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第27話 真由美

 真由美は私を受け入れてくれたあと、彼女自身の事を話し始めた。


真由美がスナック『愛』で働き始めたのは三月の下旬からで、まだ二ヶ月しか経っていないこと。それまでは養護施設の保母さんをしていたこと、そして年齢は39歳であり、私よりも20歳も年上だった。


 「なんで保母さんを辞めたの?手堅い職業じゃあないか。」という私の問いに真由美は


 「辞めたくて辞めたんじゃあないの。資格を取ったのが34歳の時で、働き出せたのが1年ちょっと前だったの。年齢が経ってからの就職って厳しくて、雇ってくれる施設がないの。それで産休の人が戻ってくるまでの期間だけっていう条件で働いたの。だからその人が戻ってきたら、また無職になっちゃたの。」


 「旦那さんはいないの?」


 「いるわよ。職人、彫金師をしている。ずっと前から滅多に帰ってこないの。職場に寝泊まりしているうち、他に女が出来たみたい。いわゆる別居状態ね。」


 「子供はいるの?」


 「うん、男の子が二人いるけれど冷たいものよ。主人に似て滅多に帰ってこない。17歳と14歳よ。」


 真由美は化粧を落とし、素顔を露わにすると想像よりもさらに若くて美しかった。やや痩せた身体つきにうなじが長く、髪型はロングのストレートで、若作りしていると言えばそう言える。それに清楚に見えた。


 特徴的なのは黒目がちの瞳が輝いていて、内に込めている情熱らしきものを感じ取れるほどであった。


 「そんなに就活って難しいの?」


 「うん、だって、どうせ採用するのだったら若くて新卒の方がいいでしょう。だからね、思いきっり履歴書に細工したの、私ってすごいのよってね。」


 「なんて書いたの?」


 「ナイショ!でもねバッチリ決まったの。でね、辞めたところの職場から連絡があって戻れそうなの。もし欠員ができたら絶対にお声がけしてくれるっていう約束だったの。」


 はにかんで喜びを露わにしている真由美の頬と長い髪が少しだけ艶を与えていて、年齢を若く見せている。


 「じゃあ、スナックのホステスはもうちょっとで終わりなんだ。」


 「多分ね、やっぱりお日様の下で働きたいもん。モグラじゃあないんだし。そうだ、遼ちゃん、あんな呑み方をずっとしていたらすぐに死んじゃうよ。ダメよ。」


 昨夜、飲みに誘ったのは紛れもなく真由美であるが言い返すのはやめておく事にしよう。


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