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第97話 口移しに飲むウイスキー

 我が家で沙織との同棲が始まりつつあった。沙織は安寧を得て、私はアルコールと女体を手に入れた。アルコールに女体は付きものである。ただでさえ沙織はいい女であったし、乳房の膨らみは私のそれを刺激するには充分な艶を与えてくれた。これから始まる性的な処理には充分すぎるほどの肢体を得たのである。


 その晩も沙織は携帯電話をバッグから取り出して妹とのメールを始めた。文字だけの送受信だけでは収集が付かなくなると電話へと切り替えて怒鳴りあっている。


 おそらく沙織の癖なのだろう。どんな相手に対しても伝達手段は携帯電話に頼る。相手に会って対峙し、問題を解決させる勇気が持てなくなっていたのだと思う。


 「俺のいるところで携帯を使うな!」


怒りを込めて私は言い放った。


 「おまえとは一緒にいられない。コッチがおかしくなってしまう。明日の朝、病院に戻すから二度とここには戻ってこられない。」


 「遼ちゃん、おねがい、病院には戻さないで。おねがい、私のこと、好きにしていいから。病院だけは絶対にイヤ! マンションはもっとイヤ!」


 泣いて懇願する沙織に服を脱ぐように命じて、はだけていく衣服を見つめながら飲むアルコールは私の身体の奥深くを疼きながら染み込んでいった。


 なにも身にまとっていない沙織を裸体のまま立たせ、ジッと見つめて「沙織は明日、病院に戻りたくないのか?」と虐めるように聞く。


黙って頷くしかない沙織の目には涙が溢れていた。はだかのままで男の眼前に立たされている。


 「こっちにこいよ、キスしよう。」


 そう言って沙織を私の横に座らせて、腰に腕を回した。指先を沙織の美線に沿わせながら首を摩り、頭を抱き寄せて髪を手繰った。沙織の口の中にウイスキーを含ませておいて「自分で飲み込んじゃあダメだよ。」


そう言って顔を右に向けさせ、口移しに私の口の中にウイスキーを流し込ませた。


 「もう一度、口に含んで口移しで飲ませてくれ。」


 沙織は私の意のままに同じ行為を繰り返していく。


 「今度は沙織が飲むんだよ。」


 沙織に含ませたウイスキーを私の口から、さらに沙織の口に垂らし落としていく。何度も同じように口移しで飲み込んでいくと、お互いが酔いの中へ同時に入っていけるような錯覚に落ちていける。


寝転んでも口だけは含み合わせて液体の往復を繰り返す。やがて私の舌は沙織の下半身へと向かっていった。沙織はただ私の動きに合わせて身体を左右に、時に上下に動かして女の快楽を感じ取っていた。


 欲求という奴は底を知らない。


アルコールの底も見えないし、性欲も底がないようだ。


 沙織を三日の間、オモチャのように扱って楽しんでいたが彼女の『うつ病』は私の快楽の邪魔をしていた。私の性癖なのだろう。自分が快楽の絶頂に達する前に、女が先に気を狂わせるほど感じないと気が済まない。


うつは沙織の性的な欲求を決して満たすことをさせないし、感じ切って大声を上げる事もなかったから、私の快楽は充分な満足を得られるまでには至らなかった。


それでも出すものを出せば気が収まるのは男という生き物の(さが)なのだろう。


 夜はオモチャと化した沙織と戯れるのだが、日中は単なるうつ病の陰気な女になる。性欲を満たす二時間のためにあとの二十二時間を耐える事は容易ではなかった。


なぜネガティブな発想しかできないのか、理解ができない。当然の流れだが私にとって沙織は邪魔な存在になっていく。大体、私自身の欲求だけを満たすだけなら売ってくれる女体は巷にいくらでも転がっている。


 金なら幾らでもあるのだから沙織に固執する必要はない。


使っても湧いて出てくるように次から次へと金が入ってくる。


勤め人が病気で入院すると社会保険から疾病給付金がもらえる。病名がアルコール依存症でも権利はある。自分自身で働かなくても給料の60%が振り込まれてくる。おまけに入院共済が1日入院するだけで12000円ももらえた。


 さらに母の死亡保険金を分配型投資信託に預けていたので三ヶ月も入院すれば合計金額は100万円を突破するほどの現金が手に入ってきた。


 沙織はいらない。用済みだ。

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