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第8回 汚(お)フランスのかほり ギウム・マルソー

『ロンドンで初体験』・・・と言っても決してイヤラシイ意味合いは無い。

ただ生粋の日本生まれ/日本育ちの私にとって、文化の違いから今まで経験をしたことがないことに出くわす機会がここでは多々あるだけである。そんな経験の中で、最も印象深かったものはルームシェアではないだろうか。今回は私のそんなルームシェア時代の話をしてみよう。


渡英したての5年前に私は語学学校での寮生活を経験した。日本では他人様と生活を共にすることなどなかった私はドキドキしながら寮の門を叩いたことを覚えている。通された部屋は一つのシングルベッドとシングルサイズの2段式ベッドが並ぶスッキリとしたインテリアのなかなか印象の良い部屋だった。既に3ヶ月この部屋に滞在しているメキシコ人が独立したベッドを利用しているので、今日から入るフランス人と私で2段ベッドの方を使うようにと指示を受けた。部屋で荷物をほどいているとギウムと名乗るフランス人が部屋にやって来た(ちなみに彼がもう1人のルームメイト)。彼はちょっとジャン・クロード・バンダムに似たなかなかの好青年だが、どうやら私に輪をかけて英語が話せないようだった(フランス人は意外と英語が話せない人が多い)。かたことの英語でコミュニケーションをとる私達だが、彼と話していて妙な違和感を覚えたのだ。臭いである。最初はきつい香水かと思ったが、時間を重ねてはっきりした・・・彼はワキガだということも一瞬気付かない程の強烈なワキガだったのだ。鼻を刺激すると言うより、直接、目と胃に来る臭いである。


その夜は何もする事がなく、更にギウムの刺激臭にやられた私は早めにベッドに入った。ただ、新しい環境で眠ることも出来ずにいた私は驚くべきものを目撃したのだ。

12時ぐらいになり、もう一人のルームメイトと思われる男性が部屋に戻ってきたのだが、彼はドアを開けると同時に「ファッ○!!」と一言叫んで部屋を飛び出した。

15分して帰ってきた彼は、片手で口元を抑え、消臭剤をスプレーしながら、部屋の窓を開けた。「何だこの臭いは!! くそ!!」と言い残して再び部屋を飛び出し、10分後に臭いが消えているかを確認に来る。

同じようなことを繰り返したが、その日から彼はベッドルームではなくリビングで寝起きを始めたのだ。当のギウムは英語も理解していないので、「何で、彼はリビングで寝ているの?」と聞いてくる始末。気の弱い私は答えようがなくギウムの英語が通じないフリで押し通したのだった。


・・・一週間が過ぎメキシコ人が切れた。ギウムのむなぐらを掴んで「お前臭すぎる。頼むから、シャワーを浴びてくれ!!バスソープが無いなら俺のを貸してやるから、今すぐ風呂に行け!!」と彼をバスルームまで引き摺って行くではないか。英語が分からないギウムは何がおきてるのか分からないまま風呂場に連れて行かれシャワーを浴びる羽目になったのだ。ここで言っておこう、おフランスのワキガはシャワーを浴びた程度では消えない。結果、目の前でシャワーを浴びさせたのに消えない臭いにメキシコ人が諦めた形でギウムに軍配が上がった。

人のワキガを平気で指摘するメキシコ人の逞しさと、シャワーにも負けないワキガのフランス人に囲まれて私のルームシェア初体験は忘れがたいものになったことは言うまでも無い。


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