夏希姉ちゃんはちょっと調子に乗ったようです
遅れましたが26話投稿です‼
「手伝うよ、夏希姉ちゃん」
「大丈夫だよ! 洗い物ぐらい私に任せて春斗は休んでて。今日も連れまわしちゃったし、疲れたでしょ?」
「それ言ったら夏希姉ちゃんこそ。帰ってからすぐに夕飯の準備までしてくれたんだから、疲れてるだろ」
言いつつ、シンクに溜まった洗い物を手にする。
「それに、義姉さんたちが来る前はこういうのも自分でやってたらから、何もしてないと逆に落ち着かないんだ」
「ふふ。春斗って意外と頑固だよね」
「夏希姉ちゃんほどじゃないよ」
夕方、スーパーの前で話を聞いたからか、これまでよりも夏希姉ちゃんと一緒にいるのが心地よく感じている。
「ていうか、あの二人にも手伝わせようよ。いつも夏希姉ちゃんだけにやらせて」
振り向いた先では冬華姉さんと秋ねえがくつろいでいる。
「春斗。春斗は知らないから言えるんだよ。あの二人が家事をしたらどうなるのか」
「そんなにひどいの?」
「うーん、なんて言うのかなー。二人はどっちかって言うと、“生活するのに困らなきゃいいや”って考え方なの。だから、洗濯物も洗って乾かしてあればタンスの中に仕舞わなくていいって感じだし、洗い物も“どうせ使うし、そのままでも困らないから”って理由であんまり片づけないんだよね」
「あー、つまりは片づけない人ってこと?」
「うん」
うーん、なるほどなぁ。
だから冬華姉さんの部屋はいつもあんなに散らかってるわけだ。秋ねえは秋ねえでそういうのには無頓着なのは、性格上分かりきってるし。
「困ったね」
「そうでもないよ?」
「え、マジで?」
と、問い返すと夏希姉ちゃんは頬を染めて頷いた。
「だって、そのおかげでこうやって春斗と二人きりになれるし」
あー。
いや、まあ、そうなのかもしれないけど。
それを今言うのって反則じゃないんですかね!?
「あ、ほら。洗い物終わり! お風呂用意してるから、春斗から入って!」
「ちょ、わかった! わかったから、そんなに背中押さないで!」
さては夏希姉ちゃんも照れてるな!?
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「で、風呂から上がったわけだけど、何してるの?」
問いかけた先ではリビングに正座している夏希姉ちゃんと、それをソファの上から見下ろしている冬華姉さんと秋ねえがいた。
え、マジで何してんの……?
「春斗くん」
「はい」
冬華姉さん、家でそんな声出したことあった?
完全に教師モードじゃん。
「はる君」
「え、あ、はい」
秋ねえまで……。
どうしたのさ、一体。
「あれはどういうことですか?」
「あれって、……あ」
「やっぱり心当たりあるんだ~」
冬華姉さんと秋ねえが指さした先、そこには他人には絶対に見せたくない掲示物がある。
『さらにラブラブ強化月間』と銘打たれたその掲示には、無数のシールが貼られている。
それらは義姉さんたちが俺に何回『姉ちゃん』と呼ばれたかを表している。
そして、風呂に入る前はどんぐりの背比べ状態だったのに、今は明らかに夏希姉ちゃんのところに貼られたシールが飛びぬけて多い。
つまりは、
「貼ったの? 夏希姉ちゃん」
「……だって嬉しかったんだもん」
ということらしい。
「洗い物も終わり、家事がひと段落した夏希は私たちと一緒にテレビを見ていました」
「でも~、『あ』って言ってシールを張り出したんだよね~」
「私と秋奈も横目に見ていましたが、しばらくしておかしいと気が付きました」
「明らかに一日で呼ばれた回数が多いもんね~」
夏希姉ちゃん……。
この二人に見られたらそうなるってわかってるんだから、もう少しうまくやろうよ!!
ていうか、そうして!!
じゃないと──ッ。
「春斗君、私ともデートしましょう!!」
「なっちゃんだけずるいよ~、私とも~」
ほら、どう考えたってこうなるだろ!?
「楽しかったよね、春斗! もう一回行きたいなぁ」
夏希姉ちゃん、それ火に油を注ぐ発言だから!
「春斗君、私実は行きたいところがあるんですよ」
冬華姉さん。わかったから、そんなに強く腕を絡めないで!
胸! 胸当たってるから!
「はる君~、温泉行こ~。混浴しよ~」
秋ねえ!?
その提案は股間に悪すぎるよ!?
「あ、いいね! 春斗、今度は一緒に旅行行こう!」
え、夏希姉ちゃんもそっち側!?
そんなドタバタ騒ぎは、結局それからしばらく続いた。
結局、家にいればそんなものだ。
次話投稿は未定ですが、週末から来週にかけてになると思います。
次は他の義姉に迫っていきますよ!