第1話:目覚め、二つの光(後半)
「な、なんなの……あれ……!」
ひよりの目の前で、地面がひび割れ、闇の中から**人間の形をした“ナニカ”**が這い出してきた。
肌はひび割れ、目は光り、口元は人間のままだというのに、そこに理性は感じられない。
――怪人。
――いや、「敵」だと、どこかの本能が告げていた。
「わたし……いま、ヒーローなの……?」
「助けなきゃ……怖いけど……でも、これ、夢じゃないなら……!」
ひよりはおそるおそる、左手を前に出す。
するとブレスレットが淡く輝いた。
> 《武装展開:ライトアロー》
空中に、光の粒子が集まり、腕に沿って光の弓が出現した。
その瞬間、怪人が飛びかかってくる――!
「えいっ!」
無我夢中で光の矢を放つ。
矢は怪人の胸に直撃し、炸裂する。
「やった……? あ、あれ、やった……!」
怪人はうめき声をあげながら、黒い煙を残して崩れ落ちた。
そして、静寂が戻る。
その場に立ち尽くすひより。
ブレスレットの光が、すっと消えていく。
> 《リンク・一時解除。エネルギー安定中》
服が元に戻り、何事もなかったかのような日常の風景が広がった。
「……なにこれ、ほんとに、なに……?」
---
同時刻、別の場所。
ビルの屋上に立つ黒いシルエット。
ナイトメアクロウ=早乙女レナは、夜の街を見下ろしていた。
「“ヒーローが生まれれば、悪もまた現れる”……ふふ、聞いてた通りね」
彼女の背後で、闇から人型の影が現れる。
声を持たないそれに向かって、レナは微笑む。
「いいわ、遊んであげる……この世界の“正義”ってやつと」
風が吹く。
夜が深まる。
そして、運命は静かに、ふたりを引き寄せていく――。