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ローラさんは今日もゴリラです  作者: 吠神やじり
第五章 さらばゴリゴリ団
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第三十三話 明治神宮の決戦

 明治神宮に踏み込んだ巨大ロボの操縦者は目を疑った。まず目に入ったのは倒れている仲間の巨大ロボ。そしてその横にうずくまるデカすぎる人影。

 仲間に無線で連絡を入れる。


「おい、お前の側にいる、そのデカいヤツは一体なんだ?」


 応答は無い。だが仲間だと思っていた巨大ロボが動き出す。巨大ロボはその身体のあらゆる場所からきしむ音を響かせていた。それでも巨大ロボは立ち上がる。

 デカいオッサンを引っ張り上げながら、巨大ロボは仁王立ち。ローラさんによって装甲を引き剥がされ、頭部のコックピットは外から丸見えだった。

 そこで巨大ロボを操縦しているのは、やたらとゴツいオネエ。不敵に笑うゴツいオネエに巨大ロボの操縦者は戦慄する。


「お前は一体何者だ!?」


 ボロボロの巨大ロボは応えない。片手に掴んだデカいオッサンを、もう片方の手で頭を撫でながら慰めている。


「いや、本当になんだよ、お前ら……」


     ***


「始まったな、行くぞっ!」


 レッドの号令にイエローとローラさんが飛び出した。巨大ロボ三体の視線は、ゴトウダとミドリ君に集まっている。

 先ほどと同じように、先行はレッドとイエロー。巨大ロボはまだ二人に気付いていない。レッドのダンベルが巨大ロボの足首に当たる。その直後にイエローのローリングソバット。

 だが今度の巨大ロボには通用しなかった。一体目よりも一回り大きい巨大ロボは、そこでビルダーファイブの存在に気付く。

 巨大ロボが足下の二人に目を向けた瞬間、ミドリ君が襲いかかる。


「はいっ! どーんっ!」


 涙目で巨大ロボを突き飛ばすミドリ君。巨大ロボは体勢を崩した、そしてミドリ君はまたヘタレた。


「ちょっ、このロボ、メッチャ硬いですよ。こんなの無理ですって」


「ロボが硬いのは当たり前でしょ! ほら、さっさとやる!」


 ゴトウダが叫ぶ。そのゴトウダの背後にはもう一体の巨大ロボ。この機体もやはりゴトウダの乗る一体目よりも一回り大きい。

 ロボの身をひるがえし、ゴトウダは背後から迫る巨大ロボに体当たり。


「こっちも必死なのよ。コックピットの装甲が無いんだから、まともに攻撃食らったら死ぬってホントに」


 ぼやきながら巨大ロボとぶつかり動きを止める。


「時間稼ぎしかできないわよ。お願いね、ローラさん」


 森から飛び出したローラさんの手にはゴリセン。走り出した勢いのまま、正体不明の金属でできたハリセンをフルスイング。

 ダンプカーの正面衝突にも似た破壊音が響く。重い衝撃を物語る低い音、金属の衝突を思わせる甲高い音。森の中にいたヨシダさんとハセガワは思わず耳をふさいだ。


 ゴリセンのフルスイングを食らった巨大ロボの足が吹き飛んだ。巨大ロボの身体中からきしむ音が聞こえる。バランスをとろうと、もがくように腕を振り回すが、そのまま尻餅をつくように倒れた。


「あの武器、凄いな……。いや、あれを使うローラさんが凄いのか……」


 レッドの感嘆。アレをさっきの戦いで使われたら負けていた。そうハッキリと分かる実力差。手に持ったダンベルを見つめる。


「武器か……。もう少し重いヤツに変えるか……」


 尻餅をつく巨大ロボに向かってイエローが大きく跳躍する。顔面を模した部分に跳び蹴り。顔面のパーツが歪み、そして頭部から外れて落ちる。そこにはカメラやセンサー類がぎっしりと収納されていた。


「あちゃ、これ頭部に乗るタイプじゃないんだ。じゃあ、アッチか」


 頭部のパーツにしがみついたまま、巨大ロボの腹部に目を向ける。そこには既にローラさんがいた。

 再びゴリセンのフルスイング。脇腹の装甲が吹き飛び、その奥で愕然としている操縦者の姿がさらけ出された。


「じゃあ、お前も死んでもらおうかな。安心しろ、仲間はもう逝ってるから」


 ローラさんの言葉に操縦者は小便を漏らしていた。まだ誰も死んでいないが、操縦者はそれを知らない。


     ***


 自分より一回り大きな巨大ロボと組み合うゴトウダのロボ。そのまま動かずに時間稼ぎをしている。ゴトウダの狙いは、ローラさんたちが巨大ロボを各個撃破できるように時間を稼ぐ事。それ以上の事は望んでいない。

 だが、そのゴトウダの狙いを台無しにする動きが起きた。


「はいっ! どーんっ!」


 泣きながらキレたミドリ君がゴトウダのロボと敵のロボをまとめて突き飛ばす。お互いに組み合った状態の二体はそのままバランスを崩して倒れかける。


「おわっ!? ヤベえ、落ちるってバカっ!」


 ゴトウダはロボの手を操作して顔面のコックピットをふさぐ。その隙に敵のロボから殴られるゴトウダ。


「ミドリっ! テメエ、殺すぞ!」


 そんなゴトウダの叫びも、泣いているミドリ君は聞いてない。敵の区別もついていないミドリ君は、揉み合う二体のロボに更なる追撃をかけた。


「どーんっ!」


 二体のロボはそのまま揉み合うようにして倒れ込む。全長十五メートルのゴトウダロボ。そしてそれより一回り大きい敵のロボ。

 倒れ込んだ衝撃は辺りの木々をなぎ倒すだけに留まらず、二体が倒れた場所とその周辺に地盤沈下すら引き起こした。


「ありゃ、死んだっすね。ゴトウダ」


「惜しい人を亡くしましたね。ゴトウダさん、いい武器を作ってくれて、ありがとうございます」


 ヨシダさんとハセガワの二人は、完全にゴトウダが死んだものと考えていた。


「マジで死ぬかと思った…………」


 倒れ込んだ衝撃でひしゃげたコックピットの中で、ゴトウダは生きていた。本当にギリギリのところで生きていた。もう少しコックピットの中で挽肉になるところだった。

 ゴトウダがコックピットの外を見ると、そこに赤い閃光が走る。ビルダーレッドが倒れ込んだ巨大ロボを強襲した。


「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!」


 気合いの入った咆哮と共にダンベルを叩きつける。だが、巨大ロボの腹部の装甲はわずかに歪んだだけ。一撃で装甲を吹き飛ばしたローラさんには遠く及ばない。

 だがレッドは止まらない。一点を繰り返し殴り続ける。わずかな歪みが大きくなっていき、そして最後は装甲が崩れ落ちた。更に装甲を支える内部の骨組みを殴り、道を切り開く。内部にいる搭乗者の元へ。


 破壊された外部装甲と崩れていく内部の骨組みの奥。そこに搭乗者はいた。だが怯えきった搭乗者はレッドを見つめて震えるだけ。

 レッドはつまらなそうに操縦席の操作パネルを殴りつける。そのまま搭乗者の胸ぐらを掴んで表に放り出した。


 巨大ロボの搭乗者を始末したレッドはそのままローラさんとイエローの元に戻るつもりだった。だが、そこでひしゃげたコックピットの中にいたゴトウダを見かける。


「よかった、生きてたんだな。あの衝撃じゃ死んでもおかしくないんだが。アンタ、運がよかったな」


 ひしゃげたコックピットを強引にこじ開けてゴトウダの出口を作る。そしてゴトウダに手を差し伸べた。


「あら、やだ。まさかヒーローに救われるとはね。ねえ、あなた。お礼にいい武器作ってあげようか?」


 ゴトウダの唐突な言葉にレッドは戸惑う。しかしゴトウダの質問に、レッドは質問で返す。


「あのハリセンくらい強力なヤツでも作れるのか?」


「もちろん作れるわよ。アレも私の作品だもの」


 そして明治神宮で立っている巨大ロボは残り一体。ローラさんとイエローがその元にノンビリと歩いていく。


「アイツは最初のヤツと同じくらいの大きさだな。多分、コックピットは頭部かな」


「そうゴリね。ほとんど同じモデルみたいだし、これなら余裕ゴリね」


 巨大ロボのコックピットでは搭乗者が戦慄していた。


「ゴ……、ゴリラが来る。ゴリラが来るっ!」


 無線のスイッチを入れる。まだ明治神宮に到着していない合体ロボに助けを求める。


「は、早く来てくれっ。ゴリラが来るっ!」


『なに言ってんだよ。ゴリラってなんだ? そんなモン、明治神宮にいる訳ないだろ。まあ、すぐに合体してそっちに向かうから、ちょっと待ってろ』


     ***


 自転車で空飛ぶ上半身を追いかけるビルダーピンク。一度は明治神宮から離れたものの、空飛ぶ上半身を追っている内にまた明治神宮の近くまで戻ってきていた。

 空飛ぶ上半身は明治神宮のすぐ南、代々木競技場の上空を旋回している。そこまで辿り着いてピンクはようやく見つけ出した。

 見た目は妙に目立つ黄色のトレーラー。だが、よく見ればまるで装甲車のような車体は明らかに異質な存在だった。

 そのトレーラーは代々木競技場の駐車場に駐められていた。車内の運転手は無線で仲間と話し合っている。


「すぐに合体すんのか? まあ、いいけどよ。コイツを乗り捨てていくのは、ちょっともったいねえな。アイツらだけに任せて、コイツ持って帰っちゃダメなのか?」


 ピンクの存在には気付いていない。ピンクはヘルメットのセンサーで運転手の特徴からデータベースを検索する。


『なにコイツ……、登録されたヒーローじゃない?』


 網膜に映し出された情報はただ一つ。


『該当データ無し』


 ピンクは変身を解いた。そしてごく普通にトレーラーの運転手に声をかける。


「こんにちわー。なんか格好いい車ですねー」


 運転手は惚けた顔でピンクを見る。そして鼻の下を伸ばしながら運転席の窓を開けた。


「悪いね、お姉ちゃん。俺、これから仕事でさ。でも話くらいなら付き合ってもいいよ」


 ピンクはトレーラーの窓から顔を出した運転手の襟首を掴んで、そのまま外に引きずり出す。事態が飲み込めないまま、狼狽する運転手を地面に叩きつけた後、もう一度変身してヘルメットでトレーラーと運転手を調べた。


『トレーラーは間違いなく合体ロボの一部分。だけど乗ってたのは素人……。どういう事……』


 トレーラーの無線から声が聞こえる。


『おい、どうした! なんかあったのか?』


 彼女は無線を無視してトレーラーを更に調べた。乗り込んでみれば、内部は明らかに自動車の運転席では無かった。

 運転席にはハンドルの代わりに二本のレバー。そしてタッチパネルのディスプレイ。起動している状態ならば、認証も必要は無い。ピンクはタッチパネルを操作して巨大ロボの機能を停止させた。


「もしもし、こちらピンク。とりあえず合体ロボの片足は確保。そっちはどう?」


 イエローと通信している途中、明治神宮にいる巨大ロボが残り一体になっている事に気が付いた。


「順調そうね。そのまま頑張って」


 ピンクはヘルメットの奥でニヤニヤと笑いながら明治神宮を眺めた。そして一転して表情を硬くしてトレーラーに乗っていた運転手と向き直る。

 地面に叩きつけられた痛みで動けなくなった運転手に声をかけた。


「話くらいは付き合ってくれるんだよね。じゃあ、全部吐いてもらおうかな。洗いざらい全部ね」


     ***


 黄色いゴリラが巨大ロボに襲いかかる。弾丸のように駆け抜けたイエローが巨大ロボの足にローリングソバット。そのまま高く跳躍して、腹部に跳び蹴り。

 そのイエローに対して腕を振り回して応戦する巨大ロボ。


「やっぱり俺一人じゃ厳しいゴリね……」


 ローラさんはまだノンビリと歩いている。その間にもイエローの奮闘は続く。巨大ロボの足に向かって前蹴り。だが巨大ロボは少し体勢を崩した程度で持ちこたえた。

 倒れない巨大ロボは体勢を大きく前に倒し、そしてイエローに手を伸ばす。その手を避けて更に追撃。

 それを興味深く眺めるローラさん。レッドの仲間であるイエローの実力を見てみたかった。それだけの理由で、堂々と戦闘から離れている。


『アイツも結構やるなあ……』


 イエローの奮闘をローラさんも思わず称賛していた。そのイエローに巨大ロボの手が迫る。


『そろそろ手伝ってやるか……』


 巨大ロボの振り回す手がイエローに直撃した。まるでビンタのようなその攻撃がイエローの身体に衝撃を与える。だがイエローはその衝撃を受けても踏みとどまった。

 トラックの衝突を思わせる衝撃を受けながら、イエローは巨大ロボの指を掴む。そこにローラさんもやって来た。ゴリセンを放り投げて、イエローと同様に巨大ロボの指を掴む。


「そんじゃ行くぞ!」


「おうっ、兄弟!」


『どっせいっ!』


 二人の声が重なる。思いっきり巨大ロボの指先を引っ張った。ただそれだけの事。だが、体格差のありすぎる巨大ロボに対する攻撃としては、明らかに規格外。

 それでもゴリラ二頭の怪力は規格外の攻撃を成立させる。二頭のゴリラによって十五メートルの巨大ロボが引きずり倒された。

 衝撃で巨大ロボの身体中のパーツが弾け飛ぶ。二頭が掴んでいた指も折れている。顔面から落ちる巨大ロボはなんとか片手をついて頭部のコックピットが地面に叩きつけられるのを回避した。

 そこに黄色いゴリラが飛びかかる。四つん這いの姿勢になっていた巨大ロボの頭部めがけてイエローのローリングソバットが炸裂。

 ひしゃげるコックピットの装甲。そして中から聞こえる悲鳴。そのまま巨大ロボは崩れ落ちた。


     ***


 明治神宮の騒乱は幕を閉じた。巨大ロボが崩れ落ちた衝撃と轟音は周囲のヒーローたちを戦慄させた。

 もう暴れ回る者など一人もいない。誰もが巨大ロボを倒した化け物と出会う事を恐れた。そして全員が逃げ出した。

 片足を失った合体ロボの上半身はそのまま北の空へと消えていった。


「じゃあ、俺らも帰るわ。面倒くさいから、後の事よろしくな」


「ああ、兄弟。また会おうゴリ」


「また会おう。今度は敵かもな。だが、それもお互いの魂が……」


「とりあえず病院行きたいっす。ヨシダさんがマジで限界っす」


「すいません、そろそろ幻覚が見えてきました。なんですかね、これ……」


「じゃあね、レッドちゃん。武器の事、私に任せておいて。ああ、運転なら私がするわ」


 こうしてゴリゴリ団は慌ただしく帰っていった。その後、レッドとイエローはピンクと合流して合体ロボに乗っていた男たちの尋問を始める。


     ***


「あー、そこの君。市街地での巨大化は禁止されてるんだよ。今すぐ元に戻りなさい」


 警察官に囲まれたミドリ君は、一人だけ明治神宮に放置されて泣いていた。

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