冬華姉さんとの仲は学校公認……?
19話投稿です!
「春斗君ッ!」
「冬華姉さん?」
「やっと見つけました。来てください!」
「え、ちょ、何!?」
せっかく応援席に戻る決意が固まったのに!
「そんなに強く引っ張らないで。歩きにくいって!」
「ああ、すみません。ですが、大分出遅れてしまいましたので」
「どういうこと? って、借り物競争?」
「はい。教師メインのイベント競技です」
あー。なんか中学の時もあったな、そういうの。
校長先生とかがすげー一生懸命走ってたの覚えてる。
「で、なんで俺が?」
「はい。私のお題が『男子生徒』だったものですから。春斗君を探していたら時間がかかってしまいました。あんなところで何をしていたのですか?」
秋ねえを応援席に送り届けてました。
ついでに、怨念が渦巻く応援席に戻る覚悟を固めてました。
「ていうか、『男子生徒』なら俺じゃなくても良かったんじゃない?」
こうやって冬華姉さんに手を繋いで貰いたい生徒なら、そこらへんにいるし。
例えばほら、応援席で俺への敵意をむき出しにしてる我が親友とか。
「そうですね。ですが、春斗君も『男子生徒』ですし」
「ああ、うん。そりゃそうだけど」
これで俺が『女子生徒』だったら驚きだ。
「誰でもいいなら、私は春斗君がいいです」
何そのセリフ。ズルくね?
そんな風に言われたら、文句なんてひとつも言えなくなるじゃん。
「? 春斗君、どうかしましたか?」
「どうもしない。しないからとりあえずゴールまで行こう」
ヤバい。こっ恥ずかしくて冬華姉さんの顔が真っすぐに見れない。
全校生徒の前で義姉に手を引かれてる現状よりも、冬華姉さんのセリフの方が照れくさい。
「春斗君、ゴールです」
「ああ、うん」
パンッ、と鳴るピストル。
『最後にゴールしたのは俺がファンクラブを結成した、我が校が誇る美人教師、志木冬華先生!! お題を探すのに手間取っていたようですが、果たしてどんな難解なものだったのでしょうか!?』
実況さん、結構ノリノリですね!?
ていうか、ファンクラブって何!?
『さあ志木先生、お題を読み上げてください! もし違っていたらバケツに入った氷水をかぶってもらいます!!』
いやいや、冬華姉さんに何させる気!?
そこで濡れネズミになってる体育の先生とは違って、冬華姉さんは女子だぞ!!
『おおーっと、会場中からひしひしと感じるのは、男子達の期待かあああ!? 見たいか!? お前ら見たいか!? 志木先生の濡れ透けを見たいのかーッ!?』
オオオオオッ、とか野太い声を上げてるのは誰だ!?
ていうか、煽るなよ実況も!!
『わかる。わかるぞお前らの気持ちは!! 俺も見たい!! すごい見たい!! 今のランニングスタイルもいいが!! 太ももに張り付くぴっちり具合も最高だが!! しかし見たい!! 濡れ透けをッッッ!!!』
おいこら、誰かこの実況を黙らせろ。
欲望に忠実過ぎんだろ!!!
『さあ、お題は!! 志木先生のお題は何だ!!!』
「『男子生徒』です」
冬華姉さんの一言で熱狂が静まり返る。
そして次の瞬間には、
『会場にこだまするのは、全男子たちの哀切の嘆き!! またか!? またなのか!? 我々のッ、高校生男子の夢である美人教師との禁断の青春はッ、またも志木春斗に持っていかれたあああああッッッ!!!! 俺も志木先生との関係を噂されてえええええええッッッ!!!!』
「何をシャウトしてんだよ!?」
しかもそこら中から同意の声が上がってるし。
『だがしかぁし!! 落ち着け同志たちよ!!! 我がファンクラブ鉄の掟を忘れるな!! 第一条!!
《志木先生の幸せは何物にも優先される》!!!
我らは志木先生の幸せを願う者ッ。それが、それが例え……ッ、自分とは別の誰かが相手であってもだああああああああッッッ!!!!』
実況席を私物化してんじゃねえ!!
え、てか待って。俺と冬華姉さんってそういう認識されてるの?
「春斗君、どうしましょう。私たちを公認の関係だとみんなが言ってます」
いやいや、誰も言ってないからね、そんなこと!!
「ていうか、冬華姉さん。マイク……」
「……? ああ」
ああ、じゃなくて!!
ほら、今の一言も全校放送になっちゃってるし!!
「申し訳ありません、みなさん。今の発言は忘れてください。私と春斗君は普通の義姉と義弟です」
『俺もそのセリフ言われてえええええええええええええええッッッ!!!!』
やかましいぞ、実況!!
「冬華姉さん。逃げた方がいい」
「恋のランデブーですか?」
「ただの逃走だよ!!」
そういうこと言うから、こうなるんだろ!?
『志木春斗おおおおおおおおおお!!!! お前のことをッ、お義兄さんと呼ばせてくれえええええええええええッッッ!!!!!』
嫌だよ!!!!
20話は週末にはアップ予定です!
夏希のお話になります! 体育祭編もあと僅か!