夏希姉ちゃんとのデートが始まりました!
24話投稿です!
夏希ねえちゃんとのデートの話です。
「春斗! ごめん、待った?」
「10分先に家を出たんだから、待つわけないだろ」
「もー! そこは『今来たとこ』って言うところでしょ」
「茶番過ぎる」
言われた時は小学校の算数の問題を思い出したよ!?
「春斗はもっと乙女心を勉強しないとダメ!」
「義姉さんたち以外にこんなことしろっての?」
「それはダメ!」
「じゃあ、いいじゃん」
「むー」
唸る夏希姉ちゃんを置いて歩き出す。
さすが日曜日、駅前は人でごった返している。
「ところで春斗。何か言う事は?」
そうして夏希姉ちゃんはスカートの裾を持ち上げて見せる。
太ももが無防備になるので、やめてくれません?
「初めて見るよね、その服」
「! えへへ~。でしょー? 今日みたいな特別な日のために取っておいたの」
「まあ、似合ってる」
「ほんとー?」
「ほんとほんと」
「えへへ~」
うちの義姉さんは基本ちょろい。
それで義姉さんが喜んでくれて嬉しく思ってる俺も大概だけど。
「ねえねえ、春斗。手、繋ごう?」
「なんで」
「いいでしょ? デートなんだから!」
「『姉ちゃん』、それ家を出る前も言ってたよね」
何でもその言い訳が通じると思ったら大間違いですよ!?
「姉弟で出かけてるだけじゃん」
「違う! 今日はデートだから姉弟じゃないの!」
「じゃあ、『姉ちゃん』って呼ばなくてもいい?」
「!? ダメ! やっぱり私と春斗は姉弟だから!」
俺に一体どうしろと?
「むー。どうしよう春斗。すっごい難問だよ!」
「ものすごい簡単な問題だと思う」
「私は普通のカップルみたいにデートしたいの。でも、春斗に『姉ちゃん』って呼ばれるのも捨てがたいの。どうしよう?」
知らねー、って言っちゃダメですか!?
「ほら、とりあえず行こう」
「えー。春斗ってば淡白過ぎない?」
「『姉ちゃん』が色々こだわり過ぎなだけだって」
ていうか、今日の夏希姉ちゃん、テンション高くない?
「ねえ、春斗。楽しいね!」
「まだどこにも行ってないよ!?」
「違うよ。どこに行くかじゃなくて、誰といるかだよ! 日曜日に春斗と一緒にいられるだけで、私はすっごく楽しいの!」
わかったから、こんなところでそんなことを言わないでください。
ほら、周りから注目されてる。
「で、今日はどこに行くの?」
「春斗はどこか行きたいとこある?」
……え?
「『姉ちゃん』が思い出の場所に連れて行ってくれるんじゃないの?」
「んー、まだ時間が早いんだよね」
「……ちなみに、後何時間ぐらい?」
「今が11時だから、あと4~5時間ぐらいかなー」
かなーって。
え、マジで?
「え、じゃあ夕方までそこには行かないの?」
「違うってばー。夕方までデートを楽しんで、それで最後に思い出の場所に行くの」
ほう。
そしてつまり、それまでの時間は何をするのか決めてないってことか。
……ザル過ぎない? そのスケジュール。
「……わかった。とりあえずそこのファミレスに入ろう」
「お昼?」
「それもあるけど、今日の予定を決めよう。闇雲に歩くのは疲れるから」
「私は春斗が一緒なら大丈夫だよ!」
そりゃどうも。
「あー。春斗、待ってー!」
なんか、うちの義姉さんたちって時折ポンコツになるよなー。
なんでだろ。
▼
ということでファミレスです。
「すぐ座れてよかったね!」
「お昼時には早いしね」
きっとすぐに混んでくる。
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
改めて見ると夏希姉ちゃんって、やっぱり可愛い。
目はパッチリしてるし、顔は整ってるし、さっきから色んな男性客がチラ見していくのも頷ける。
「うーん」
「なんか、悩んでるの?」
「なに食べようかなって思って。春斗はどうするの?」
「どうしよう」
ファミレスに入ったはいいけど、腹具合はまだ微妙だ。
朝も普通に食べたから、お昼にはまだ早いこの時間に何かを食べたいとは思えない。
「あんまりお腹空いてないの?」
「うん。とは言え何も食べないのもなー」
微妙な時間に入ると、こうなるよね。
「じゃあさ、春斗。分け合いっこしない?」
「ああ。いいね。そうしよう」
「やった!」
喜ぶ夏希姉ちゃんは即座にピンポンを押す。
「ごめん。ちょっとトイレ」
「行ってらっしゃい!」
と、送り出され用を足して戻ってきたら、そこにはとんでもないものが置かれていた。
「あ、遅いよ春斗。もう来ちゃったよ?」
「いやいやいや! 『来ちゃったよ?』じゃないよね!? なにこれ!?」
「え、カップル限定デラックスミックスパフェ」
「デラックス過ぎない!?」
え、嘘。パフェってこんなデカいものなの?
器だけで15㎝ぐらいの高さがあるよ?
「おいしそうだよね!」
いえ、見てるだけで胸やけしそうです。
「はい、春斗。あーん」
うおっ、眼前に大量の生クリームが。
迫力がすごい。
「春斗。あーん」
「……あーん」
これ、食べなきゃ一生言い続けたよね!?
てか、甘っ!!
なにこれ!!
「はいじゃあ、春斗。あーん」
え、何。それって俺もやらなきゃダメなの!?
「春斗―、早くー」
「……あーん」
「あーん♡ ん~、おいしい~」
……マジすか。
くっそ甘い生クリームに口内を蹂躙されてるんだけど。
「春斗、もう一口食べるよね? はい。あーん」
追い打ち来たッ!?
「『姉ちゃん』。ちょっと待った。その前にドリンク頼もう」
これはコーヒーがないと食べれない奴だ。
その後も夏希姉ちゃんがねだるままに『あーん』を繰り返し、結局あのバカでかいパフェの半分を食べる羽目になった。
……嫌な満腹感だ。
予定決めるだけのつもりがなんでこんなことに……。
「さ、春斗! 次に行こう!」
なんで夏希姉ちゃんはそんなに元気なのさ!?
25話は週末予定です。
思い出の場所に徐々に近づいていきます。




