから秋ねえが動くたびに胸がすごいことになってる。

 まさかとは思うけど、そのTシャツの下、何も着けてないってことはないよな!?


「明日には帰らなきゃだね~」

「冬華姉さんは仕事あるからね」

 俺ら学生組は絶賛夏休みだけど。


「私たちだけ残っちゃう~?」

「そしたら帰りの足がなくなるよ」

 行き帰りは冬華姉さんが運転する車だし。


「その時は~、タクシー呼ぼ~」

「冗談でしょ? いくらかかると思ってるのさ」

「大丈夫~。私に任せておきなさ~い」

 そうやって胸を打つのやめない?

 ぽよんと跳ねましたけど!?


「……ぶっちゃけさ、『姉ちゃん』ってどれぐらいお金持ってるの?」

「う~ん? 聞きたい~?」

「そりゃ、まあ」

 金を使うことに、それだけ遠慮がなければ誰だって気になるって!


「う~ん。……ちゅ~」

「って、何!? いきなり!?」

 なんで唐突にキスを求めてきた!?


「ほら~、情報には見返りが必要でしょ~?」

「どこの悪徳情報屋だよ!!」

 そこまでしてまで知りたくないからね!?


「う~ん、この作戦はダメか~」

「何さ、“作戦”って……」

 秋ねえ、昨夜は映画でも見てたの?


「はる君を~、私の虜にする作戦だよ~」

「そんな晴れやかな笑顔で言わないでくれない!?」

 しかも本人を前にして!


「だって~、はる君とふたりで旅行に行きたいし~」

 何でもないよう告げられる言葉に、思わず口を噤んでしまう。


「ドキッとした~?」

「そう見える?」

「顔は赤いよ~」

「夕日が反射してるからね」

 それを言ったら秋ねえの顔だって赤いじゃないか。


「はる君はさ、もう選ぶつもりなの~?」

「“もう”ってどういう意味?」

「む~。わかってて聞いてるでしょ~?」

「あはは。ばれた?」

 さすがにそこまで鈍くはない。


「私はさ~、はる君がそうしたいって言うならいいと思うよ~」

「含み、あるね」

「そう思う~?」

「だって、こっちに背中向けてるし」

 そっぽ向かれてそんなこと言われたら、誰だって勘繰るだろうに。


「はる君のば~か」

「なんで!?」

 いきなりそれはひどくない!?


「女の子がこういう態度に出る時は~、見て見ぬ振りするもんでしょ~?」

「や、さすがにそこまではわからないし」

 乙女心ってなんなんでしょうね?


「私はさ~、もうちょっとこのゆる~い関係を続けててもいいと思うよ~」

「家族四人で仲良くって?」

「そこまでは言わないけど~」

「まあ、それもわかるけどね」

 心地いいし、今の義姉さんたちとの関係は。


「それに~、楽でしょ~?」

「……そりゃあ、ね」

 言っちゃえば、勝手に好意を向けてきてるわけだし。

 それに対してこっちが何かを返さなきゃいけない関係でもないし。


「安全だよね~、義弟と義姉の関係って~」

「居心地いいよね」

 そう。ちょうど今の秋ねえとの間に流れる空気のように。


「ぬるま湯で~、ストレスなくて~、お互いがお互いを大事に思ってる“だけ”~」

「心地よくて、安心出来て、ほっとする」

「はる君は尚更だよね~。だって~、私たちは絶対に何があっても~、はる君が一番だもん~。とーちゃんもなっちゃんも、絶対にそうだし~」

 沈黙。

 そこに疑問は挟めない。いや、挟みたくない。


「この間デートしたでしょ~?」

「うん」

「どう思った~?」

 逡巡。答えるべきか否か。


「あれだけじゃないなって思った」

 でも、答える。


「『姉ちゃん』だけじゃないよ。冬華姉さんも夏希姉ちゃんも。きっと話してくれただけじゃないなって、そう思った」

 だって、俺が過去に三人と会っているのは確かかもしれなくても、それはほんのすれ違いのようなものだから。


「どうだろうね~?」

「さあ? 俺にはわからないや」

 だけど、ぼかす。

 そこを明確にしたら、きっと変わらなきゃいけないから。


「でも~、はる君が選ぶなら~、いいよ~って思うな~」

「秋ねえじゃなくても?」

「それは嫌~」

「あはは。そこは正直だ」

「そりゃそうだよ~。だって~、はる君のこと好きだもん~」

 その言葉も、そっぽを向いたまま。


「だから~、はる君が私を選んでくれたら~、……嬉しいな~」


 その微かな呟きに応えるのは、夕日に崩れる波の音だけだった。


39話は明日7日の19時です。

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