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第18回  ロンドンの喜び隊 ユワン・ユワン

語学学校の授業は静かに進んでいく・・・とは限らない。

南米、ヨーロッパの若者がクラスにいる場合は尚更だ。いかに自分を主張するか、笑いをとるかに命を賭けるヨーロッパ勢が片言ながらも喋り倒すため活気があるのだろう。

そんなクラス内で何を考えているのか分からない静かな軍団がある。そうである、それが私達日本人を含むアジア勢の軍団だ。今回は、私が語学学校に通っていた時の中国人同級生ユワン・ユワン達のお話をさせていただこう。


私のクラスにいたユワン・ユワンとその仲間(中華三人娘)は授業中いつも物静かに机にへばりついていた。その姿は楽しくみんなが泳ぎまわるなか、岩にへばり付きじっとしているフジツボを連想させるものだった。答えが不確かな場合でもとりあえず何か言っとけ的な雰囲気のヨーロッパ勢とは違い、彼女達は分からない質問の場合は指されても笑顔で黙っている。先生も諦めて他の生徒に質問をしなおすのだが、その光景は話したくて志方がない他の国の生徒には不思議に映っていたに違いない。


ある日の授業で先生が「貴方の国の首都を教えてください」という質問をした。

それぞれに「私はフランス出身です。首都はパリです。」などと答えるなか、一人の台湾人が「私は台湾から来ました。首都は台北です。」と答えたのだ。 

突然「What?」と叫ぶ声とともに、ユワン・ユワン率いる中華三人娘が凄い勢いで抗議を始めた。

普段殆ど喋らない彼女達が捲くし立てる英語(半分は中国語)には、ある種の凄みがあり、早く話を切って授業を進めようとする先生にも「台湾は中国の一部なのだから、中国出身で首都が北京と訂正するまでは、授業を進めないで下さい!!」と一歩も引かないのである。

私達は見たのである。お国のために遠いロンドンで中華娘ユワン・ユワン達が北朝鮮の喜び隊へと姿を変えた瞬間を。お国のためなら将軍様のためなら硬く閉ざされた口も開くのだ。


この話には更に落ちがある。普段喋らない彼女達が真っ赤な顔をして叫ぶような面白い状況を、幼稚園児並のはしゃぎっぷりをするヨーロッパ勢が見逃すわけが無かった。

「黙れ!!黙れ黙れー!!」とポルトガル人のパウロが話に割って入っていく。

一速触発の状況で彼は更にこう続けたのだ。

「台湾は中国の一部だよ。」(その回答に満足そうなユワン・ユワン達、喜び隊)

しかし、次の瞬間 「だけど、確か中国って日本の一部だったよなぁ。じゃあ、お前の国の首都は東京だろ!! そうだろ、そこの日本人!?」と続けたパウロに凍りつく私。

このような内容の冗談は通じない喜び隊が私に抗議の矛先を向ける前に早く授業が終わる事だけを祈る、可愛そうな私がそこに居たのだった。

以前にもお話したが、中国人リーガリアンは個人で会うとなかなか良い奴が多い。しかし、団体になると、お国のことになると言葉が通じなくなってしまう事が多いので気を付けて頂きたい。きっと私達もこんなところを持っているのだろうが、人の振り見て我が振り直せと行きたいものである。


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