1部 12芒星魔方陣 編 2章 デジタル魔法の本領 3話
マンションに帰ると綾香が俺の部屋のベッドに寝転がっていた。
「あれ、居たんだ」
「ゆーうーきー」
綾香はごろんと寝返りを打つと四つん這いになった後座り込み俺を睨み付けた。
「どうしたのかな?綾香さん」
「裕貴、もしかして私に隠し事してない?」
「隠し事って?」
鞄を部屋の入り口の教科書が入っている本棚の側に置いて部屋の中央に進むと。
「有るでしょー」
女の勘とは恐ろしい物だ。俺が風紀員だと言う事が渡邊がブルーバンドだとばれた事で芋づる式にばれたのか?
「何言ってんだ。お前は」
ずいずいと近づいてくる。俺はその上目遣いの視線に我慢出来ずに逸らしてしまった。
それともう一つの理由はグレーのタンクトップを着ていてその角度だと胸元が見えそうでつい。
「ほら、怪しい」
「そうじゃなくて、おま、見えそう・・・」
「へ?」
仰け反る俺の様子と言葉に綾香は我に返り自分の胸元を見下ろす。
「きゃっ、どこ見てんのよ!」
胸元を両手で覆うと俺の体が宙に浮いた。
「おわ!」
綾香は後ろを向いて屈んでいる。
「とにかく、下ろせって悪かったから」
不可抗力だ!俺は悪く無い!と思いつつもこの宙に浮いて手足を伸ばしても壁も床も天井にも届かない今の状況だとどうする事も出来ない。
「もう、裕貴のアホー」
そう言って部屋から飛び出した。その途端に体は重力と取り戻し床に落ちた。
「今日の俺、厄日?」
俺は床に這いつくばったままの状態でぽつりと呟いた。