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義姉たちが全員重度のブラコンだった。  作者: 個味キノ/藤宮カズキ
共通ルート 第一部
23/51

体育祭が終わったようです。そして──

遅れてすみません…! 23話投稿です。

ここから義姉たちの思い出の場所について話が進んでいきます。

 

春斗(はると)

優美(ゆみ)。……教室に用事か? まだ男子が着替えてるぞ」

 教室前の廊下にまで騒ぐ声が聞こえてくる。


 体育祭が終わったばかりだってのに、元気なことだ。


「春斗を待ってたの」

「そうか」

「うん」

「……とりあえず行こうぜ」

 ここじゃあ、いつ教室から男子が出てくるかわかったもんじゃないしな。



「いやー、しっかし盛り上がったな。体育祭があんなになるなんて思ってなかったわ。午後の競技もなんかひたすら慌ただしかったし」

 まあ、大体がうちの義姉さんたちのせいなんだけど。

 なんでああまで俺を巻き込みたがるのやら。



「春斗、大変じゃないの? お義姉さんたちと一緒にいるの。今日も色々走り回ってたじゃん」

「大変っちゃ大変だな。あんだけ色々あれば」

 いやもう本当に疲れた。

 秋ねえがグラウンドに出てきた時はどうしようかと思ったし。


「すごかったもんね。三人とも」

「お恥ずかしい限りです」

 俺の競技が終われば、やれ水分補給だやれケガはしてないかだの、構ってきたからなぁ。

 少しはおとなしく出来ないんですかね!? うちの義姉たちは!!



「とは言え、楽しかったりもするから。義姉さんたちといるの」

「そっか。あーあ、負けちゃったー!」

「なんだよ、いきなり声上げて」

 びっくりしただろうが。



「ねえ、春斗。私、学年対抗リレーで夏希(なつき)先輩と勝負してたんだ」

「あのお遊び競技で?」

 うちの体育祭は縦割りが基本だが、エキシビジョン的な競技で部活対抗や学年対抗の種目もある。

 優美が言ってるのはそれだ。


「そう。私も夏希先輩も同じ組で走るから。だったら勝負しましょうって言ったの」

「だからあんなに本気だったのか」

 ふたりだけなんか空気が違ったしな。


「ねえねえ、どんな勝負したと思う?」

「ジュースおごるとか?」

「外れだよー」

「宿題やるとか?」

「私と夏希先輩は学年違うってばぁ」

「うん。知ってる」

「もー、考える気ないでしょ」

 バレたか。



「何だったんだよ、勝負の内容って」

「知りたいー?」

 いや、優美から振ってきた話題じゃん。



「何だったんだ?」

 一足先に階段を降り切った優美は夕焼けの中、振り返る。


「勝った方が春斗をデートするって。そういう勝負」

「はあ?」

「多分、この後夏希先輩から誘われるから。そういうことだから」

「いや、そういうことって言われても……」

 なんで俺の周りの女子は俺を景品にしたがるわけ?

 もうちょっと俺の意志を尊重してくれてもよくないですか!?


「じゃあ春斗。また来週」

 そして優美は一足先に上履きを履き替える。


「あ、おい。優美!」

「ばいばい」

 何だか切なげな笑みを残して、優美は夕焼けの中、立ち去る。

 そのシルエットとすれ違うように、校門ではひとりの女生徒が誰かを待つように佇んでいた。


「あ、春斗!」

「……夏希姉ちゃん」

「もー、遅いよ!」

「待ってたなら連絡くれればいいのに」

 うちの義姉たちは、たまにスマホを使いたがらない。


「えー、やだよー。春斗をこうやって待ってるのが楽しいんだもん!」

「何それ」

 笑顔の夏希姉ちゃんは本当に楽しそうだ。


「帰ろ」

「ああ」

 そして、俺たちも帰路に着く。

 優美の姿はもうどこにも見当たらない。


「楽しかったねー!」

「あんなに盛り上がるとは思わなかったけどね」

「いいよね。体育祭って年に一回のイベントだし!」

「来年もあれがあるのか」

 覚悟しないとな。

 たった一日の出来事なのに、えらい疲れた。


「秋ねえは先に帰ってるってさ。冬華姉さんは?」

「まだやることあるって言ってたよ!」

「やっぱり先生って大変なんだ」

「ねー」

 帰り道をゆるゆると夕風が吹き抜ける。


「ねえ、春斗。私、リレーで勝負してたんだ。優美ちゃんと」

「聞いた。いつの間に俺を景品にしたのさ」

「あはは。ごめん。でも、私勝ったよ?」

 知ってる。なんか最後めっちゃデッドヒートだったし、よく覚えてる。


「だからデートしようって?」

「うん。ダメ?」

 ダメ、とは言えないよな。

 こんな顔されたら。


「いいよ。いつにする?」

「やった! じゃあさ、じゃあさ、明日でもいい?」

「いいけど、休まなくて平気?」

 あれだけ必死になったら、疲れも相当だと思うけど。


「大丈夫! 私、こう見えて体力はあるんだから!」

「わかった」

「へへへ~」

「っと。いきなりどうしたの?」

「ううん。春斗とこうやって一緒に帰るのも久しぶりだなーって思ったら、腕組みたくなっちゃった。ダメ?」

 そうやって上目遣いで甘えてくるのは反則だ。

 夏希姉ちゃんは、もうちょっと自分のかわいさを自覚した方がいい。


「いいよ、別に」

「やった」

 昼間の一生懸命な姿を見たせいか、いつもより夏希姉ちゃんが可愛く見える。


「明日はどこ行こっかなー。春斗はどっか行きたいところある?」

「そうだなー。『姉ちゃん』──って、どうしたの?」

「えへへ。春斗がちゃんと『姉ちゃん』って呼んでくれて、嬉しいだけだよ!」

 くそ。なんか照れくさい。


「まあ、約束だし」

「うんうん。そうだよね、約束を守るのは大事だよね!」

 全く。

 この程度でそんなに嬉しそうにしなくてもいいのに。

 相変わらずだな。


「あ、そうだ! ねえ春斗。私行きたいとこがあるんだ!」

「行きたいとこ?」

「うん! 昔の、私と春斗の、思い出の場所」

「それって……」

「春斗、知りたがってたよね」

 そうだ。

 冬華姉さんがいきなりこんなことをやり始めた時に話してたこと。

 俺と義姉さんたちの、思い出。


「教えてくれるの?」

「……さすがに黙り続けてるのもねって、冬華姉さんと秋奈姉さんとも話したし。ちょうどいい機会だからね。まずは私から!」

 夏希姉ちゃんの満面の笑みが眩しい。


「楽しみだね、明日!」

「うん。そうだね」


 緩やかなやりとりを交わしつつ、俺たちは家路を行く。


24話は3日(水)の20時投稿です。

まずは夏希ですね。

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