第2話:交差する拳、割れる信念
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「あなたが……ヒーロー、なのね」
そう言って現れたのは、艶やかな黒革のスーツを纏い、禍々しい爪のようなブレスレットを左腕につけた、謎の女――早乙女レナだった。
公園の広場。
夜。
街灯の下で、ふたりのブレスレットが静かに共鳴していた。
「あなたも……リンクしてる……?」
「ええ。でも、私は正義なんて信じない。これは“力”よ。ただそれだけ」
その声に、ひよりは息を呑んだ。
レナの視線は、ひよりを「同類」として見ていない。明らかに、敵を見る目だ。
> 《悪属性・ナイトメアクロウ:戦闘態勢へ移行》
《ヒーロー属性・ライトブレス:防衛反応発動》
ふたりのブレスレットが光を放ち、それぞれの姿へと変化していく。
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変身:ヒーロー「ライトフェザー」
純白と金の軽装アーマー。背には光の羽根。
変身:ヴィラン「ナイトメアクロウ」
黒い装甲に紫の棘、鋭利な爪と赤い目。
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「どうして……そんな目をするの?」
ひより(ライトフェザー)は、戦いを拒むように声をかけた。
だがレナ(ナイトメアクロウ)はすでに突撃してくる。
「黙って。信じたいなら勝手に信じなさい。でも――力を持つってことは、“奪う側”になるってことなのよ!」
鋭い爪が閃く。
ひよりは咄嗟に光の盾を展開し、間一髪で防ぐ。
その衝撃で後ろに吹き飛ばされ、土煙が舞う。
「うぅっ……っ!」
「なに甘いこと言ってるの。“ヒーロー”なんて幻想。あなたが存在したから、私は“悪”になった。それだけよ」
レナの叫びには、怒り以上に、苦しさが混じっていた。
そして、それはただの言葉ではなかった。
> 《警告:ヒーローリンク・同期値低下。人格侵食の兆候あり》
「……あたしは……“正義”なんて言えるほど、強くない……でも、それでも……!」
ひよりは立ち上がる。
「“誰かを守れる力”なら、使いたい。それが私にできることなら、逃げたくない……!」
ふたりのブレスレットが激しく脈打つ。
光と闇。
正義と悪。
それぞれの信念が、初めて衝突する――!
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▶ 次回予告:第3話「正義は、ひとつじゃない」
――戦いの果てに、ふたりは“ある共通の記憶”を目撃する。
レナが悪に染まった理由。
それは、ヒーローの不在によって生まれた、ひとつの絶望だった――。
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