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第13回 私の失敗

日本で一人前に働いた経験があっても、色々勝手の違うロンドンで働くのは一苦労だ。 

私にいたっては、英語もままならないうえに英国流のビジネスマナーの知識も皆無だったのだから、その(気)苦労は一塩であった。

今思い起こせば日本で叩き込まれたビジネスマナーは英国のそれより断然しっかりしていて、新たに姿勢を正す必要など無かったと思う。しかし、ローカルのお客様との打ち合わせとなるとつい緊張してしまい失態をさらしてしまうから情けない。

さて、今回はそんな私の失態談から恥ずかしい勘違いの話をさせていただこう。


私が前の職場に加わって2ヶ月が経った頃である。何度も言っているが英語が全く喋れなかった私は電話での会話が上手く出来ず、業者やお客様に電話を掛ける事が物凄く苦痛だったのだ。どんなに一生懸命話しても「何言ってるのか分からないよ!! 英語が喋れる人に掛け直させて。」と話を切られてしまうのは非常に情けなくて辛いものだった。しかし、そこは仕事。嫌だからって投げ出すことは出来ないので工夫をし始めたのだ。業者やお客様と話す前にe-mailを書いて送り、それをもとに内容の説明を行うことにした。少しすると私の努力の甲斐もあってか業者達の態度が変りだしたのだ。電話で話すと業者達は妙に馴れ馴れしくなっていたり、若干よそよそしさを感じるほど気を遣っているように感じられた。ビバe-mailといった具合で、その後もe-mailを活用してノリノリで仕事をこなしていった。そんなある日、同僚が青ざめながら私にあることを指摘したのだ。


同僚「そのe-mailって、誰に送ってるの? まさか取引先じゃないよね?」

私「えっ、何で?弁護士の○○さんだよ。」

同「そんなメール送っちゃ駄目だよ。何でXXXって付けて送ってるの?」

私「??? 何で? XXXって締め括りの〆って意味じゃないの?」


語学学生時代の友人としか英語のe-mailの遣り取りをしたことが無かった私はXの意味をスッカリ勘違いしていたのだ。私の中では文末に付ける〆の意味合い(学校の友達は皆文末にXを付けてe-mailをしてくれていたので)だったのだが、この国では親しみを込めて送るキスを意味しているとの説明を受けた。

もちろんビジネスの場ではXマークを使うことはない。全てのメールの終わりをXで結んでいた私は、気付かないうちに所構わずキスを振りまくe-mail界のキス魔になっていたのだ。業者の数名は危ない新入社員が入ったものだと怯え(それがよそよそしさの原因か?)、またある者はクレイジージャパニーズが変なことをしていると面白がっていたのだろう。

私は恥ずかしさで顔を赤くしながらも、数名妙に馴れ馴れしくなっていた業者達は何であんなに優しくなっていたのだろうと疑問を持ったのだった(汗)。


今でこそ笑える失敗談。その頃の私は顔から火が出るほどに恥ずかしかったのだが、英国リーガリアンズはそんなこんなを乗り越えて一人前になっていくのだろう。


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