第14回 バニーボイラー ハリ坊
ハリソン(23)は内気ではあるが、モテないわけではない。
顔だって、まぁ人並みだし、女友達が少ないほうではないと自分自身思う。ただ、今までチャンスに恵まれずいただけである。そして、その事が最終的な押しの弱さへと繋がって、彼女を作ることが出来なかったのだ。
正直言おう。ハリ坊は23歳になった今でも殆ど女性経験がないのだ。
友達には隠している。自分の周りの女友達に誘われても関係を持たないのは、その事がばれるのが怖いからかもしれない。
一週間前、クラブで日本人女性にあった。長い黒髪に、高い頬骨。いつか見た映画の芸者は奥ゆかしいイメージだったが、同じ日本人なのに彼女は腰を振りながら妖艶に踊っていた。友人に押され彼女にぶつかった。彼女は一瞬驚いた表情をしたが、その後ハリソンに腰を摺り寄せ一緒にダンスを踊ってくれたのだ。翌朝目を覚ますと、信じられない事に彼女が隣で寝ているではないか。記憶をたどると彼は今までに感じた事のない幸せな気持ちになっていった。
麗子はまたやってしまったと思いながらも、隣の男の子に笑顔を向けた。
よく見ると結構可愛い顔をしている。可愛い子は嫌いではないが、「私今日バイトなの。帰らないと。」と身支度を整えて彼にキスをし、部屋を後にした。
10分もすると『凄く楽しかった。次は何時会える? ハリソン』というメッセージが携帯に舞い込んだ。
返信せずにいると『ヘイ、ベイビー。 今夜電話するよ。ハリソン』とメールがまた入ってきた。
麗子は思った。ゲッ、奴はバニーボイラーだ!!
バニーボイラー:一般に彼女または彼をはねつけた人につきまとっている人を表す言葉。一夜を共にした人につきまとう危ない女性がバニーボイラーとして映画で紹介されているのは有名。執拗で、危ない個人のための軽蔑的な言葉である。(インターネットから引用)
上記はちょっと語意が強すぎる印象があるが、簡単に説明すると『好き好き、私を好きになってー!!』と付きまとってくる人である。
ハリ坊も初めての女性・麗子に、数ヶ月に渡り、愛のメッセージを送り続けてきたのだとか。
麗子は語る。
「余りにしつこいから、もう一度だけご飯食べにいったら、周りの友達にガールフレンドって紹介しやがったのよ、あいつ。2回しか会ってないのに、もう『愛してる』とか言ってくるし。怖いったらありゃしない!!」
さて、ハリ坊のケースは極端だが、英国での恋愛関係には私達(日本人)からするとバニーボイラー的な要素が入ってくると私は思うのだが如何だろうか。
言葉なんて大していらない・言わなくっても分かるだろ的な日本人(こんな考えは最早俺だけ?)に比べ、愛情表現豊かだからこそ、何かにつけて『I love you.』や『I miss you.』を必要とする彼らは、私にとって正にプチ・バニーボイラーそのものだ。
私の考えを採用するなら、英国に滞在するリーガリアンの私達は、この国で恋愛をするとき、皆プチ・バニーボイラーと恋愛をしなくてはならないという事になる。
現に私のパートナーも毎日『好き好き、もっと愛してー!!』攻撃をしてきて、チョッピリウザイのだ(苦笑)。しかし、ウザイと思いつつも、そんな恋愛を出来ることに感謝をしなくてはいけないと、私の友人。
それもそうだなぁ。私もバニーボイラーになって甘い恋愛を楽しんでみるかと思う今日この頃である。




