満月の夜
厨二なノリで書こうと思っているのですが、R15とR18の線引きとかがよくわからないので、探り探りの描写で進めようと思っています。
金髪の少女が、傘を用い、夜風に揺蕩いながらゆっくりと落下して行く。
風が定まってくれず、最後は自らの力で着地点に降り立ち、上品な手つきで傘を閉じた。
夜の静かな風が木々を揺らす森の中、少女の眼前には、凄惨な光景が広がっていた。
そこでは、一人の少年が、赤い欠片を積み上げながら、ブツブツとうわ言のように地蔵和讃を唄っていた。
金髪の少女はその光景を、冷めた目で見下ろしながら、少年に話し掛けた。
「ヤイトくん、やりすぎだよ。片付けが大変だ」
ヤイトと呼ばれた少年は振り返り、涙を流しながら答える。
「だってさぁ。エリス、僕がさぁ、ミカちゃんをさぁ」
ヤイトは錯乱に陥り、一時的に退行している様子であった。金髪の少女、エリスは、ヤイトの背を擦ってやると、優しく語りかける様に言った。
「でも、気持ちよかったでしょ?」
「うんっ、」
ヤイトは、ひっく、ひっく、と泣きながら答えると、袖で涙を拭った。
「ほら、とりあえず、片付けよう。袋持って来たからさ。立って?」
エリスに促され、ヤイトは前屈みになりながら、立ち上がった。
「何を今更恥ずかしがってんのさ。胸張って」
エリスが背中をポン、と叩く。ヤイトは胸を張り、何も言わずに、赤い欠片を袋へと入れはじめた。
欠片を入れ終えると、二人は黙々と、現場に土を被せる。
「うん、だいぶマシかな?」
汗を拭いながら言うと、エリスはヤイトの顔を見遣り、にやりと笑った。
「ヤイトくん。もう少し綺麗に飲まなきゃね」
エリスは背伸びをしてヤイトに顔を近付けると、口の周りに付いていた血を、舌で綺麗に舐めとった。
「うん。彼女は、B型かな?」
悪戯っぽく笑うエリスがひどく妖艶に見えたヤイトは、照れ隠しに空を見上げた。
ヤイトは空に浮かぶ大きな満月に得体の知れない高揚を覚えながら、自分の世界が大きく変わってしまったのだな、と感じていた。