夏希姉ちゃんはどこまでも俺を甘やかしたがるようです
連続投稿です!前話は投稿ミスをしてしまい、申し訳ありませんでした。
「夏希──、『姉ちゃん』って子どもころってどんな感じだったの?」
「今、ちゃんと『姉ちゃん』って呼んだ?」
「呼んだ呼んだ。ばっちり。100%『姉ちゃん』だった。間違いない」
危なかったけど。
「心配しなくても私の初恋は春斗で、ずっと春斗一筋だよ」
「ッ!?」
不意打ち過ぎるわ!
「あ、もう。ほらちゃんと持たないと、春斗がケガしちゃうよ?」
「わかってる」
だけど、今のはしょうがなくないか?
夕日のせいで、夏希姉ちゃんの印象もいつもと違うし。
なんか、ちょっと儚げ。
「体育祭もいよいよ今週末だね!」
「だからって練習に熱入れすぎじゃない? もう18時近いよ」
「大丈夫。だって、春斗が一緒に帰ってくれるし」
「そこまで強くないよ、俺は」
もし筋骨隆々とかなら、練習の片付けを夏希姉ちゃんと一緒にやる必要もないしな。
備品って地味に重いのな。
「ううん。春斗は強いよ。私は知ってるから」
「そんな出来事あったっけ?」
「昔のことだから春斗は覚えてないかもね!」
「だからいい加減、その昔の出来事を教えて欲しいんだけど」
ここ最近は割と気になってる。
冬華姉さんも秋ねえも教えてくれないし。
「春斗が私を一番『姉ちゃん』って呼んでくれたら、その時に教えてあげる」
「意味あるの? それ」
「ゲームみたいで楽しいでしょ?」
「『姉ちゃん』、ほとんどゲームしないじゃん」
うちでやるのは、もっぱら冬華姉さんだ。全然うまくないけど。
「よい、しょっと。これで全部だっけ?」
「『姉ちゃん』。それぐらいなら俺やるって」
「ありがと! 春斗は優しいね」
「ちょっと手伝っただけで大袈裟」
「ん~、でも私は嬉しかったから! 『ありがとう』をちゃんと伝えるのは大事でしょ?」
や、お礼言ってくれた方じゃなくて……。まあ、いいか。
「ねえ、春斗。今晩のおかずは何がいい?」
「なに、いきなり」
「片づけを手伝ってくれたお礼。好きなもの作ってあげる!」
「これぐらい大したことじゃないし、別にいいよ」
ちょっと備品運びを手伝っただけだし。
「えー、それじゃあ私の気が済まないよ!」
って、言われてもねえ。夏希姉ちゃんにはいつも美味しいご飯作って貰ってるし。
「なんでもいいよ! 春斗の好きなものなら、なんでも作ってあげる!」
「『姉ちゃん』の作ってくれるご飯はなんでも美味しいから悩む」
「……褒められたら照れる」
くっそ、またしても不意打ち!
そんなしおらしく頬を染めんなよ!
「春斗ってあんまりワガママ言わないよね」
「うーん。……そう?」
結構言ってる気もするけど。
「何て言うか、出来る事は全部自分でやろうとしてるイメージ」
「家に俺しかいなかったからね」
忙しい親父に家事なんてやらせたくなかったし。
「うん。いっぱい頑張ってるから、少しぐらいワガママ言ってもいいと思うよ! 『姉ちゃん』がちゃーんと、聞いてあげる!」
「そう言われると言いにくくなるけどね!」
「あはは。確かにー」
なんて笑う夏希姉ちゃんを見て、ふと思った。
「『姉ちゃん』は?」
「え?」
「なんかないの、ワガママ。いつも家のこととかやってるじゃん」
頑張ってるって意味なら、夏希姉ちゃんこそそうだろ?
「私は好きでやってるから大丈夫! 冬華姉さんと秋奈姉さんのことも、他の家事も、全部私がやりたくてやってるの。もちろん、一番好きなのは春斗のお世話だけどね!」
そんな嬉しそうに言わないで欲しい……。
そんなこと言われたら、もっと甘えたくなるから!
なんかもう、ダメ人間まっしぐらになるから!!
「だから。春斗にはもっといーっぱい、ワガママ言って欲しいんだ!」
「『姉ちゃん』。あんまり俺を甘やかさないで……」
「え、なんで?」
ダメ人間になってしまいそうだからです!
このままじゃ夏希姉ちゃん無しでは生きられない体になっちゃうよ!?
「それじゃあ、帰りは一緒にスーパー行こうね!」
「わかった。荷物持ちでもなんでもするよ」
働くざる者食うべからず!
「あはは、そんなことしなくていいよー。ほら、一緒にスーパーに行けば食べたいものを思い浮かぶかもしれないでしょ?」
くっそ、どこまでも義姉が甘い!
「じゃ、また後でね!」
「了解」
女子更衣室へと向かう夏希姉ちゃんの背を見送りながら、出来るだけ簡単なおかずにしようと決意した。
次話こそ予約できていると思いますので、明日28日の21時投稿です!