義姉さんたちとの家族旅行。初日! ~着いて早々大はしゃぎ~
32話投稿です!
「すっごーい! みんなも見てよ! すごいよー!」
「お~! 海外みたい~」
「こんなきれいなところ、初めて来ました!」
「これマジ!? ここ本当に日本!?」
着いて早々、四人揃ってテンションの上がり方が尋常じゃない。
いやでも、これ見たらしょうがなくないか!?
「見て見て春斗! この階段から直接ビーチに降りれるよ!」
「はる君~。このビーチチェア、座ると気持ちいいよ~」
「信じられますか、春斗君。ここ、プライベートビーチなんですよ!」
「義姉さんたち、はしゃぎ過ぎだから」
わかるけど! そうなっちゃうのもわかるけど! もっと落ち着こう!?
「親父もよくこんなコテージを借りれたな」
「仕事で知り合った人が格安で貸してくれたそうですよ」
「親父も義母さんも一緒に来ればよかったのにな」
「気にしなくていいんじゃない~? 二人は二人で旅行に行くって言ってたし~」
「まあ、言っても新婚みたいなもんだしな」
「春斗どうする? 弟か妹が出来てたら」
「どうって……」
夏希姉ちゃん、それは反応に困るって!
「それじゃあ、はしゃぐのは後にして、荷物の整理しちゃおうか」
何しろ、コテージに着いて早々、四人揃ってバルコニーに飛び出しちゃったからな。
でも、仕方ないよな。
玄関を入って一番最初に目に飛び込んできたのが、あれだけきれいなオーシャンビューなんだから。
親父と義母さんが用意してくれた家族旅行が、まさかこんなにすごいとこだなんて、思いもしなかった。
「春斗君」
「何、冬華姉さん?」
「荷物の整理より先に、探検しませんか?」
……おい、最年長。
「賛成~」
「秋ねえ!?」
普段のぐうたらっぷりはどこ行った!?
「春斗! 何してるの、行くよ!」
「って、もう駆けだしてるし」
とか言いつつ、俺もワクワクしてんだけどな!!
「ていうか、なんで二階からなの?」
「普通の客間が並んでそうだからかな!」
身もふたもないな!?
「ですが、夏希の言う通りですね。二階には客間が四室。ひとり一部屋ですね」
「一緒に荷物も持ってくればよかったね!」
「だな。ちょっと失敗した」
まあ、後でまた運べばいいだけの話なんだけど。
「う~ん。でもこれ~、部屋割り大事だよ~?」
「どういうこと、秋ねえ?」
「隣同士の部屋が~、ベランダで繋がってるの~」
マジで!?
「あ、ホントだ!」
「ね~?」
「夜這い用でしょうか?」
……おい、教師。何言ってんだあんたは。
ていうか、そんなこと言ったら──。
「春斗」
「……なんでしょう」
「お部屋~、どこにするの~?」
「さあ、どこにしようかな」
「わかってると思いますが、春斗君の部屋が決まらないと、私たちの部屋も決まりませんよ」
「ですよね~……」
義姉さんたちの圧が強いッ!
いやまあ、俺がアホな提案したせいなんだけどな!?
「まあ、じゃあ。俺はこの部屋で」
この後の修羅場が回避できないなら、今ここで悩むことに意味はなし。
と言うよりも、俺はどの部屋でもいいんだよ。肝心なのは、義姉さんたちがどの部屋になるかなんだから。
「「「ッ」」」
「!?」
え、こわ。
三人ともそんな勢いでドアノブ掴むなんて……。大丈夫? 壊れない、それ。
「冬華姉さん、秋奈姉さん。ちょーっと手を放してくれないかな?」
「とーかちゃんとなっちゃんの部屋は~、ここじゃないよ~?」
「秋奈、夏希。二人とも部屋を間違えてますよ?」
ひとりとして譲る気がない、この気迫。どうしたもんか。
「お、客間からの景色もすごい」
ええ、そうですよ。現実逃避ですよ。
この雄大な海を見つめて、あらゆる悩みから解放されたいんだよ!!
「って。これって……」
その事実に気づいた瞬間、俺はひとつ悟った。
争いとは、無駄なものでしかないのだと。
「二人とも、いい加減放してよ! ドアノブ壊れちゃうよ?」
「言いだしっぺの法則って知ってる~?」
「二人が放せば壊れないと思いますよ?」
部屋決めでこれって、この旅行は果たしてどうなってしまうんだろうか。と、そんな悩みも解決してくれるのが、このコテージ。素晴らしき設計。
「義姉さんたち。これ、部屋がどこでもそんな関係ないよ」
「何言ってるの!? すごい重要だよ!」
「そうだよ~。とっても大事~」
「部屋決めこそ、この旅行のクライマックスと言っても過言ではありません」
それは言い過ぎ。こんなんで旅行が終わってたまるか。
「でもさ、ベランダ全部つながってたよ」
「え?」
「どういうこと~?」
「そうなのですか?」
「うん。今見てきたけど、建物を囲むようにグルっとベランダが回ってた。どの部屋からもどの部屋にも行けるよ」
そう言った瞬間、義姉さんたちは別々の部屋に飛び込んでいく。
俺ももう一度自分の部屋に入り、そしてベランダへと出る。
「ホントだ!」
「なんで~?」
「びっくりです」
「ね。俺も驚いた」
グルリとベランダを歩いた後、四人が合流。互いに顔を見合わす。
「どの部屋からでも景色を楽しめるようにしたかったんじゃないかな?」
さっき見たオーシャンビューも、高さが変わればまた印象が変わる。より高いところから見れば、海はより広く、広大に見える。
「反対側からの景色も、すごかったよ!」
夏希姉ちゃんの言う通り。
反対側は青空と大きな入道雲を背景にした、きれいな稜線を見上げることが出来る。海とは違う情感でもって、『ああ、夏だな』と言いたくなる風景だった。
「向こう側もよかったよ~」
秋ねえが指さした先の景色も好きだった。
海沿いを走る広い道路がどこまでも続き、緩やかに海側へとカーブしていく白線を追っていけば、その先には白く小さな灯台が立っている。
「あちら側も景色も私は好きでしたよ」
冬華姉さんが見つめる先に広がるのは、ごつごつした岩場だった。すぐ近くは味気ないかもしれないが、遠く離れて見れば、海水に浸食され足元がトンネルとなった崖が見える。自然ってすごいな。そんな風に思える景色だ。
「いいとこに来れたね」
「うん!」
「そうだね~」
「はい」
気づけば四人揃って海を見ている。
せっかくの旅行なのだ。つまらないことで喧嘩をしていてもしょうがない。
楽しまないと!
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