僕は諦めたよ
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僕の幼馴染みの楓とは幼稚園の頃から一緒だった。家も近く、小学校の帰りでは決まって二人してブランコで肩を並べていたものさ。
小学校中学年からそれぞれの男子・女子グループと分かれてしまったが、公園でその日にあったできごとを二人して面白おかしく話し合うことは続いた。
小学校を卒業した後も同じ中学校に入学した。その頃になると、彼女との接点は少なくなっていた。僕は僕で習い事も始めたというのも原因だろう。
僕は小学校五年の頃から小説やアニメ、俗に言うインドアの趣味にはまっていた。それらの作品の多くは新ヒロインが現れては幼馴染みは置いてかれる存在であることが多い。その逆もしかり、イケメンの先輩が現れてー。なんてことはしばしば。
僕だってわかってるつもりさ、現実と非現実を一緒にするべきではないことぐらい。だから僕は精一杯の抵抗をすることにしたんだ。成長していくにつれ美しくなっていく彼女に釣り合いたいからね。
密かに毎日筋トレをしてるし、勉強も予習復習を大事にした。お陰でいつもテストはトップクラスだった。中学一年の頃よりガリ勉なんてアダ名をつけられてしまった要因だ。
楓は中学校ではモテていた。僕にとってはただの幼馴染みとしか考えてなかったから、彼女が幸せな恋愛をしてくれればと思った。
ごめん。意地はっちゃったね。できることなら、彼女の隣には僕が居たいんだ。他の誰かがその場所にいられると考えただけで心が痛いんだ。
中学校の頃の僕は、彼女に対する気持ちが複雑だった。だからこそ習い事に身を打ち込んだだけどさ。
僕が唯一主人公になれるのは小説の世界だけだった。だから現実で主人公のような振る舞いはできないと最初から諦めてたさ。
中学二年の時、一度だけ彼女と進路について話をした。それはいつもの公園、いつものブランコでだ。二人して伸びる影は、あの頃よりも大きいと感じた。
今思えば、僕から告白するタイミングはたくさんあったと思う。結局中学校の僕たちの関係に発展はなかった。
高校は偏差値は高めだが、自転車で通えるところにした。もう楓とは会えないという予想はあったが、驚いたことに彼女も同じ高校だった。
嬉しいことに、登校と下校は一緒にいられた。部活は強制ではなく、推奨として設けていた高校だった。帰宅部も考えたが、僕は文学部に入った。楓は女子テニス部に入った。窓から聞こえてくる彼女の声が励みになり、僕の執筆作業ははかどった。
当然、「好きな人できた?」なんて話題もあった。その度にごまかしてしまう僕が自分から客観的にみて滑稽に思えた。気持ちばかりが募り、一時期、
「あれ?僕、ストーカーとかになりそう?」
なんて、思ってしまったりして。
高校生活の一年目は友人もそこそこにでき、勉強は中学以上に頑張ったことが発揮され、自慢じゃないけどテストの順位はドップを維持した。
他の女子については、楓以上に魅力を感じず、自分の異常性を感じた。人を好きになるのは辛い。特に僕みたいに関係を発展させるための勇気を持てないものには。幸い彼女には僕以上の異性との関係はないらしい。
僕たちが高校二年生になり、僕の小説も軌道に乗った。高校二年には書籍化までたどり着いた。窓から見えるテニス部たちは県大会に向けて猛特訓しているのを眺める。勇気を出せずに彼女に告白できない代わりに、努めて彼女との登下校だけは一緒にいられるようにした。でも、限界は来る。
自信はないけど、この気持ちは抑えられそうにない。彼女たち、楓の県大会に応援に行き、その帰りにでも僕はこの想い伝えよう。
もうこの気持ちを押さえ付けるのは「僕は諦めたよ」。
++++++県大会後
僕と彼女はいつもの公園でー。




