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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
共通ルート 第一部
30/51

秋ねえは有言実行者

次話投稿です!

 

「よ~し、はる君とデートだ~」

「めっちゃ気が抜けるかけ声だ」

「なにを~、この~」

 うーん、気合と声音の落差が激しい。

 秋ねえはもうちょっと気張っても良くない?


「で、駅前で待ち合わせたはいいけど、どこに行くの?」

「ゆっくり出来るとこだよ~」

「それ、家でも良くない?」

「良くない~。デートなんだよ~?」

 だよ~? って言われてもねぇ……。


「それよりはる君~。なにか言う事ない~?」

「あー。……その服、似合ってるよ」

「えへへ~」

 うち義姉たちにとって、これはそんなに重要なんだろうか。



 ▼



「えへへ~、プラネタリウム~」

「猫型ロボットみたいな言い方するね」

「う~ん。でも~、ここの設計に関わってるから~、間違いじゃないかも~」

「マジで!?」

「そうだよ~」

 え、嘘。

 本当だとしてもそんなにさらっと言わないでくれない!?


「ほらほら~、はる君も寝ちゃおう~?」

「あ、ちょ。『姉ちゃん』、危ないって」

「大丈夫~。ほら~、ぎゅ~」

 って、これじゃ家にいるとの変わらないよ!?


「いいよね~、プラネタリウム~。寝転がれるし~」

「『姉ちゃん』は寝れれば何でもいいんでしょ?」

「そんなことないよ~。はる君と一緒に寝るのが好きなんだよ~」

 また不意打ちでそういうことを言う。

 何があったから、秋ねえは俺にこんなことを言ってくるんだか。


「はる君は~、星座ってどれくらい知ってる~?」

「一般的なとこしか知らないよ。朝の星占いでやってるやつとか」

「黄道十二星座だね~。一時期だけ十三星座だったんだよ~」

「え、そうなの?」

「へびつかい座も入ってたんだよ~。すぐになくなっちゃったけど~」

 てか、秋ねえはなんでそんなこと知ってるのさ。歳、ごまかしてない?


「あ、あれは~? 夏の大三角~」

「それぐらいなら知ってる。織姫と彦星が入ってるやつでしょ?」

「そうだよ~。はる君は物知りだね~」

 や、そんなんで頭撫でられても。

 俺より秋ねえの方がよっぽど物を知ってるじゃん。


「ふふ~」

「どうしたの?」

「はる君が側にいてくれて嬉しいな~って思って」

 こんな至近距離で言わないでくれます!?

 すぐ目の前に顔があるから、めっちゃ恥ずかしいんだけど!?


「はる君~」

「何?」

「キスできそうだね~」

「しないでね、こんなとこで」

「どうしようかな~」

 暗いけど、周りに人いるからね!?



 ▼



「お~、もう夕方だ~」

「結構長かったからね」

 家を出たのも午後になってからだったし。さすがは秋ねえのスケジュールなだけはある。


「う~ん」

 ぐーっと伸びをする秋ねえ。

 そうすると胸が強調されて、なんて言うかすごい。


「それじゃあ~、行こうか~」

「わかった」

「どこに~? って聞かないの~?」

「秋ねえとの思い出の場所でしょ」

 今日の目的がそれなのに、何を言ってるんだか。


 そうして秋ねえと並びブラブラと街を歩いていく。

 目的地に向かっているのかどうなのか、秋ねえはフラフラと寄り道をする。

 それに付き合いながらたどり着いたのは、家から20分ほどのところを流れる河の土手だった。


「なんか、つくづく自分の記憶が信じられないや」

「なんで~?」

「だって、三人ともと子どもの頃に会ったのに、誰一人として覚えてないんだよ?」

「仕方ないよ~。はる君ってば昔は大変だったんだし~」

 そりゃまあ、そうかもしれないけど。それにしてもって思うよね。


「それで~、はる君はここのこと覚えてるの~?」

「小学生の時、たまに遊びに来たぐらいかな。河原なら野球とかサッカーをしてても怒られなかったし」

「そっか~」

 とは言え、わざわざこんなところまで遊びに来るのは、夏休みとかだけだったけど。


「はる君はさ~、自分が昔どんな子だったって思ってる~?」

「突然だね」

「そうだね~。ねえ、教えて~。どんな子だったの~、はる君は~」

 どんな、ねえ。


「背伸びはしてたかな。色々と自分で出来るようにならなきゃいけないって思ってたから。家事とか勉強とか、本当に色々と自分一人で出来るようにならないといけないって、そう思ってた」

 今なら、それは全部おふくろが死んだ悲しみを紛らわすためだったって言えるけど、当時の俺にそこまでの余裕はなかった。


「初めて会った時と同じこと言ってる~」

「え、俺そんなこと言ってたの!?」

 なんて、ませたことを。


「そうだよ~。ひとりでパンクした自転車押してて~、私が“手伝おうか?”って聞いても~、“ひとりでやるからいい”って突っぱねてたんだもん~」

 あれ、それって。その記憶って。


「覚えてる~? ひとりぼっちで一生懸命に自転車を押してたの~。“ひとりなの?”って聞いたら、“友達はみんな帰ったから”って言ってたんだよ~」

「あ」

 覚えてる。それは覚えてる。

 そうだ、友達とどこまで行けるかって話になって河原を自転車で走ってたんだ。でも、途中で俺の自転車がパンクして、そして他の子たちは“家に帰る時間だ”って先に帰っちゃったんだ。


「私が~、“置いてかれてさみしくないの~?”って聞いたら、“さみしいよ。でも、みんなもやりたいことあるだろうから、俺に合わせる必要ないよ”って言ってたの、覚えてる~?」

「待って。それ俺いくつの時?」

「さあ~? 小学校二年とか三年ぐらいじゃないかな~」

 そんな年齢でなんてこと言ってんだ、俺は……。背伸びするにもほどがあるだろ。


「でも~、私は嬉しかったな~。そう言ってくれる人がいて~」

「え」

 なんで秋ねえが?


「私~、嫌な子なんだよ~。知ってた~?」

「どうしたの突然。ていうか、誰だってそう言う側面はあるもんじゃない?」

「優しいね~、はる君は~」

 ……秋ねえ? なんでそんな寂しそうな顔をするのさ。


「私さ~、昔は今以上に周りにいる人がみ~んなバカに見えてしょうがなかったんだよね~。こんな簡単なことがどうしてわからないんだろう~、世の中なんてずっと単純なものなのに~、どうしてみんなわからないんだろう~、ってそう思ってたの~」

「それは、秋ねえは頭がいいし、人より色んなことが理解出来るからでしょ?」

 多分、この人は本当の意味で天才なんだと思う。


「どうだろう~。どうだったのかな~。わかんないや~。でも~、嫌な子なのは本当~。あの頃は特にね~。家族のことも好きじゃなかったし~」

「それって……」

 つまりは、あの二人のことも?

 そう聞こうと思い言葉を飲み込む。だけど、俺が飲み込んだはずの言葉は、秋ねえの口から零れてきた。


「とーかちゃんは年上なのにウジウジしてて何にも出来ないし~、なっちゃんはお母さんのいう事を聞くだけのいい子なだけでつまんないし~。家にいるのも好きじゃなかったんだよね~」

「……?」

 あれ、そんな話、前にも聞いたことがあるような……?


「ず~っと、つまんなくてさ~。なんか色んなものがどうでもよくてさ~。その日は本当に家に帰るのが嫌で~、この時間まで河原にいたんだ~」

 現在は18時少し前。小学生の子どもが出歩くには、確かに少し遅い時間かもしれない。


「そんな時に会ったのが~、はる君だったんだよ~。あの時間があったから~、私はすごい救われたんだよ~?」

「思い出した。あの時、なんでか知らないけど、ずっと一緒にいた子が、秋ねえ……?」

「そうだよ~」

 当時が小学生で、今が大学生。そりゃ再会してもわからんわ。

 いや、逆になんで義姉さんたちは俺のことをそんなに覚えてるんだよって話か。


「その時にね~、私のことも話したらはる君が言ってくれたんだ~。“周りに合わせようとしてもしょうがないよ。お姉さんは周囲の人と見えてるものが違うから”ってさ~。ませてるよね~」

「それはさすがにませすぎ……」

 なんだろう。こういうのを黒歴史って言うんだっけか……?


「でも、私はそうだな~って思ったんだ~。周りに合わせててもしょうがないって。私とみんなは違うんだから~、私は私のやり方で生きていこう~って」

「十分に有言実行してるよ、秋ねえは」

「でしょ~? とにかくゆる~く生きることにしてるんだ~」

 それにしたってちょっと緩すぎる気はするけどね。


「そんな感じだから~。これからもよろしくね~」

「はいはい。よろしく」

「あ~、それと~、もうひとつだけ~」

 何? まだなにかあるの?


「はる君にもゆる~く生きて貰いたいから~、私が養ってあげるね~」

「それはなんだダメ人間になりそうだから遠慮したいんだけど」

「大丈夫だよ~。はる君ちゃんとしてるから~」

 なんの根拠にもなってないって、それは。


 そして夜の帳がおり始めた河原を秋ねえと一緒に帰路に着く。


秋ねえとの過去も明らかになりましたね

次話以降は少し未定ですが、また近日中にアップしていきます。

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