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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
共通ルート 第一部
28/51

第二十八話 どうしよう。冬華姉さんが可愛すぎる。

遅れてしまって申し訳ありません!

冬華と主人公の出会いが明かされます

 


 そして週末。俺は冬華姉さんと屋内型のテーマパークに来ていた。


「春斗君。何からやりましょうか?」

「『姉ちゃん』がやりたいやつから行こうよ」

「いいんですか? それじゃあ、あのシューティングゲームから行きましょう!」

「ちょ、そんな腕を引っ張らなくても大丈夫だって」

 長女のくせに子供っぽいんだよな、この人。


 まあ、だから親しみやすくて学校でも人気なんだろうけど。


「ほらほら、春斗君早く早く」

 や、ちょっとぐらいは周りの目を気にしようね?

 さすがにそこまではしゃがれると、俺の方が恥ずかしいよ!?


「あ、春斗君。右です! 右!」

「このっ」

 くそ、意外と難しいぞこれ。当たんない!


「『姉ちゃん』上!」

「あ、あーっ」

 冬華姉さんも中々苦戦している。


「こいつがラスボスですね!」

「よし、撃ちまくれ!」

 なんて、アトラクションに乗り込んだ時とは打って変わってはしゃいでしまう。


「スコアは微妙ですが、楽しかったですね!」

 でも、こんなに楽しそうにする冬華姉さんが側にいたんじゃ、それも仕方ないと思う。


「さあ、春斗君。今日は遊びつくしますよ!」

「了解!」

 まだ午前中だって言うのに、このテンション。

 絶対今日一日もたないよな。



 ▼



「ちょ、ちょっと待ってください。春斗君、休憩しましょう」

 なんて言ってたら案の定、12時になろうかというタイミングで冬華姉さんがダウンした。


「ちょうどいいし、お昼にする?」

「そうしましょう」

 てなわけで、二人でフードコートに移動。

 しかしまあ、さすがと言うべきか、すれ違う男連中がみんなして冬華姉さんを振り返る。


「? どうかしましたか?」

「や、今日はいつもと雰囲気が違うなって思って」

「それはそうですよ。なんて言っても今日はデートですからね、デート!」

「ちょ、危ないって」

「いいじゃないですかぁ」

 なんてふざけつつ腕を組んでくる冬華姉さんは、夏らしい服装に身を包んでいる。

 学校で見るスーツ姿よりも露出が多いせいか、ちょっと目のやり場に困る。

 特に胸元ね。

 秋ねえほどじゃないけど、やっぱり冬華姉さんも普通に大きい。


「お昼を食べてもうちょっと遊んだら、午後はゆっくり出来るところに行きましょう!」



 ▼



 で、屋内型テーマパークで一通り遊びつくした俺たちがやってきたのは、とある図書館だ。

 と言っても、うちの近所にある市民図書館だけど。


「なんでこんなとこに?」

 確かにゆっくりは出来るけど、わざわざ図書館なんかに来る理由はない。


「さあ、なんででしょう? 春斗君、当ててみてください」

 って、そこでいきなりクイズ?

 なんでって言われてもな……。


「ここに『姉ちゃん』と俺の思い出があるから、とか?」

「むー」

 あれ!? なんでそんなにむくれてるの!?

 だって今日の目的ってそれだよね!?


「もうちょっと悩んでくれてもいいじゃないですか」

「いやいや。ここに連れてきた時点で答えを言ってるようなものじゃん」

 明らかに午前中と毛色が違うし。


「じゃあ、もう一問クイズです」

 あ、そういう流れ。

「ここに、どんな思い出があるでしょう?」

 ……さて、難問が来たぞ。

 思い出、思い出ねぇ。

 この図書館に来てたのだって、小学校三年ぐらいまでだったからな。


「ぶぶー。時間切れです」

「もうちょっとで思い出せそうだったんだけどな」

 まあ、負け惜しみだけど。


「そんなこと言ってもダメですよ。時間切れは時間切れです」

 冬華姉さんはくすぐったく笑いながらそう言った後、辺りを見渡した。


「変わらないですよね、ここの雰囲気は。静かで、でもどこかに人の息使いを感じて」

「そうだね」

 俺もそれが欲しくてここに来てたし。

 母さんが死んだ直後は、静まり返った家にひとりでいるのが殊更さみしく感じてたから。


「あんまりおしゃべりしてるのもなんですし、奥に行きましょう」

 言いつつ冬華姉さんは俺の手を引く。

 ペラリペラリと音がする中、本棚には目もくれずに進んだ先には、

「自習室?」

「はい。私が春斗君と初めて会った場所です」

 ここで、冬華姉さんと俺が。でも、いつ……?


「あ、その顔は覚えてないですね?」

「あはは。ごめん」

「仕方ありませんねぇ、春斗君は。でもまあ、まだ小さい頃でしたし、私も当時と随分変わりましたからね」

 そう言いつつ、冬華姉さんは近くの椅子に腰掛ける。

 ちょいちょいと指さされたのは、そんな彼女の隣。

 俺も、黙って腰掛ける。


「あんまり大きな声は出せませんから」

 そう言いつつ椅子を寄せてくる冬華姉さん。

 急な接近に鼓動が高鳴る。



「ふふ。昔もそんな風に緊張してたんですよ、春斗君は。うんうん唸る小学生の君は。高校生だった私も隣で夏休みの宿題をやってましたが、ずっと気になってました。そうしたら、ふとした瞬間に手が触れたんです。ちょうど、こんな風に」

 机の上に置いていた手にぴたりと冬華姉さんの手がくっつく。



「びっくりしたあなたは目を丸くしてました。でも、そうして驚くあなたより、私が気になったのは、消しゴムで何度も消したノートでした」

 言われてる内に思い出してきた。

 確かにこの図書館でそんな時間を過ごした覚えがある。

 夏休み。おふくろが死んで、親父は働きづめで、そして友達が家族で旅行に行ってしまっていなかったとき、俺はここに通って宿題していた。


「当時の私は今と全然違って、引っ込み思案で人付き合いも苦手で、誰かと話をするのすら緊張してしまうような子だったんです」

「『姉ちゃん』が?」

 今からは全然想像もつかない。



「でも、その時の春斗君は何だか放っておけなくて、思わず声をかけちゃったんです。『宿題、わからないの?』って」

「あ」

 思い出した。

 いた。確かにいた。

 小学二年の夏休み。誰に聞くわけにもいかなくて、たった一人解けない問題に頭を悩ませていた俺の隣に、確かにひとりの女子高生が。



「思い出してくれました?」

「思い出した。あれ、あの時の女子高生が『姉ちゃん』……?」

「はい」

 マジか……。

 いや、本当に驚きなんだけど。



「まあ、そうですよね。当時の私って本当に地味な学生でしたから。でも、その経験があったから、私は教師になろうと思ったんですよ?」

「そうなの?」

「はい。ここで春斗君の宿題を手伝って、その時にあなたが言ってくれたんです。“ありがとう、教えてくれて”って。“お姉さんのおかげでわかった”って。それがとても嬉しかったんです」

 それが、冬華姉さんが教師を志したきっかけ。


「ちなみに、私がゲームを好きになったのも、その時の春斗君の影響なんですよ?」

「え、そうなの?」

 なんか今の冬華姉さんを形作ることごとくに影響しないか、当時の俺。



「勉強を教えてくれたお礼。そう言いながら、あなたは私にノートの切れ端に書いた一枚のメモをくれました」

「そんなことしたっけ」

 ヤバいな。全く覚えてないぞ。



「ふふ」

「え、何。なんで笑ったの」

 当時の俺、なんかやらかした?

 例えばメモ書きの裏にすっげぇ恥ずかしい事を書いてたとか。


「ああ、すみません。笑うつもりはなかったんです。でも、当時のことを思い出したら懐かしくって」

「いや、マジで何があったの?」

 すげー気になる。



「ゲームの裏技です」

「え?」

「そのメモに書いてあったのは、ゲームの裏技だったんです」

 ……何それ。



「私も最初はよくわからなかったんです。何度もメモを見返して、なんだろうこれはって首を傾げて。でも、その時に春斗君が言ったんです。“誰にも内緒だけど。おねえちゃんには特別に教えてあげる”って」

 なんかそれはそれで恥ずかしいぞ。


「でも、その瞬間に気づいたんです。きっとあの頃の春斗君にとって、それが何よりも大切なものだったんだって。だから、あなたがあんなにも無邪気に教えてくれたそれが、一体どんなものなのか気になって、私は初めてゲームに触れたんです。それが、あなたが私にくれたもうひとつのもの。人と触れ合う機会が少なかった私にとって、それはとても嬉しいものだったんです」

 そうして優しく笑う冬華姉さんの顔を見るのが無性に恥ずかしくなって、俺は思わず顔を背けてしまう。

 いや、だってそうだろ? 自分が覚えてない過去を暴露されて照れ臭さを覚えない人間なんていないって。


「あなたは覚えてないかもしれないけど、私にとってあなたはとても特別な人なんです。なんて。当時の私が今の私を見たら何て思うでしょうね?」

 そうしていたずらっぽく笑う冬華姉さんは、なんだかいつもとは違って、ちょっと幼く見えた。



 ▼



 なんだかお互いにこっぱずかしくなった俺らは、急かされるように図書館を後にした。


「ああ、そう言えば」

「ん? 何?」

 まさかまだ何かあるの?


「私が春斗君と結婚して子どもが欲しいって思ったのも、さっきの話と関係があるんですよ?」

 いやいや待って!

 なんか一気に話が飛躍したから!

 え、結婚!? なんで!?


「春斗君との子どもにゲームを教えて、一緒に楽しむ。それが今の私の夢なんです。きっと楽しいですよ」

 そう言って照れたのか、冬華姉さんは早足で歩いていく。

 ひとり取り残された俺はこう呟くしかなかった。


「いや、それはずるいわ」

 どうしよう。俺の義姉が可愛すぎる。


次話は明日5日の21時です。

その次は明後日6日の21時です。

その次までは予約投稿しているのでお暇な方は是非!

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