第6話-22 代理救済プロトコル 13 - 死後の世界と咎人のノブレス・オブリージュ
あれから月日が流れ、暦が新たな年を刻みはじめるようになっても、私は過去に戻ることはありませんでした。
こんなに長く、彼の死後の世界に留まるのは初めてだったのです。なにが起点になって、過去に戻るのか。今となっては分かりません。
私とエクソアをこの世界に残したまま、時間だけが進んでいくのです。
私は迎賓館の敷地の中なら、移動は自由にさせてもらえました。しかし迎賓館の外に出ることだけは禁じられました。
敷地から出られなくなったのは、ブロウルさんも、ガルさんも同じでした。
私たちは、墜落事故の調査結果が出るまで、ここ迎賓館に留まるように言われたのです。
外部との手紙のやりとりも控えるよう言われましたが、身寄りのない私には関係のない話です。
誰も、私を心配しません。誰も、私に手紙なんか送ってきません。
グレアさんとクラリさんの葬式は、事故後間もなく執り行われましたが、私たちは葬儀に参列させてもらえませんでした。
彼女らの救いは、異界からの賓客という前例のない状況で、コウさんのために、ナクルのために、国のために仕えて亡くなったことでしょうか。
領主ベルゲン様のご厚意によって、本来であれば防衛軍のための集団墓地の一角に、異例ながらその名を碑に刻む栄誉を得られたそうです。
ただ、グレアさんと特に仲の良かったメルさん。私の担当だった給仕の女性は、グレアさんの死に特にひどく取り乱して、しばらくの暇をとることになりました。
それで、私の世話はセイレンという女性が担当することになりました。物静かで、とても丁寧な方でした。彼女もまた、グレアさんとも面識がある方で、ほんの短い間だけ、コウさんのお世話もしていたそうです。
コウさんの葬儀は、少し混乱しました。前例がないなか、どう対応すれば良いのか混乱したのです。
神都の政務院本部に照会をして、返答を受けるまでの数週間ないし数ヶ月を悠長に待てるような事態ではありません。
ナクルの政務院で独自に対応しないと、コウさんの遺体が間に合わなかったのです。
その混乱っぷりは、ナクルの政務院が、異界での葬儀方法について何か聞いていないかと私たちに尋ねてくるほどでした。
さらにコウさんの死が、異界からの災いを招くなんて風説まで流れて、防衛軍が異界からの襲来に備えて厳戒態勢を敷くまでに至りました。
ダメだったら、骨は拾っといてくれ。
彼が呟いたこの一言が、まさか葬儀の方法を決める重要な手がかりになるとは思いもしませんでした。
ブロウルさんは、コウさんが元いた場所は海に囲まれて水の豊富な地域だったと聞いていました。
工業ギルドは、コウさんがあまり争いを好まない性格だと言っていたこと、飛行艇計画の中で、自然環境を気に掛けるような発言を耳にしていました。
それらが、この葬儀の方法が文化的に妥当かを推し量る決め手になりました。
つまり、コウさんの遺体を池の中に沈めて、骨になったところを拾うことになったのです。
「おそらく、自然に還元される方式が異界の葬儀方法で、これはその一形態として妥当だと考えられる」
証言を集めて推定した学者の意見でした。
それで、三週間近く経ってようやく、葬儀が行われたのです。
領主ベルゲン様をはじめ、工業ギルドの人々、政務院、個人的に関係のあった人々、観衆などが参列して、大々的に行われました。
迎賓館に軟禁されていた私たちも、その葬儀だけは監視付きで参列させてもらうことが許されました。
雨季のなか、棺の中で三週間待たされた彼の臭いは、遠くからでも分かるほどになってしまいましたが、それでもコウさんが彼の文化に従って弔えたことは、幸せなことだと思います。
コウさんの墓は、私たちのいる迎賓館の敷地の一角に暫定的に置かれました。
ここはレムノア王国の国有地で、ナクルの領主が管理している土地――つまりナクルの所領よりも格上だから、だそうです。
「…………。」
エクソアは、エントランスに降りる階段をゆっくり降りながら、手すり越しに、エントランスの広場に置かれたままの「わだち」を見下ろします。
荷台の上には、小舟や浮き輪が乱雑に転がっています。
事故当時のまま月日が流れ、荷台の上にはうっすらと灰色の埃が積もっていました。
コツ、コツと階段を降りる音が響きます。
私の身体は、依然としてエクソアのもので、私はエクソアの視界や五感を通して、コウさん、グレアさん、クラリさんがいなくなった、死後の世界を観測し続けていました。
階段を降りきって、わだちの前を通ります。コウさんの遺品でもあるわだち。運転席にも埃が積もっています。
鈍色に輝いていた鉄の金具の輝きも今は曇り、赤錆が覆っていました。
コウさんが飛行艇を作っていた日々。毎日のように工業ギルドへ駆けていたわだち。あの事故以来動くこともなく、誰からも手入れされることもなく、ここで置物のように静かに朽ちようとしていました。
エクソアは、エントランスの扉を開けて外に出ます。
ひゅう、と風が横から吹きつけて、庭園の草木がざわざわと揺れる景色が目に入ります。
日はまだありましたが、少し傾き、弱くなりはじめていました。夕方になる、その二歩手前の時間です。
まだ青々とした色の湿った葉が、風に流されて足元を滑って、飛ばされていきます。
裏手に回って、広い芝生の中に生える、一本の木へ向かいます。
そこが、コウさんがいる場所――遺骨を埋めた場所。みんなで神都へ行くための、体力作りをしていた場所です。
コウさんがその場所で満足しているかどうかは、分かりません。懐は広い人でしたが、同時に案外、文句も多い人でしたから。
"野晒しとかマジかよ。死んだからって、衣食住全部取り上げるのは非人道的だと思うんだが。いや俺人間やめちまったんだけどな?"
彼なら言いそうな気がします。
いえ。
"できる限りのことをしたつもりだった――みんな道連れにしちまって、本当にすまねぇ。俺もうどう償えばいいか分かんねぇ――"
あれだけ不安を口にしていた彼です。きっとこの言葉の方が先でしょう。
「…………。」
だからこそ。
エクソアがコウさんの墓に向かうのは、私がエクソアに、数ヶ月ぶりに語りかけて、そうお願いしたからでした。
"飛行船舶タノン号 墜落事故調査報告書"
政務院本部が発行したその報告書。私は報告書の写しを得ることを許されました。
コウさん、グレアさん、クラリさんの三名に、住民六名、併せて死者九名。
報告書には書かれていませんでしたが、添えられていた資料に、被害者の詳細が書かれていました。あの子供のお母さんも、倒れて呻き声を上げていたあの男の人も、六名に含まれていました。
詳細な報告書のその写しは、コウさんを直接咎めませんでした。調査官にあれだけ言われた私でさえ、咎められることはありませんでした。
それから。私が証言を求められたあのとき、無愛想な書記官が私にした約束は、報告書の形で確かに果たされていました。
「発航準備に立ち会った者」として記載されていた私の証言は、曖昧な点こそ切り落とされていましたが、確かに私がした証言そのものでした。
「事故は避けられたかもしれないが、仕方がなかったかもしれない」
報告書の結論も歯切れの悪いものでした。結局分かりません、と有耶無耶にしたような結論です。単純明快に、快刀乱麻を断つとはいかなかったのです。
とはいえ。この国が、この世界が結論を出したのには違いありません。
少なくとも、コウさん一人の責任ではないと結論づけたのは確実です。みんなが少しずつ、罪を背負っていると、報告書は結論づけたのです。
コウさんはこの報告書が出たことをまだ知らないから。
あの日、コックピットで独り戦っていたように、ずっと自分を責め続けているかもしれないから。
コウさんに伝えないと、いつまで経っても心安まらないだろうから。
もはや、私にはコウさんをどうにも出来ません。
飛行艇のことは何も分からなかったけど、思いつく限りのことをしました。私はエクソアといくつもの時間軸を渡って、頭を使いました。身体も張りました。それでもコウさんを救えなかった。
何度も夢に出て、何度もどうすれば良かったのかと、答えの出ない問いが私の意識のなかを巡り続けたのです。
結局私に出来ることは、こんなことしか残されていないけれど。
私はその報告書を小さな木箱に収めて、彼の遺骨の脇に埋めようと思ったのです。
彼に、謝りに行こうと思ったのです。助けてあげられなくて、ごめんなさい、と。
「なんだ、お前さんも来たのか」
足元を見て歩いていたエクソア。私の歩き方のクセでした。
エクソアが老いたその声に顔を上げると、コウさんの墓に先客がいました。
ガルさんでした。ブロウルさんも一緒です。
「リンちゃん、お前も考えること一緒かよ」
ブロウルさんが私に向かって言います。奇遇にも、彼も同じように報告書の写しを埋めようとしていたのです。
私達は明日に、迎賓館を去ることになっていました。
報告書が出て、私達に掛けられていた嫌疑は晴れて、神都に行く理由もなくなったのです。
迎賓館から解放されて、みんながそれぞれの道を歩むのです。みんな、といっても私と、ブロウルさんと、ガルさんの三人だけですけど。
迎賓館は、領主様の預かる土地です。気軽に立ち入れるところではありません。
ですから迎賓館を一度出たら、そこに眠るコウさんの墓前に立つことは、もう二度と叶わないのです。
「二部もいらねぇよな、ボス」
「じゃあコイツは、グレアとクラリの墓前に持ってくかねぇ。あの嬢ちゃん達も、結局どうなったか興味あんだろ」
私達はブロウルさんの一声で、コウさんの墓には、私が持ってきた報告書を、小箱ごと埋めることにしました。
二人が持ってきた写しは、明日、三人で迎賓館を発ったら、その足で二人が埋葬されている集団墓地へ向かうことになったのでした。
私とブロウルさんで、コウさんの墓の隣に穴を手で掘ります。
迎賓館――政務院の人には、あらかじめ言って許しをもらったとはいえ、整った芝をひっくり返すのは、少し心が痛みました。
「しょうがねぇなぁ……」
ガルさんは、私とブロウルさんが手間取っているのを見かねて、しゃがみこんで加勢します。
三人とも、土を掘り返すための道具を持っていなかったのです。みんなで、爪の間に土を挟みながら、穴を掘って、小さな木箱をひとつ、埋めました。
「うしっ、報告完了っと」
ブロウルさんが埋め戻した土を、報告書を埋めたその上を、踏みつけていいます。
「手掘りで腰をやるかと思ったぜ――ブロウルさんよぉ、次からは道具持ってこい。道具」
「んなことに、次があってたまるかよ。腰が怖くて傭兵なんかやってんじゃねえよジジイ」
「まあ違いねぇ」
三人して、土だらけの両手を叩きながら、木を見上げます。
まだ、横に伸びる太い幹に2本の縄が垂れ、その下端に二つの木製の輪がありました。
ブロウルさんが、みんながここで体力作りをするために用意したものが、そのまま残っているのです。
「アイツ、懸垂三回しか出来なかったんだっけ?」
ブロウルさんはそう言いながら、木の輪っかに手を掛けて、ぶら下がって懸垂を始めます。
みんながいた頃、まだ黄金色だった縄は、ずっと野晒しになって、色褪せた灰色に風化しはじめていました。
「コウなら、頑張って五回まで伸ばしてなかったかね?」
「え、そうだっけ、リンちゃん?」
「ええ。五回までできたことを、すごく誇らしげにしていたの思い出しましたよ」
エクソアは、生前の私の記憶を使って、そう答えました。
あー思い出したわ。ブロウルは懸垂をやめて、手を放して地面に着地します。
「『死因、懸垂三回』ってボス自ら笑いにしてたのが懐かしくなるな」
「『ここに骨を埋めるってこたぁ、なんだ、死んでもここで体力作りしろってことか? 身体ないのにか? 神都にゃ行かねぇぞ?』ぐらい言ってそうだな」
ブロウルさんとガルさんが、軽口を言って、控えめに笑います。
グレアさんが昔、私達と身体のつくりが少し違うようで、見た目以上に身体が重いいから仕方ないのだ、とコウさんの肩を持っていたことを思い出します。
私達と使う言葉も、価値観も似ているけれども、異界の人なんだなと思ったのを、私も覚えています。
「明日、最後発つ前にまた来るかね。おめぇらはどうする。来るか?」
「はい」
「行く。最後コウに別れの挨拶。その一回でマジで終わりだな」
いい奴だった、とガルが短く締めます。
飛行艇に乗りこんだときが、生前最後の別れでした。そして明日が、コウさんの墓前に立てる最後の機会。二度目の、永遠の別れの挨拶をする機会。
行かないなどと、誰が答えられるでしょう。
「――ガル爺とリンちゃんは、これからどうするんだ?」
「俺ぁまた別の仕事を探す。隠居が遠のいちまった」
「リンちゃんは?」
「私は……たぶん、家に帰ると思います」
エクソアは、自信なさげに言います。家。この街、ナクルの構えた家。初めて会ったコウさんを、ひとまず連れてきたあの家でした。
迎賓館を去ったあと、どうするかなんて考えていませんでした。エクソアも、同じだったようです。
帰ってから考える。本当は前々から計画を練って、色々と準備をしておくべきだったのかもしれません。
「おめぇ、家に帰るつったってな――こんだけ長い間家を空けてりゃ、誰が住みついてるか分かったもんじゃねぇぞ?」
「そう、ですね……」
ガルさんがそんなことを言いました。
気づきませんでした。確かに、いくら施錠していたとはいえ、街中でこれだけ家を留守にしていれば、空き家と思われて誰かが忍び入ったり、雨風の凌げる場所を求めて、既に誰かが住み着いていても、おかしくありません。
「じゃあさ、リンちゃん。俺もしばらく居候させてくんね? 家の大掃除は手伝うし、俺でよければ、多少の流血沙汰だって気にしない。財産ないなら俺がいくらか日銭くらいは稼いでくるしさ」
「…………。」
"いいですよ、って答えてください"
「いいですよ。ブロウルさんも、ガルさんも、私の小さな家でよければ、少しだけ一緒に」
「リンちゃんマジ助かる」
「……考えとく」
そこで、ひとしきり会話が途切れます。
夕暮れ一歩手前まで迫った景色と、徐々に強まる風の音。ひゅるひゅると一息に駆け抜けて、彼の眠る木の葉をざわつかせます。
「――――。」
ガルさんは、いつものように葉巻に火をつけます。
ブロウルさんは、ぼんやりと木に垂れ下がった縄を眺めていました。
「――俺さ、ここの妙なメンツがすげえ好きだったんだよ。エルベシアに、古族に、ガラスの女王に、異界人に、俺。あとジジイ」
「ジジイはオマケかよ、おい」
「みんなクセ強いのに、一体感あるというか。格付けみたいなのがなくて、俺のありのままで居られる場所だったのが心地よくてさ」
「――なのに、どうして死んじまったかなあ……死んだら元も子もねぇじゃんよ……」
「ガル爺……俺、あん時どうしてやれば良かったんだ? あの現場で俺の動きが少しでも違っていたら、誰かは助けられたんじゃねぇかって。今でもときどき夢に見るんだ」
揺れる彼の短い髪。
見上げたままの彼の顔から、一筋が伝って、そこに夕日が輝くのを見ました。
私と歳はさほど変わらないはずなのに。私とブロウルさんの間にあるこの大きな差。いったい、どこで違えたのでしょう。
ガルは紫煙を一息吐いて、風に乗せて薄めます。
「さぁな。過ぎたことをガタガタ抜かしたところで、どうにもならねぇ話だ。前を見ろ」
ついでだ。傭兵なんてロクでもない仕事は金輪際辞めちまえ。お前にゃもっと良い生き方がある。
ガルさんがそう続けるのを、ブロウルさんは黙って聞いていました。
「あいつは――コウは『引く』ことを知らなかったのかもしれねぇ。あんだけ飛行艇の動きが鈍けりゃ、どっかであいつも不安を感じたはずだ」
「『引く』ってのは『引き返す』ってことだ」
「…………。」
「アイツは、引かなかった――いや、『引くに引けなかった』のかもしれん。あれだけ大勢に囲まれて声援を送られる中での引く決断は、そう易々とはできまい」
俺がコウと同じ歳なら、あいつと同じく俺も土の下だったろうよ。
ガルさんはそう言って、ひっくり返したばかりの土に目線を落として、靴先で何度も軽く踏みしめます。
「だがそれが、あの場で必要とされた決断だったと、俺は思うがね――今となっては結果論だが」
「…………。」
"もし私が、あの日の桟橋に帰りたいと言ったら……私は、戻れるのでしょうか?"
ガルさんは、結果論だと言いました。
あの日、私は諦めました。それからこれだけの長い時間が経っているのです。もはやその道は時効になって、とうに閉ざされているに違いありません。でなければ、私はとうにあの日へ戻っているはずなのです。
エクソアは我関せずといった風で、右耳のかかった髪を、まだ汚れの少ない手の甲でかき上げて汗を拭います。
「――新しい職つったってなぁ、工業ギルドに入るとか?」
「顔は利くだろうが、工業ギルドの連中も、あれから異界の技術で何か作ろうって気はなさそうだしなぁ――」
しかしもし私が、あの日の桟橋に戻って、コウさんに引くことを教えられたのだとしたら、未来は変わるでしょうか。ふと、そんなことを思っただけでした。
……や、ちょっとまって。
全身を鳥肌が立つような感覚が駆け抜けます。
右耳の髪をかき上げる――それは昔、私が決めた「はい」と答えるときの動きでは。うそでしょ。
"え、まって。本当に戻れるの?"
私の身体は頭を揺らすと再び右耳をかき上げます。え、本当に?
エクソアは私の決めた返答の取り決めを、何ヶ月も、ずっと覚えていたのです。
私は、時間を戻されるその神罰を、神使様の力によるものだと思っていました。だからこそ、神使様にもう助けないと誓ったあの瞬間に、時間は戻らなくなったのだと、思ったのです。
ところが、時間を戻るかどうかの判断をしていたのは、そのじつエクソアだったのです。
ならば。
ガルさん、ブロウルさんにとっては結果論でも。私なら、伝えに行ける。
たとえそれが、不完全だとしても。
"もう一度、あの日へ戻してくれませんか"
――はい。
右耳の髪をかきあげるエクソア。
どうしてエクソアは、この世界を私に見せたのでしょう。これまでは、私の意思なんて関係なく、戻されていたはずなのに。
私の傷を癒やすため? 諦めた未来の結末を見せるため? あるいは、私に束の間の休息を与えるため?
分かりません。エクソアはきっと答えてくれないでしょう。
けれど。
私にはエクソアが、私のすぐそばで、静かに、ずっと待ってくれたように思えたのです。
私が、もう一度立ち上がれるように。
リンネ・エルベシアは諦めない――いちど手放した私の誓いを、再び胸に抱けるように。
ありがとう、エクソア。
さようなら、エクソア。
あなたの記憶を連れて、過去には戻れないけど。
新しい時間軸の世界のあなたと、全てを忘れたあなたと、もう一度。
また、失敗するかもしれない。
また、みんなを巻き込むかもしれない。
また、心ないことを言われるかもしれない。
けれども、戻りましょう。
ガルさんの言葉を伝える代理として。
ブロウルさんの思いを伝える代理として。
私が果たせなかった神託の代わりとして。
帰りましょう。
三人を、みんなの幸せを、取り返しに。
あの事故で失われたすべての命を取り返しに。
救済しましょう。
神使様の罰を、エクソアの力を、お借りして。
みんなの代わりに。
過去に戻って、もう一度。
大切なことを、伝えに。
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代 理 救 済 プ ロ ト コ ル
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