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8話「今、売りに行きます」

 レンシア魔術学院、大陸の僻地にあるどこの国家にも属さない学校。

 教育レベルは高く、各国の魔法騎士のほとんどがここの卒業生だという。

 ルーナさんもその一人だ。


 入学金さえ払えば何歳からでも入学ができ、入学金は一人金貨5枚。


 この異世界のお金は、銅貨100枚分で銀貨1枚、銀貨100枚分で金貨1枚。

 大体こんな感じだ。


 俺のお小遣い程度では到底足りない。

 ルーナさんは冒険者稼業でお金を貯めたという。


 冒険者・・・・・・俺に出来るだろうか。

 聞けば、試験に合格さえすれば誰でもなれ、年齢制限もない。

 あからさまに実力が無ければ門前払いだそうだが。

 また、家族や師が冒険者であれば、その見習いとして登録することも出来るらしい。

 こちらは試験は必要ない。


「ルーナさん、私は試験に合格できるでしょうか?」


 俺の質問にルーナさんは即答する。


「出来ます。ただし、試験を受けさせてもらえればの話です。」


 確かに、自分みたいな子供だと相手にもされないだろう。

 どうしたものかと首をひねって考える。

 するとルーナさんがそんな俺に口を開く。


「フフッ、助言をあげましょう。」

「お願いします、ルーナさん。」


 だがその助言はとんでもないものだった。


「まずは夕方ぐらいにギルドに行きなさい。仕事から戻ってきた冒険者が沢山いますからね。そして受付で登録申請、当然断られます。」


 ふむふむ、と頷く。

 ルーナさんが続ける。


「そうすれば酒癖の悪い冒険者が一人や二人、からかいに寄ってくるでしょう。そいつらをぶっ飛ばしてやりなさい。」


 唖然としてルーナさんを見つめる。


「私はそれで冒険者になりました。」


 そう言ってルーナさんは悪戯っぽく笑った。


「貴方も魔術学院を目指すのですね、アリス。」

「はい、姉と一緒に行こうと思います。時間は掛かりますが。」


 魔法を極めるなら行くべきだろう。

 もしかしたら皆が使っている”魔法”を使えない理由も分かるかもしれない。

 フィーだってどんな道を歩むにしろ、そんな学院を卒業すれば将来有利になるはずだ。


「フフフ、全く貴方は面白いわ。そうね、私も手伝いましょう。」


 そう言って、ルーナさんは俺の作った剣を抜く。


「貴方、これを売りに出す気は無いかしら?」

「それ・・・・・・土で作ったやつですよ?」


 言うなれば、ただの土の塊である。


「ええ、それでも欲しい人は大金を出すわ。二人分の入学金を払ってもお釣りが来るぐらいのね。」

「それは嬉しいのですが、私の事はあまり・・・・・・。」


 口外はしないで欲しい。

 確かに俺はチート的な魔力を持っているし、魔力操作で色んな事が出来る。

 だが、それだけ。

 身体能力も魔力で強化しなければ何処にでも居る、ただの幼女なのだ。


 魔法少女だって、変身しなければただの普通の女の子だろう?


「分かりました。貴女の事は秘密にします。どうしますか、アリス?」


 確かにお金は欲しい、それに元手はタダ、失敗したとしても在庫は土に戻せばいいだけで、痛手は無い。


「何本作ればいいですか?」

「そうね、20もあれば足りるでしょう。」


 1本銀貨50枚とかで売る気なのか?

 どんだけボる気なんだこの人。


「10本は貴方達が使っているもの、5本は私のと同じもの、あと5本は・・・・・・貴方がこっそり作っていたようなのがいいわ。」


 確かに実用性皆無の中二病全開のをたまに隠れて作っている。

 使った後は土に戻していたのだが、見られていたようだ。


 それから剣を作る作業に入った。

 ルーナさんに乗せられ、形の違う中二病全開の剣を20本、総計35本も作ってしまった。


「あとは・・・・・・そうね、貴方達の入学金を除いて、余った分から旅費を戴くわ。弟子から旅行の贈り物なんて嬉しいわね。」

「そ、それは構いませんが・・・・・・こんなので本当にお金が・・・・・・?」


 ルーナさんが口に手を当てて笑う。


「フフ、これでも顔は広いのよ、任せておきなさい。」


 ここまで言うのだ、信じてみよう。


「そんなに大金になるなら一つお願いがあります。」

「あら、何かしら?」


「入学金にはニーナさんの分も含めておいてください。」


 フィーも友達が一緒なら安心だろう。

 一瞬固まった後ルーナさんがガバっと抱きついてくる。


「ちょっ、ルーナさん!?」

「貴方という子は・・・・・・。より一層頑張らないといけないようですね・・・・・・。」


 それからしばらくの間、ルーナさんは解放してくれなかった。



 数日後、ルーナさんは剣を売るため、荷車を馬で引いて旅立って行った。

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