世の中、二度あることは三度あるよね。
ここから秋ねえ回です!
先週末、正確には冬華姉さんとデートをしてから、また少し家の雰囲気が変わったと思う。
「春斗君。ゲームをしましょう」
「うん。冬華姉さんの部屋でいい?」
「はい!」
なんてやりとりはこれまでと変わらないけど、冬華姉さんとの距離が縮まった気はする。
きっと冬華姉さんにとって、俺とゲームをするのがどういう意味を持つのか知ってしまったからだろう。
「春斗。ちょっと手伝ってー!」
「わかった。すぐ行くー」
そしてそれは夏希姉ちゃんも同様だ。
これまで頑なに俺に家事をやらせようとしなかった夏希姉ちゃんが、気軽に声をかけてくるようになった。
でも、そうして二人との距離が縮まったからこそ思う。
じゃあ、秋ねえとは……?
▼
「何してるの~?」
「試験勉強」
「お姉ちゃんが教えてあげよう~」
そして背中に感じる温もりと柔らかさ。
いや、さすがにこの季節になると暑いって!
「え~、ダメ~?」
「ダメじゃないけど、季節を考えよう。暑い」
「でも~、いい匂いするよ~」
大丈夫。よく知ってるから!
今日も今日とて人のベットでゴロゴロと。
寝れなくなったらどうしてくれるんですかね!?
「ていうか、秋ねえも大学で試験とかあるんじゃないの?」
「あるよ~」
そんなお気楽な……。
「勉強しなくていいの?」
「う~ん、シラバスと教科書見たら教授のやりたいことは大体わかったからいいかな~」
……なんだって?
「お~? どうしたの~?」
いや、どうしたのって……。
「秋ねえって、ガチの天才……?」
「だから~、そうだって~。大学も私を退学にはしないけど~、それだけじゃダメだから~、ちゃんと単位は取るよ~」
え、何。大学ってそんなに簡単なとこなの?
ていうか、秋ねえ理系だよね?
普通もっと慌てふためくもんじゃないの!?
「あ~、はる君ここ間違ってるよ~。途中式が違う~」
「え、マジで」
あ、ホントだ。
プラスマイナスを着け間違えてる。凡ミスだ。
「はる君がどうしてもって言うなら~、特別に家庭教師をしてあげるよ~」
「その間ずっとこの態勢で?」
「それが家庭教師代だよ~」
このクソ暑い時期にずっと秋ねえを背負ってろと?
いや、無理だわ。
「残念~。残念だから~、私はベッドで寝るよ~」
ぴょーんとダイブってか、上にTシャツ一枚しか着てないのにそういうことすんのやめない!?
パンツ見えたよ!?
「んふふ~、はる君の匂いだ~」
人の枕に顔ツッコんで何言ってんだこの人!?
相変わらず思春期男子を舐めてるとしか思えない発言するな!?
そんなことされたら寝る時にどうなると思ってるんですか!?
とかなんとか思いつつ、きっちり試験勉強に集中できる辺り、俺も成長したと思う。
まあ、なんて言っても期末試験だしね。
これで夏休みをどう過ごせるか決まると言っても過言ではない。
「……」
「……」
そうしてしばらくは無言の時間が続く。
ペンを走らせる音と、時折聞こえる衣擦れの音以外は、全てが無音。
確かに秋ねえはそこにいるのに、何だかひとりになった気分だ。
「……」
「……すー、……すー」
いや、寝てんのかい!!
「全く」
振り向けば秋ねえは気持ちよさそうに寝息をたてている。
「本当によく寝る義姉だよ」
▼
「あれ。はる君?」
「……起きたの?」
それから一時間半。秋ねえの寝息をBGMに俺は勉強を続けた。
結構、褒められてもいいと思うんだ。
だって、秋ねえみたいな美人が背後で無防備に寝てるんだぞ!?
「あ~。ごめんね~、寝てた~」
「知ってる」
あと、頼むから服はきちんと着てください。
「勉強終わった~?」
「そこそこね」
秋ねえが寝てるから予定よりも勉強してしまったことは内緒だ。
「ちょっとは休憩しないとダメだよ~?」
「そろそろ一服しようと思ってたとこ。お茶淹れてくるけど、秋ねえも飲む?」
「いる~」
「了解」
目を覚ましてやるために、濃い目に淹れよう。
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「はる君~、これ苦い~」
「寝起きにはちょうどいいでしょ?」
秋ねえのことだから、どうせこの後も普通に寝るだろうし。
「む~。はる君のいじわる~」
「あのさ、秋ねえ」
「何~」
「秋ねえとも昔、会ってたりするの? 冬華姉さんや夏希姉ちゃんみたいに」
「気になる~?」
「そりゃあね」
秋ねえはお茶を一口すすって、やっぱり苦そうに舌を出す。
ちょうどいい感じで美味しいんだけどなぁ。
「じゃあ~、私ともデートして~」
「いいよ」
「イヤだって言わないんだね~」
「さすがにね。他の二人ともしてるし」
二度あることは三度あるって言うし。
「じゃあ~、次の日曜日ね~」
次話は明日6日21時です。




