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1部 12芒星魔方陣 編  3章 争いの胎動 2話

 ビルの中に入る。

「先輩、これは・・・」

「誰かいる様ね、静かに」

 俺と藤井先輩は慎重に歩を進める。建設途中で放棄されたビルの中はコンクリートむき出しの殺風景な空間になっている。

「このビルは電気が通っているわね」

「それがどうかしたんですか?」

「電気が来ているって事はパソコンが使えるって事よ」

「それじゃあ、もしかして」

 俺は思わず大きな声を出しかけて息を呑んだ。

「マジックアロー・・・。とにかく用心をして、それとこの場所を通報して」

 俺はスマホから渡邊にメールを送り先に進んだ。

 2階のフロアにさしかかった所で話し声が聞こえる。少なくとも7~8人は居るだろう。

「先輩、どうするんでか?」

「私が職質するから、何か有ったら援護をお願い」

「良いんですか?先輩1人で?」

「何か有ったらよ、それに自惚れて居るわけでは無いけどレベル4のテレポーターで合気道3段よ、それにこれも有るしね」

 そう言って先輩は大きな胸に隠れたフォルスターのワルサーP99を見せながら言った。

「分かりました、くれぐれも無理をしないで下さい」

 いざとなったらチャフも拘束手錠もVP70も有る。

「分かってるわ」

 藤井先輩はそう言うと息を整えてからフロアを進む。俺はその後に付いて入り口で身を隠しH&K VP70を構え中を伺った。

「ブルーバンドよ、貴方達、そこで何をしているの?」

「はあ?ブルーバンド?」

 フロアの中に居た連中が先輩を睨む。

 藤井先輩は身構えるフリをしながら足を鳴らす。その音はモールス信号に成っている。 それによると当初、思ったよりも多く18人も居る。丁度VP70のマガジンに入っている弾数と同じだ。不良達は藤井先輩を見るやいなや数人の男達は笑った。

 ブルーバンドで使う弾は通常ゴム弾が実装されていて、当たっても死ぬ事は無い。そのマガジンを抜いて麻酔弾が装填されたマガジンを実装した。

「その舞藤のお嬢さんが俺達に何の用だ?楽しい事でもヤリに来たのか?」

 男が3人藤井先輩を前後から包囲した。

「生憎、私は貴方達の様にヤクに夢中な下品な男は趣味じゃ無くてね」

 藤井先輩の発言で俺は部屋の中を注視してみる。使用済みの注射器やアルコールランプが置いてある。何人かは薬物中毒なのかも知れない。

「そんなのはやってみれば判るさ」

 包囲していた内の1人が先輩の右肩を掴んだ途端に男がひっくり返った。

「私はブルーバンドよ、不審者相手に遅れを取る訳無いでしょ!」

 藤井先輩は合気道で男1人を瞬時に投げ飛ばしたと分かった。

「くそ!」

 投げ飛ばされた男は再び起き上がりさらに周りの男達4人程が同時に藤井先輩に飛びかかる。

「とぉぉーぅ!」

 先輩はかけ声と共にまず2人の右手を掴むと頭と足の位置がギャグマンガでバナナの皮を踏んで転けるみたいに綺麗に反転し背中から地面に叩きつけた。言葉足らずだがそうとしか言いようが無い程見事な技だった。

 藤井先輩はそのまま投げ飛ばした体勢からくるりと振り返り1人の右腕を左手で掴み体の反動で飛びかかっているもう1人の左腕を右手で掴み2人を手を前でクロスさせるモーションで投げ飛ばした。2人は3m程先へ飛ばされ壁に激突した。

 4人は投げ飛ばされたと同時に肩の関節を外されたらしく痛そうにもがいている。

「野郎!」

 それを見ていた残りの連中の7人がスマホを操作している。やっぱりこいつらデジタル魔術師か?さらに3人がナイフを持って構えた。

 俺は壁の影からスマホを操作している男1人に狙いを定める。

 先輩の右後ろでスマホを持っていた男がステッキを取り出すとそのステッキが銃の形に変形していくのを見た。俺から見て正面になる男は最初に狙いを定めていた男からその男に狙いを定め直して引き金を引く瞬間、男の前に藤井先輩が突然現れた。

 そして、藤井先輩は銃を持った男に気付いて右側面にテレポートし右腕を掴んだ。男は痛そうに顔をゆがめ銃を落とした。銃はまたステッキに戻り床に落ちると同時に投げ飛ばした。

「がはぁ!」

 男は肩右肩から床にたたきつけられそのまま気絶した。

 だがその間にも別の男が地面を叩く動作をした。床があっと言う間に氷り近くに有った椅子や連中が使っていたと思われるボールがたちまち氷り着いた。一部では氷りが下から氷柱ができ鋭利な槍が幾つも先輩を襲ってくる。

 藤井先輩に襲いかかる氷りは先輩の右足部分に到達した所で飛び上がろうとしたが既に靴が氷り着いている。先輩は右の靴を脱ぎ捨てそのまま空中に飛び上がった。

「貰った!」

 さらに別の男の左腕を振り回すと幾つもの風の刃が先輩を斬りつける。しかし、先輩に刃先が届く直前のタイミングで風の刃を放った男の後ろにテレポートし男の首に腕を掛け一本背負いの様に投げ飛ばすと男は失神した。

 氷りを放った男の後ろ肩の辺りに先輩はテレポートし、右膝で男の首根っこをはさみ捻るような動作で男を投げ飛ばし再びテレポートでその場から消えた。

「そこまでよ、これ以上やるなら公務執行妨害で逮捕するわよ」

 気が付くと、戦意を失った男3人と女7人を前に藤井先輩はワルサーP99を構え立っていた。

 俺は隠れていた壁から先輩の居るフロアに銃を構えたまま出て先輩に声を掛ける。

「初めて見ました。先輩の戦っている所」

「そう?それより公務執行妨害で逮捕よ!本部に連絡して頂戴」

「あ、はい」

 藤井先輩はあっけらかんとした表情で言った。俺は慌てて学研警備隊へ通報をした。


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