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おっぱい好きな古武術少年が、異能力者の学園に入学したんだが。  作者: アッキ@瓶の蓋。


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1/13

――――とある死闘の末

 ――――人間は神に縛られている。


 生まれた時から肉の器に押し込められ、宿命や運命という目には見えない力に支配される。

 社会に出たら人間関係の維持を強要され、人と関われば関わるほどその命令は見えずとも人に重くのしかかる。


 それを破り、自由奔放。もしくは我を通す者も居るだろう。

 しかし結局は調和を望み、非凡を嫌う大多数に迫害される道を選ばされるだけである。


 そう、神が望むとおりに。

 ――――人間は神が敷いたレールの上からは、逃れる事など出来ないのだから。





 それは死体の山だった。


 首が曲がった死体、中身が飛び出た死体、四肢が欠損した死体、全身が青ざめた死体、頭がない死体、眠ったように見える死体、全身血塗れの死体、右半身が抉られた死体、口から泡を吹いてる死体、2つに分かれた死体、手しか残ってない死体、強姦された死体、心臓が抜かれた死体、武器が刺さった死体、包帯塗れの死体、息をしていない死体――――。

 死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体……。


 そこには血の臭いという表現では生ぬるい、濃厚なる死の香りが充満していた。

 全ての死体がこの惨状を、この空間を絶望という形にて染め上げていた。


 そんな死の臭いが充満するこの場所で、生きている影が2つ。その2つの影は男と女、1組の男女の影ではあったが創世記に描かれるアダムとイブのような恋愛関係ではない事は、その男女が互いに人を殺せる得物を持って向かい合っていることからも容易に想像できる。

 男と女は互いに得物を、人の身体を掻っ切る事が出来る刃物を相手を殺すつもりで斬りかかっていた。互いの刃が激しくぶつかることで、火花が生まれ、そして消えていく。

 命のやり取りが続き、いつ終わるのかと思うとそれは突然に訪れた。女がくるりと自身の身体を回転させる独特の太刀筋、それに対する自身の腰を下ろして相手と向き合う独特な体制な男の剣術。男と女、2人の命を奪うやり取りは、それぞれの得物が折られた事によって一旦仕切り直しとなる。

 2人はそれぞれの得物が折られた同時に、相手にこれ以上の隙を見せないように三歩後ろへと下がる。


 互いに、互いを殺す覚悟を持って行われる命を奪うやり取り。

 初めはどういう目的で行ったのかもすらももう覚えていない中で、先に口を開いたのは女の方であった。


「――――もう、終わりに致しませんこと?」


 女は薄紫色の襦袢を着た、モデルをも羨む体型の美少女。清純そうな、清らかな見た目ではあったが、顔に浮かべているのは殺しを楽しんでいる狂人の笑みである。手に持った大剣も、磨きすぎて触っただけで指が斬れるだろう。明らかに人を殺す装備をした彼女の名前は、清木聖女(きよきじゃんぬ)

 今話題の、キラキラネームな、殺人鬼ちゃんである。


 対する男は、大太刀を手にした青いジャージ姿の長身男性。筋肉ダルマという訳ではないが、引きしまった腕や足についた筋肉からはそのストイックに鍛錬した結果がうかがえる。首から赤いマントを右半身に沿って垂れており、両方の手首と足首には銀色の枷のようなアクセサリーを身に着けていた。彼の名前は佐々木銀次郎(ささきぎんじろう)、剣術をストイックに行う男。

 ジャンヌの言葉に対して、銀次郎は剣を構えたまま低い声で否定する。


「……なら、剣を収めろよ。剣女」


 そもそも、この惨状はジャンヌの発端からである。

 些細な喧嘩か、力試しか、それともただの八つ当たりか。なにがこの名前も知らない、漫画でいう捨てキャラ達が死に至った発端は、このジャンヌの一閃である。

 銀次郎は訳も分からぬまま、ただただ一閃を防ぎ、それを見たジャンヌがニヤリと微笑みかけられて斬りかかられ、仕方なく応酬したと言う訳である。銀次郎からして見れば、いきなり殺人鬼に襲い掛かられてしまったのでお相手しただけなのだから。

 そんな気を抜けば死んでしまう相手との戦い、そんな相手がいつでも首を掻っ切る準備をして剣を構えたまま、こちらには剣を収めろと言う。おかしいのはジャンヌの方である。


「――――何故、殺した? 殺す理由などあったのか?」


 銀次郎がそう尋ねると、ジャンヌはにやりと笑みを浮かべる。


「――――私があなた達を殺した理由、でして?


 ふとした拍子で殺した、殺したかったから殺した、うじゃうじゃいてたから殺した、

 英雄になるために殺した、悪の道を貫くために殺した、平凡に過ごすために殺した、

 愛が欲しいから殺した、勝ちたかったから殺した、自分を示すために殺した、

 戦うために殺した、面白くなるために殺した、楽しむために殺した、

 平和にするために殺した、時間が欲しかったから殺した、才能が欲しいから殺した、

 理由などなく殺した、復讐のために殺した、頼まれたから殺した、

 金が欲しかったから殺した、とりあえず殺した、友達が欲しかったから殺した――――」


 殺した、殺した、

 殺した、殺した、殺した、殺した、

 殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、


 殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した――――


 壊れたテレビのように、「殺した」という言葉をただただ繰り返し続けるジャンヌ。


「どんな理由だったら納得します? どんな理由だとしたら人殺しを容認できますか?

 量産された憧れも、数字で殺す暴力も、愛するあなたを守るのも、中途半端な結末も……ただのこれは虐殺なのだから。人殺しという行為を、なんだったら容認出来るでしょうね?

 ハハッ、ハハハハハハハハハッ!」


「――――ッ! 交渉決裂、か」


 狂ったように剣を振るって迫るジャンヌ、それに対して銀次郎も再び防衛のために剣を構え――――




 ――――ドンドンッ!


 木槌を強く叩きつける音が会場へと響き渡る。


(……俺は一体)


 銀次郎の記憶は突如として途切れてしまっており、自分でも訳が分かっていない状況の中で事態だけはこくこくと進む。

 小綺麗な黒の法衣に身を包んだ大人達、しかし彼らの顔は全員真っ黒に塗りつぶされており、まるで現実感がない。ただ自分を縛り続ける荒縄の感触だけは、銀次郎に現実を突き付けていた。


「被告人・佐々木銀次郎殿!

 被告は夢島高等学校にて128名の人間に対して手にしていた剣にて重軽傷を負わせ、殺害。さらに同学園に通う女生徒・清木聖女(きよきじゃんぬ)氏に対しては強姦した後に殺害したと見受けられる。この残虐非道な行いは、平成の世における未成年者の犯罪史においても残忍非道であると言わざるを得ない。

 よって、今ここに求刑する! この佐々木銀次郎殿に重き、正義の判決を!」


(おいおい、冗談だろう?!)


 大人達が言っているのは、銀次郎への法的な処置。それも身に覚えがないものである。

 第一に銀次郎はジャンヌに強姦など行っていないし、行う暇などもなかった。それに重軽傷を負わされて死亡させたのも、ジャンヌの方だ。銀次郎、ではない。それなのに、全ての責を自分に押し付けられようとしているのだ、言いたい事は山ほどあった。


 だが何故か口から言葉が、認めないという言葉が口から出て来ない。


 ――――俺が、やりました。


 代わりに出たその言葉は自分の口から出た言葉のはずなのに、どこか浮世離れしていた。


「――――反省する気なし! よって、ここに佐々木銀次郎を平成の世には珍しい、死刑とする事を求める! 陪審員達よ、意見に相違ないなっ!」


『相違なしっ!』


 そのままとんとん拍子にギロチン台の上に移動させられ、現実感も感じないまま銀次郎の首は斬首台へとセッティングされ、そして――――




 この物語は、自由を追い求める物語である。

 しかし同時に、現実とは思い通りにならない中で1人の少年が自分の我(わがまま)を通して世間にぶつかり合う、そういう物語でもある。


 この世はままならない。

 自分の意見ばかりを通そうとしても、結局は大きな力に屈服するしかないのだから。






 ――――死にますか、死にませんか。


 俺の前に現れたその少女は、物騒な二択を俺へと投げかけて来た。

 "少女"とは言ったが、俺の目の前に出て来たその少女は生き物ではなかった。

 ――――アンティークドール、1m程度の人間の手によって整えられた作られた美しさの少女の人形。その人形は無表情な顔でそう俺に尋ねて来た。


  (ふか)く、(ふか)い、暗闇がずっと広がる、息が詰まりそうな狭い部屋。足元すら見えないような、淀みまくる闇が支配する空間に俺――――佐々木銀次郎(ささきぎんじろう)は居た。


 どうしてこんな場所に居るのか、いやそもそも今がいつなのか?

 前後の記憶が、すっぽりと記憶が抜け落ちてしまっている感覚。前か、後ろか、左か、右か、これがどこか分からない中で困惑していると、アンティークドールはさらに質問の内容を深く、掘り下げて行く。


「あなたには2つの道があります。

 1つはこのまま惨めに社会的な死を黙って受け入れる、なににも抗う事をせずにただただ悪魔のような者が描いた最悪の道を受け入れて永遠に続く後悔の日々。生きながらにして死んでいるというゾンビのような生活を送って、いずれ苦しみに耐えきれずに死ぬという道。

 もう1つはその理不尽に抗い、生を手に入れるという道。ただこの道は限りなく狭い道で、なおかつ達成出来るかどうかも分からないような道。選べれば天国のような道だが、それを選び取れる可能性は限りなく低い」


 ――――あなたは、世界の全てを敵に回して生き残る覚悟がありますか?


 そう言って尋ねる人形の問いかけに、俺は――――後者の道を選択する。普通に考えれば、前者と言う破滅の道を選ぶ訳がないからだ。それならば多少、困難だろうと後者の道を選ぶしかないからである。

 俺が後者の道を選択すると言うと、人形はクスリと小さく笑う。


「……うぷぷ、そう来ますか。まぁ、普通はそっちを選択しますか。

 そうだよね、この2つの選択を提示した場合、選ぶのは普通そっちですよね。分かっていましたよ、そうなる事は大体想定できました。想定の範囲内です。とは言えども、言葉にするのとしないのとではやはり違いますからね」


 人形はそう言うと、俺の頭をこつりと小さく小突いていた。頭が揺れ動いて少しめまいを感じながら、それとは別の痛みも感じていた。なにかが身体へと流れ込む感覚と共に、異物が入り込んで身体の中に馴染もうと染み始めていた。


一回目(・・・)は仕方がなかった、人間だれしも一回目というのは失敗するように出来ている。それでも失敗せずに成功する人間というのは神様に愛されているか、単なる化け物かのどちらか。それ故にまったく気にする必要はない。大切なのは二回目、そう今回。

 あなたがこの最悪の結末を回避する方法、それはこの二回目の時間の中で悪魔を見つけ出して、倒す事。そのためにあなたには一回目にはなかった、特別な力を与えましょう。その力と、一回目でも魅せた力を用いて、君は辿りつけ。


 ――――我が名はニーチェ。神を憎む、人形なり」

めずきさんの、「π>Ψ ~おっぱいは正義~」を見て

自分もおっぱいをモチーフにした学園ものを書きたかったんです。

けれども、モチーフにした歌のせいでこんな事に……。


私は悪くない、そう……そのはずである。

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