体育祭は競技の合間に熱戦が繰り広げられるようです
ここから体育祭編です!
「あ、春斗ーッ!!」
「夏希姉ちゃん?」
わざわざ俺らの学年の応援席に何の用だ?
「やっと見つけられたよー」
「用があるならスマホで連絡くれればいいのに」
「えー、それじゃあもったいないよ。探してる最中に『春斗、何してるかなー』って思うのが楽しいのに!」
「そういうもん?」
「うん!」
相変わらず何て眩しい笑顔。
そりゃ、夏希姉ちゃんのファンクラブとか出来るわ。納得。
「春斗―。今日のお昼だけどって、夏希先輩!?」
「あ、優美ちゃん。久しぶり!」
「お、おおお久しぶりですッ! えっとその、失礼しますぅッ!!」
そんな全力で挨拶する必要ある!?
しかもなんか違うし。
「優美。どうしたの?」
「あ、ああ、うん。そのえっと。ね、ねえ春斗。私、邪魔してない、かな?」
「してないしてない。大丈夫だから。変に気を使わなくていいって、いつも言ってるだろ」
「う、うん。それならいいんだけど……」
なんでこいつは他人を前にすると、こうポンコツになるんだ。
「じー。じーーー。じーーーーーー」
「何の鳴き真似? 虫?」
「虫じゃないよ!? 夏希だよ!?」
いや、知ってるけど。
「変な擬音を口にしてるから、つい」
「変!? もう、春斗ひどいよー!」
「え、非難されるの俺!?」
明らかに夏希姉ちゃんの挙動が不審だったせいだと思うけど?
「じー。じーーー。じーーーーーー」
……増えてるし。
「優美まで何なのさ。流行ってんの、その擬音?」
「べ、別にそうじゃない。そうじゃないんだけどぉ……。なんか、先輩と春斗が仲良さそうにしてるから、つい」
「仲良さそうって。別に普通じゃん」
いや、違うか。
人の目があるから夏希姉ちゃんもおとなしいし。
これが家だったら、そりゃもう今の比じゃない。
「優美ちゃんも春斗と仲いいと思うな! いっつもそんな感じなの?」
「あああ、夏希先輩に話しかけられちゃったぁ。どうしよぉ」
……小声のつもりか知らんけど、しっかり聞こえてるからな。
「そ、そうです。春斗とは、子どもの頃からずっと仲良しです。ていうか、春斗しか仲いい人がいません」
めっちゃテンパりながら、ものすごい悲しい事口走ってんぞ。
そうか。優美、お前本当に友達いないのか……。
「そうなんだ! 私もずっと昔に春斗に会ってるんだけど、春斗ってば覚えてないんだ。でも、しょうがないよね。それぐらい昔の思い出だし!」
「お、覚えてないぐらい、昔……? は、春斗! 私との思い出は!? 覚えてる!?」
「そりゃ、まあ」
「出会った時のことは!?」
「小学校に上がったばかりの頃だろ。さすがに覚えてるって」
「はう!?」
えー、なんでそこでショック受けてんの?
夏希姉ちゃんはなんか誇らしそうにしてるし。
「私との出会いは覚えてるけど、夏希先輩との出会いは覚えてない。つまりそれぐらい昔。じゃあ、先に春斗に出会ったのは、夏希先輩……?」
いや、なんでそんなに絶望感漂ってんの!?
別によくない!? どっちが先に出会ったかなんて!
「ふ、ふふ。今日のお昼を一緒に食べようと思って誘いに来たけど。ふふ、そういうことなら仕方ないよね……。お邪魔しました」
「いやいや意味わかんないから! 一緒に食べれば良くね!?」
「いいの、春斗。今、勝ち負けがはっきりしたから。今日の所は夏希先輩に譲るから」
知らないところで知らない勝負があったらしいことはわかった。
意味は分からないけど。
「でも、次は負けませんから!」
「挑戦はいつでも受けるよ! それが私のスタンスだから!」
何このバカっぽい空間。
体育祭の競技よりアホくさいんだけど……。
『えー、生徒会長の志木夏希さん。至急、本部に戻ってください。……なっちゃん、春斗君とイチャつくのは後にして頂戴』
「!?」
今の絶対冴川さんだよな!?
「あ、呼ばれちゃった。じゃあ、戻るね! またね春斗。お昼は絶対に一緒に食べるからね!」
「あ、ああ。うん。わかった」
えー、今の放送はスルーなの?
マジで?
夏希姉ちゃんって大物?
そして案の定応援席に戻った俺を待っていたのは冷やかしの嵐だった。
勘弁してくれ……。
次話投稿は来週になりそうですが、早ければ明日かなと思います!