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第4回 隣の千恵さん

木下千恵28歳は都内の短大英文科を卒業し輸入雑貨店に就職をしていた。将来は得意の英語を使って仕事がしたいと入った会社だが、英語を使うことも無いまま6年を過ごしている自分に気付いたのだ。

千恵は焦っていた。人生を変えようとロンドンのアロマテラピーのディプロマコースに申し込みをしたのも、その為だった。



香織が振り向くと少し地味目な日本人女性が微笑んでいた。その女性は木下千恵さんと名乗る。香織と同じ語学学校に一ヶ月前から通っているそうだ。渡英したばかりの香織に「最初のうちは分からないことも多いだろうからロンドンを案内してあげる!!」と彼女は言い、香織は素直に申し出を受け入れた。

2週間もすると千恵さんは教室の前で香織を待つようになった。香織が外国人のクラスメートと話をしながら教室を出てくるといつも「いいなぁ、私も話に混ぜて!」と会話に入ってくる。しかし、いざ会話に加わっても彼女は日本語しか話さないのだ。その結果か、更に1週間が過ぎると明らかに外国人の友達は彼女と一緒に居るときの香織を避けるようになった。香織はこのままでは渡英した意味がないと千恵さんに英語で会話することを提案してみた。千恵さんは同意するもののやはり日本語しか話さない。香織も彼女と距離を置こうと試みたのだが、千恵さんは今も香織の隣で微笑んでいる。そして香織も気付けば他の日本人2人を加えたプチジャパンクラブで日本語だけの生活をしているのだ・・・いつも、隣の千恵さんと一緒に。


ロンドンでは多々日本人だけの社会で生きる千恵さんに遭遇する。実を言うとこれは私にとっても非常に耳の痛い話で、私も千恵さんの仲間となることが多々あるのだ。その結果か5年経った今でも英語は下手なままなのだ。何故私が千恵さんの仲間になったかと言うと自信の無さだと思う。ロンドンに出てきて1月も経つと英語を喋れない自分にコンプレックスが沸いてくる。そのコンプレックスは英語を喋って失敗をすることへの恐れに繋がってしまう。そうするともう英語が口から出てこなくなってしまうのだ。その結果、プライドの高い千恵さん達は自分がコミュニケーションをとれる世界に篭ってしまうのだ。ここで他の千恵さんの特徴を挙げると下記のようになる。


千恵さんは評論家気取りのことが多い:「ブラジル人って気性が荒くて怖いのよね」や「フランス人って臭い」等、他人種を滅多切りである。その切り口はピー子のファッションチェック並である。


千恵さんはアクトン、イーリング周辺で他の日本人とフラットシェアをしている。


評論家気取りのことが多い千恵さんはフラットメイトとどこのケーキがおいしいなど情報交換を欠かさない。千恵さんの暮らす家には地球の歩き方など、5冊はロンドン生活のガイドブックがあるはずだ。


千恵さんは日本の会社が企画している小旅行によく参加する:千恵さんは日本人グループとコッツウォルズやストーンヘンジなどによく繰り出す。行ったことがある英国小都市の数はローカルの人よりも多かったりするのだ。


日本に一時帰国すると千恵さんはやたらと英国に住んでいることを強調する。しかし、皆で行くカラオケで英語の歌をリクエストされると途端に赤い顔をして歌いたい曲が無いと怒りだす。


皆さん、千恵さんはプライドが高いので、英語のことに触れて怒らせないようにご用心を!!


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