思い出があるのは義姉だけじゃないらしい
予約投稿がうまく出来ていなかったようです、すみません…!
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「……優美。お前何してんの?」
「ひゃ!? もう、春斗。驚かさないでよ」
「って言われても、そんなとこで突っ立ってたら誰だって声かけるだろ」
「う。そ、そんなことないから! スルーした人もいるから!」
それ、言ってて悲しくならないか?
「で、何してんだよ。こんな廊下のど真ん中で」
だいぶ朝早いからいいけど、割と邪魔だぞ。
「あ、あれを見て!」
「クラスメイトが楽しそうにおしゃべりしてるな」
「そう! しかも教室の扉の前で!」
「邪魔なら通してくれって言えばいいだけじゃないのか?」
「そんなことしたら、気を悪くしちゃうでしょ?」
あー、そういうことかー。
「お前なぁ。昔っから言ってるけど、人の事を気にし過ぎなんだよ。別にそれぐらいなんでもないから。むしろあんなところでたむろしてる方が悪いから!」
「でもでも、楽しそうにしてるじゃない」
「だから何だよ」
「邪魔しちゃ悪いかなーって、ひゃう!? なんで叩くの!?」
「お前のお人よしっぷりがアホだから」
うちの義姉たちの図々しさを少しは見習った方がいい。
「そんなんだから、昔から友達が出来ないんだぞ」
「? 春斗がいるけど?」
いや、そうなんだけど、そうじゃなくてな?
「ま、まさか春斗。私のこと友達だと思ってないとか……?」
「いや、さすがにそんなことは言わないって」
「よかったぁ。私、春斗しか友達いないから」
「そんなさみしいこと、そんな嬉しそうに言うなよ」
なぜ頬を赤らめる?
なぜ褒めて欲しそうな顔をする?
もうちょっと自分の言葉を振り返ろうか!?
「あ、でもそのぉ。春斗が友達以上になりたいって言うなら、私はそのぉ……。ね?」
「抽象的過ぎて何一つ伝わってこない言葉に同意を求めないで欲しい」
俺はエスパーじゃないので、テレパシーは使えません。
「うぅ~」
「そんなむくれられても、どうしろと?」
もうちょっと言葉で伝える努力をしてください。
「学校もずっと同じなのにぃ」
「クラスもな。今年で十年目」
「!! 十周年記念しようか!?」
「何のだよ」
「幼馴染十周年記念、とか……?」
「アルバムでも引っ張り出してくるか」
他の誰より、優美と写ってる写真が圧倒的に多いからなー。
思い出には事欠かない。
うちの義姉たちとは違って。
ていうか、そっちの過去が気になりすぎる。
「え、やろうよ! 十周年記念。思い出とか語ってさ。きっと楽しいよ!」
「えー、いいだろ別に。結構恥ずかしい思い出とか多いし」
「小学校の林間学校とか?」
「おい、やめろ」
あのことは二度と話題にしないと誓ったはずだぞ。
「中学二年の運動会とか!」
「あー、借り物競争で優勝したやつか」
「そうそう! 春斗を呼んでるのに、全然気づいてくれなかったんだもん」
「自分が借り物になるなんて想像しないから、普通」
結局、最後までお題の内容教えてくれなかったし。
何だったんだ、あれは。
「あとはほら、受験勉強付き合ってくれたりとか」
「お前、この高校行くって聞かなかったからな。ギリギリの成績のくせに」
「だって、春斗が行くって言うんだもん」
「そりゃ、家から近いし。ちゃんと進学校だし、公立だし」
親父に心配と迷惑をかけるわけにはいかない。
「私、すっごい頑張って勉強したんだから」
「よく知ってる」
「春斗がいたから、頑張れたんだよ?」
「俺はカンフル剤かよ」
随分と安いモチベーションだ。
「もー」
牛の真似か?
「春斗っていっつもそうなんだから」
「何がだよ」
「なんでもない。ほら、いつまでもこんなとこに立ってたら邪魔だよ」
「お前がそれを言うか!?」
誰だよ突っ立ってたのは!?
「春斗。私まだまだ春斗と一緒にいたいからね」
「なかなか切れないだろ、この腐れ縁は」
「そうだけどぉ、そうじゃなくてぇ」
だったらなんだよ。
優美、お前は本当に言葉にしなさすぎる。
もうちょっと具体的に話せって。
「私、今年こそはって思ってるんだからね」
だから何のことだよ。
そういう『察してコミュニケーション』はやめてくれ。
「……負けたくないし」
これは、ひとり言か……?
うちの義姉たちと言い、女ってのは意味深なことを言うのが好きなのか?
頼むからわかるように言って欲しいもんだ。
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