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第74話 離婚成立

 酩酊の架空な時空を彷徨っているとある日、簡易書留が送られてきた。簡易書留は手渡し以外に受け取り方法が無いから玄関を開けた。差出人は埼玉県の某市にある弁護士からであった。


 平成◯◯年◯月◯日、午前二時二十分頃、桑名遼平が妻であるリミ及びその子、サラにおこなった暴力行為は傷害罪に相当すると思われる。翌、平成◯◯年◯月◯日、午前に◯◯病院、整形外科を受診し、カルテならびに外傷を証明しうる画像が存在する。当該、医療機関の医師からの連絡を受けて所轄である、県警察に一連の記載がある。意義ある場合はお電話でご連絡いただいた上で、ご来訪頂きたいが当該、被害者である桑名リミからの申し出により離婚の意思を確認しております。ご同意いただきたく書面にてご報告致しました。


なるほど、司法を使ってきたか。だったら負けずに司法でやり込めよう。相手側はこの文章から察するに、まだ家庭裁判所に訴えを提出していない。離婚調停を相手側から出される前に、私の方から司法へ訴えを起こす。


 全くもって矛盾した思考である。被害者と加害者を司法の場で、すり替えようと企んだ。


勝算はただひとつ、徹底的に調停を引き延ばして金銭を枯渇させる。それと同時に弁護士事務所に対しての嫌がらせを開始し、弁護を降ろさせる。


 まずは家庭裁判所に先手を打った。離婚調停ではなく婚姻関係の継続を図る名目で和解調停を提出し受理された。一ヶ月後には出廷日を示す日程表が届いたが、第1回目だけを出廷して、あとは病気による体調不良を理由に出廷しなかった。この欠席連絡を当日の調停時刻ギリギリに申し出る。すると相手側の弁護士は損失を被る事になる。


実際には計略的に欠席して、私は自宅でウイスキーを口元から垂れ流し、ほくそ笑んでいた。アルコールで逝かれ切っている頭脳が閃いた計略なんて自分の思い通りにいくはずがない。自らを不利にしていくだけである。


 毎晩、十九時になると嫌がらせの電話を弁護士事務所に掛ける。


「おい、ボンクラ弁護士に受話器を持たせろ。脳なし弁護士をさっさと電話口に出せ!」


 脅しを掛け続けたが相手はまったく怯まない、逆効果になっていった。私の母と我が子、勇太を証人として呼び出してきたのである。このふたりを呼び出す事で出廷を逃れることが出来なくなった。


退路がないならば真正面からやっつければ良い。そう思って出廷したが惨敗だった。口では私が負けてしまう。弁護士とのディベートに素人が勝てるはずがなかった。


 あっけなく、それにしては結果が出るまでに一年以上も掛かり離婚は成立した。条件は双方ともにひとつずつ。養育費用を月に4万円の振り込みでおこなうこと。我が子との面会はひと月に1回のみ。


 慰謝料を請求してこなかったのは最初に失踪した時に、私の母から手切れ金として200万円を受け取っていたからだった。これも母の通夜の時に知った。

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