夏休みが目前です!
遅れて申し訳ありません。
31話投稿です!
「試験が終わった解放感って最高だなー!」
「って言ってもな佑樹、返却されたテスト次第じゃ夏休みは補習に……」
「やめてよ、そういうこと言うのー。やっと終わったんだから、今は忘れようよ」
ま、確かに優美の言う通り。
テスト最終日にテスト返却のこと考えても仕方ないしな。
「とりあえず、歌うぜー!」
「ドリンクどうする?」
「ねえねえ、ちょっと部屋寒くない?」
まとまりないなー。
まあいっか、テスト明けだし。
「佑樹、歌えもしない洋楽入れるなよ!」
「今日は行ける気がしたんだよなー」
「全然行けてないっての」
そもそもお前、英語苦手じゃん。
「は、恥ずかしいから、あんまり聞かないでよね」
「カラオケでそれは無理じゃない?」
「うるさいなあ! ほら、次春斗の番だよ」
「怒んなよなー」
優美も優美で妙にテンション高いし。
とまあ、そんな感じでひとしきり歌えば、ダレて来るのがカラオケである。
なんとなく曲を入れなくなり、気づけば駄弁り始めていた。
「ねえ、春斗は夏休みどうするの?」
「特に予定はないなー。あ、家族旅行には行く」
「そ、それはお義姉さんたちと、だよね……?」
なぜそんな戦々恐々とする。
「そう。親父と義母さんが楽しんで来いってさ」
「ひぅっ」
なんで泣きそうになってんの!?
「なんでいつもいつも春斗だけー!」
マイクに叫ぶな、うるさい!
「ほ、他には!? 他には何か予定ないの!?」
「夏希姉ちゃんが生徒会の用事を手伝ってもらうかもって言ってたぐらいだな。あれ、夏休み何すんだ?」
おや、よくよく考えればまるで予定がないぞ?
「あのさ。もし暇なら、一緒にバイトしない……?」
「バイト?」
優美、そんなのしてたのか。
「あ、今はしてないんだけど、夏休みだけ単発でやろうかなって。おこづかい欲しいし、遊びに行きたいし」
確かに。それはある。
「よし、じゃあ三人でやろうぜ!」
なぜ佑樹まで。まあ、いいけど。
「そうだな。どうせ暇だし、やるか」
「やった」
「よっしゃー! バイト先で女子大生の彼女作ったるぞー!!」
だからマイクに叫ぶなって!
▼
「ということで、夏休みはぼちぼちバイトもしようと思う」
夕食時、義姉さんたちにそう報告すると、
「なんで!?」
「え~。必要ないよ~」
「おこづかいが欲しいなら、私が上げますよ?」
とまあ、三者三様に反対してきたわけですが……。
「お金もそうだけど、暇なんだよ。夏休み」
約一か月も時間があるのに、ほとんど予定が入ってない方が問題なわけです。
「あ、じゃあさ春斗。デートしようよ! また一緒に遊びに行きたいな!」
「ダメ~。はる君は私と家でゴロゴロするの~」
「春斗君。こういう時こそ積みゲーを崩すのです」
それだけでどう一か月を過ごせと?
ていうか、冬華姉さんは普通に仕事あるでしょうに。ダメ大人か、この人は。
「バイトって言っても長期のやつじゃないからさ。ライブイベントのスタッフとか、単発のやつばかりだし。義姉さんたちと過ごす時間もちゃんと出来るよ」
ていうか、いくら暇だからって働きづめになるのも、それはそれで嫌だし。
「わかった! それじゃあ、先に予定決めちゃおう! カレンダー持ってくるね!」
早っ!? いや、そこまで気合入れて予定決めなくても大丈夫なんだけど……。
ていうか、今って夕食中だよね!?
「バイトが一日で終わるやつばかりならー……。春斗、デートは週六ぐらいでいい?」
「よくないから!!」
夏休みのほとんどを夏希姉ちゃんと過ごすことになるじゃん!!
「それだと疲れちゃうよ~。ちゃんと休まないとダメ~」
それはごもっともなんだけどさ。
秋ねえ、月曜から土曜まで線を引いて『休み』って書くのは違くない……?
「夏休み中は残業も少ないので、たっぷりゲームが出来ますね!」
冬華姉さん。秋ねえが引いた線の下に、『夜はゲーム』って書きこまないでくれない?
「ダメだよ、そんな不健全な生活! 春斗が病気になったらどうするの!!」
言ってることはもっともなんだけどなー。
それで、カレンダーのそこかしこに『デート♡』とか書きこまなきゃ完璧だったよ、夏希姉ちゃん。
「ていうか、もはやなんて書いてあるか読めないじゃん」
俺の夏休みはカオスですか!?
いや、このまま義姉さんたちの好きにさせてたら、間違いなくカオスになる。
とは言え、どうしたものか……。
「あ。そうだ旅行! まずは旅行の予定を立てよう!」
夏休み入って早々にある家族旅行。
日程と場所は決まってるものの、予定はまるで決まってない。
「それなら大丈夫! 春斗と旅行なんて、それだけで楽しいから!」
「なっちゃんの言う通り~。はる君のやりたいことをしよ~」
「そうですね。春斗君が決めてくれれば、私たちはそれに従いますよ」
「……」
さっきまでの主体性はどこいった!?
「そっちは春斗に任せるから、私たちは夏休みの予定を決めるね!」
「だから~、お休みしようよ~」
「昼は学生である秋奈と夏希に譲りますが、夜は社会人である私との大人な時間に決まりですね」
まずい。
このままじゃ俺の夏休みが義姉さんたちに蹂躙されてしまう。
どうすればいい──ッ!?
「あれは……」
やいのやいのと騒ぐ義姉さんたちの傍ら、視界の端に捉えたものがある。
そしてその瞬間に閃いた。
この状況を打開する策を──ッ!!
「……」
ただ、ただッ。激しい葛藤がある。
『アレ』を使うの? マジで?
すっごいやだ。すっごいやだけど、他に手立てもないなら、仕方ない。
「今度の家族旅行で、『もっとラブラブ強化期間』の決着をつけることにするから!」
うわぁ、とうとう自分でその名称を言っちゃったよ……。
「え!?」
「……本気~?」
「──ッ」
喧騒がぴたりと止む。
これ、そんなに求心力高いの? ちょっと切なくなる。
「旅行の計画、俺が立てていいんでしょ? だったらそうする。このままだと決着がつかなさそうだし」
義姉さんたちそれぞれの名前の下に貼られた、『姉ちゃん』と呼ばれた回数を示すシール。
どれも300前後と、大きな差はまるでない。
……ていうか、それだけの回数呼んでるんだよな、俺。なんだそりゃ。
「今までのは一度リセット。そして0からスタートして、旅行中に一番『姉ちゃん』と呼んだ人と、夏休み中にバイトして稼いだお金で、一泊二日の旅行に行きます!」
どうだ、これで!?
「春斗」
「はる君」
「春斗君」
「もう決定だから! 異論は認めないから!!」
もはや、やけくそである。
「冬華姉さん、秋奈姉さん。もう、手加減しないから」
「ごめんね~。とーかちゃん、なっちゃん。私が勝つから~」
「秋奈、夏希。これっばかりは泣いても譲りませんよ」
おっと、予想以上に火花が散り始めたぞ……?
「そうと決まったら、旅行の準備しないと!」
「はる君と~、ふたりきりで旅行~」
「いっそのこと海外旅行もいいですね」
あ、義姉さんたちはもうごちそうさまですか。
ところで、この食器類は誰が片づけるんですか? ……俺ですよねー。知ってた。
夏休み、どうなんだろ。
ごちゃごちゃと書き込まれたカレンダーが不安を煽る。
ここから夏休み旅行編が始まります
37話までは書き溜めがあるので、明日以降は37話まで毎日20時に投稿します!




