義姉さんたちとの家族旅行。二日目! ~昼はみんなでピクニック~
37話投稿です
「冬華姉さん、それ砂糖! 塩はこっち!」
「え!? ありがとうございます、春斗君」
危ない危ない。塩むすびが、甘くなるところだった。
せっかくのピクニックで、そんなもの食べたくはないぞ。
「なっちゃ~ん。卵どうする~? 卵焼きにするのは半分ぐらいでいい~?」
「お願い、秋奈姉さん。もう半分はボイルしてサンドイッチの具にしようよ!」
「賛成~」
ていうか、秋ねえってマジで料理できたんだ。
家での姿からは想像が出来ない手際の良さ。
「春斗君、春斗君。お米が熱いです!」
「そりゃ炊き上がったばかりだからね!」
それに比べて冬華姉さんの不器用さよ……。一生懸命なだけにもったいない。
「春斗、大丈夫? そっちも手伝おうか?」
「大丈夫。そっちの方が手間かかるでしょ。こっちは何とかするから」
「お~、はる君のイケメン発言~」
「ああ、やっぱり春斗君が義弟でよかったです!」
秋ねえはともかく、冬華姉さんは絶対にガチで言ってるよね!?
「広いキッチンでよかったね~」
「確かに。家だと四人で料理なんて出来ないし」
「楽しくていいよね! これも旅行の醍醐味だね!」
「春斗君! お米が手にくっついて上手く握れません!!」
「ラップ使ってるのに、どうしてそうなるの!?」
待って。冬華姉さんってこんなに不器用だった!?
「春斗、ファイト!」
「はる君~、応援してるからね~」
面倒を押し付けてるだけだよね!?
「ほら、冬華姉さん。一回、手を洗って。そしたら、握り方を教えるから」
「ありがとうございます~。春斗君、なんだか先生みたいですね」
本職の教師が何を嬉しそうにしてんだか。
「ラップはキッチンテーブルの上に置いて。手のひらの上でやろうとするから失敗するんだよ」
「ああ、なるほど!」
そんなに納得することじゃないからね?
「で、ほら。こうやってラップの四隅を摘まんで持ち上げて。それで後は手のひらを丸めて握ればいいから」
「は、春斗君。この体勢は!?」
「この方がわかりやすいでしょ。ほら、ちゃんと握って」
とか余裕ぶってるけど、俺も内心バクバクだから。
だって後ろから抱きかかえるみたいにしてるせいで、冬華姉さんの顔がすぐ横にあるし。
おにぎりの握り方を教えるのに、冬華姉さんの手を上から包むようにしてるし。
ごめん。俺ちょっと調子乗ったわ……。
「わ、わ。春斗君の手が」
「ああもう、ちゃんと集中してって」
手つきが怪し過ぎる!! そんなお手玉するほど熱くないでしょに!!
「ああっ、見てください春斗君! すごいきれいに握れました!!」
「ああ、うん。そうだね」
「とっても美味しそうですね」
ぶっちゃけちょっと歪な形してるけどね。冬華姉さんが嬉しそうだし、いいや。
「じーっ」
「じ~」
「!?」
え、何!? 何その強烈な視線!!
「春斗! 私、包丁の握り方がわからない!!」
「包丁で薄いオニオンスライスを作れる人が何を言ってるの?」
「はる君~、卵ってどうやって割ればいいの~?」
「今しがた片手でパカパカ割ってた人が何言ってんの!?」
もうちょっとマシな嘘を吐こうか!?
「二人とも。あんまり春斗君を困らせるような事を言っちゃダメですよ?」
「あんたがそれを言うのか……」
「あら?」
“あら?”じゃないだろうに。
「もういいから、早いとこ準備して出発しよう。もうすぐ11時を回るよ」
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「んー、気持ちいいね!」
「お昼寝したい~」
「思ってたより距離がありましたね」
「おー。すげー、見晴らし」
はい。ということで、レンタルした自転車を漕ぎ漕ぎ、崖の上までやってきました。
あの後もなんだかんだあったのに、よく準備を終えられたよ。
「秋ねえもこっち来て見てみなよ。いい景色だよ」
「それより~、はる君もこっち来て寝ようよ~。芝生が気持ちいいよ~」
ふむ。
確かに。ごろんと寝転がる秋ねえは、めちゃくちゃ気持ちよさそうだ。
「あー、いいなぁ。これ」
「でしょ~? ちょっと眩しいけど~」
「それはしょうがないって。太陽は輝くのが仕事みたいなもんだし」
「勤勉だよね~、お天道様って~。休みなしだもん~」
はは。秋ねえらしい考え方。
「二人ともー、準備出来たよー!」
「お昼ですよ!」
「待ってました!」
「お腹ペコペコ~」
あれだけチャリを漕いで来て、汗もかいた。
そして自分たちで作った昼ご飯! これで美味くないわけがない。
「じゃーん! って言っても、みんな中身は知ってるか」
「いやいや。夏希姉ちゃん、そういうの大事だから」
「気分が違うよね~」
「わ、運動会みたいですね!」
それ、めっちゃわかる。
二つのバスケットにはそれぞれに主食とおかずが入ってるけど、なんかこう、運動会の弁当って感じがする!
まあ、作ったのは自分っていうのは、今もあの頃も変わらないけど。
「見てください、春斗君! このおにぎり、私が握ったんですよ!」
「知ってるよ。一緒に作ったんだから」
「もう! もうちょっと感動してくれてもいいじゃないですかぁ」
なんてむくれつつ、冬華姉さんは楽しそうにしている。
そしてそれは夏希姉ちゃんも秋ねえも変わらない。
だからきっと俺も同じように笑っているんだろう。
「ん~、美味しい~」
「こういうお弁当って、なんでこんなに美味しいんだろうね!」
夏希姉ちゃんの言う通り、ただのおにぎりが格別に美味い!
「風も気持ちいいし、来てよかったね!」
「ちょっとだけ、コテージでゲームしてたいとも思ってましたけどね」
「え~、自転車~って思ったりもした~」
「帰りも自転車だよ。どうするの? 秋ねえ」
「はる君の後ろに乗っけて~」
「あ、ずるいですよ秋奈! 春斗君、私も乗りたいです!」
「だったら私も! ね、いいでしょ春斗!!」
「みんな自分の自転車に乗ってきたじゃん!」
なんて、冗談を言い合う笑い声に芝生も緩やかに揺れる。
義姉さんたちと過ごす時間はこんなにも楽しい。
でも、だからこそ選ばなきゃいけないんだろう。
今朝、夏希姉ちゃんから言われた通りに。
次話以降も出来る限り早く投稿します!