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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
Lost-311- PartA

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120/243

第5話-A24 Lost-311- タイムアウト

******


「……プログラムの検証が終わった」


「じゃあ後は本番……かあ。

 特殊な環境でもちゃんと機能してくれるかな……」


「……システム構造が予測できない以上……動作保障は出来ない。

 それ以前に……到着前にファイヤーウォールやエラーで消滅する……可能性も、ある」


「到着しても、コード復元をしてもらえるかも分からない――

 やっぱり確率は……」


「……ゼロに非常に近い。

 そもそもこの計画自体……仮定条件が多く……不確実。

 “Jamie”の……痕跡をある程度辿るとはいえど……痕跡自体も少ない。

 そのうえ……実行はこちらの技術情報を漏らすに等しい。

 このことを踏まえ……私は……計画中止を提案する」


******




……で、本を買ったまではいい。

問題なのは店を出た時には空が真っ暗になっていたということだ。

それはどういうことかというと、食料品店のほとんどは既に売り切れ、

店じまいを始めているところだということだ。

哀しいかな食料保存技術が未発達であるが故に、

店もその日売る分しか仕入れない。

卸問屋は独自開発の食料保存設備を持ってるらしいが――

一般客には売ってくれないそうだ。



「こりゃ参ったな……」



明かりの灯った通りをあてもなく歩く俺。

どうにかして今日の晩飯を手に入れねえと、俺の腹が持たねえ。

とりあえずダメ元で近くにある食料品店に飛び込んでみる。



「あの……すみません」


「あ、悪いねえお兄ちゃん、今日分は売り切れだ」



俺に背を向けて売れ残った品物を整理している、

二十代ぐらいの若い店主らしき男に声をかけると、振り返りもせず即答された。

いや、こうなることは最初から分かってたんだが……



「売れ残ったやつでいいので何か売ってくれないっすかね?」


「売れ残りつっても果物ぐらい、しか…ない……ぞ?」



男は振り返って俺を見ると、驚き入った顔をする。

ん? 何かあったのか?

俺も振り返って後方をみると、見たこともない巨大な怪物が――!

ということもなく、何もなかった。

通りは日が暮れてもまだ人通りは多く、俺の目に映るのは流れていく人だけだった。

うん。普通に。



「噂をすればなんとやら、まさか時の人がご来店なさるとは」



店主はまじまじと俺を観察するように視線をあちこちにやりながら近づいてくる。



「時の人……? 誰かと間違えてるんじゃないっすか?」


「いやいや、こんな目立つ外見だからな……羽無し、うん、間違いない」



店主は俺の背中を見て大きく頷いた。



「連続誘拐犯を単独で締め上げたんだって?

 そんな大手柄な話、噂にならない方がおかしいってもんだ」


「…………。」


「それに、締め上げた理由が連れの女の子が誘拐されそうになったかららしいじゃないか!

 実際のところ、そうなのかい?」


「連れの女の子というより、俺の雇い主兼大家っすけど……」


「なんだ、付き合ってないのか?

 でもあれだな、そんな勇敢な男と結婚すりゃあ、

 (女の子からすれば)一生安全が保障されたようなもんだ。

 女の子の両親も安心して嫁に出せるだろう。

 あー、俺も彼女にそういうカッコイイところを見せ付けてやりたい……」


「はは……そうすか……」



俺の噂が広がっているという情報が得られたのはいいが、

なんかこの店主のスイッチが入っちまったらしく、俺そっちのけでもう喋る喋る。

とりあえずリンの家族は既に災害で他界している件については、

訂正するとまた話が長くなりそうなので黙っておこう。



「――で、どんな剣術使って相手を倒したのか、そこがずっと気になってるんだ。

 師匠は誰? 噂じゃグランの弟子だと聞いたが、やっぱグランは厳しいのか?」


「いや、剣術とかそんな大した技は持ってないですし、師匠もいないっすよ?」



グランって誰だよ、こっちが聞きたい。



「へえ、じゃあどうやって複数相手に挑んだんだ?」


「ゲリラ戦法みたいな感じっすかね」


「げりら?」



あー、ゲリラって言葉がこの世界にはないのか……説明すんのだるいな。

こっちは早く晩飯にありつきたいってのに。

イラツキからか、足が少し震えているのだが、店主は気がついてない様子。

とりあえず相手方の聞きたいことはさっさと答えて、この場から離れよう。



「背後から不意打ちで一人ずつ倒していくんすよ。

 一人倒したらすぐに身を隠して、相手に隙が出来たらそこでまた一人倒して身を隠す」


「なるほど、一人ずつ背後から斬っていくと……」


「いや、俺、人を攻撃するとかそういうのは嫌いなんで、

 背後から睡眠薬を注射しただけっす。

 途中、剣を抜く事態になってしまったんですけど、

 最後は殺さずに注射で仕留めました」


「なるほど、注射とはなかなかの策士だな。

 この話は知り合いの警邏隊員から聞いたんだが、

 お前さん、今度その件で表彰されるかもしれないんだとさ。知ってたか?」


「表彰……? いや、何にも聞いてないっすけど」


「そうか、なら早いうちから晴れ着を注文しておいた方がいいぞ。

 羽無しの兄ちゃんの服となれば特注で時間がかかるだろうし。

 ところで、兄ちゃんは出身はどこだい? あまり見ない顔つきだけど」


「それは俺も知りたいっすよ」


「えっ、それは……どういうこと?」


「気がついたら砂漠に倒れていて、

 そこを偶然通り掛かったリンに助けられたこと以前のことは全く覚えてないんすよ」


「つまり、記憶喪失?」


「恐らく」



店主は「そうか……」と同情するように顔を暗くした。

出身はどこと聞かれて一瞬焦ったが、

記憶喪失だということでなんとか質問をかわせた。

この店主は噂好きっぽいし、

俺が記憶喪失だと言ったことを他言することはほぼ間違いない。

話のつじつまを合わせるためにも、これからは質問されたらそういう設定でいこう。

神使さんよ、これでオッケーだよな?



「それにしても、いや、別に疑ってるわけじゃないんだが、

 誘拐されそうになってるところをよく見つけたもんだな」


「夕方『買い物にいく』って言ったきり、深夜になっても帰って来なくて、

 これはおかしいと思って探しに出掛けたんすよ。

 探しに探して、もう諦めて帰ろうかという時に、

 偶然リンが飛んで逃げているのを見つけたんです。

 背後からは複数の影が追うのも見えて、瞬時にリンが危険だと思って。

 見ての通り、俺は飛べないんで、地上を駆けながら追跡して」


「なるほど、その女の子はリンって言うんだな?」


「ええ。それで、途中でリンが力尽きて墜落してしまって、

 墜ちた辺りを捜すと袋小路に逃げ込んだリンを見つけて――

 そっからはさっき話したことがあって」


「注射でげりらしたんだな?」



店主のゲリラの発音が変で笑いそうになってしまったが、なんとか堪える。

ていうか「ゲリラする」って変に動詞化すんな、笑っちまうだろうが!

いかんいかん、ツボに嵌まった、考えるだけで笑っちまう!



「ええ……ゲリラし、ました」


「……なんか俺、面白いこと言ったか? 顔がにやけてる」


「いや……フフッ、こっちの話っす」



店主は怪訝そうに俺を見つめる。



「そうか?

 それはまあいいとして、そのリンって女の子、夕方に買い物に出掛けたんだよな?

 ていうことは、夕方から深夜までずっと逃げてたってことか」


「え? まあ、そうなります……ね」


「女の子だから体力的にも不利なはずなのに、よくそんな長時間逃げられたものだ。

 しかも複数の男相手に、だろ?」


「言われてみれば、確かにそうですね」



確かに、複数相手となれば、ただ追い掛けるだけでなく、

挟み撃ちなどの作戦行動を取られることも考えられる。

それらをすべてかわし切るには、

飛べない俺には飛ぶにはどれだけ体力が要るか分からないが、

相当な体力がいるのはこの店主が言うのだから間違いないだろう。

店主は腕組みをして店の天井を見上げた。



「うーん、もしかしたらそのリンって子は――」


「もしかしたら、何ですか?」


「……いや、独り言だ、気にしないでくれ」


「余計気になるじゃないっすか」


「いやいや、本当に気にしないでくれ」



店主は真顔でこれはただの推測だから、と押し通して教えてくれなかった。



「で、今更だけど、うちに残ってる売り物って言ったら果物ぐらいしかないよ?」



急に話を変えられた。

どーしても教える気はないらしい。

まあ、ようやく本題に戻ってくれたわけだし、わざわざこの話を引きずる理由はない。

このまま本題に戻ってしまおう。


店主は俺が脇に抱えている本を見つけると、

ちょっとそれ見せてくれ、とそれを取り上げた。



「……なるほど、もしかして晩飯の材料を買いに来たのか?」


「ええ、ただ、買う以前にみんな店じまいしてしまってるので……」


「確かに、もうこんな時間じゃ、晩飯作りの材料はどこも売り切れで買えんだろうな。

 もう少し早く来ればなんとか買えたかもしれないが……」



そこで、タイミングがいいのか悪いのか、俺の腹がギュルル……と鳴った。

俺は恥ずかしくなって店主から視線を逸らす。



「……そういうことなら、円形広場に行ってこい。

 あそこなら露店が立ち並んでるし、そこで何か買えばいい。

 汚くてもうまい店が多いぞ」


「あ……はい、そうします。

 ……ありがとうございました」



俺は店主から本を返してもらい、半ば逃げるようにしてその店を去った。

畜生、なんで今日は何かと恥をかかなきゃならんのだ!

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