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第23話 ギャンブル好きの家系とアルコール好きの家系から生まれた子

 「桑名さんって放射線技師なんでしょう。病院に勤めているのに誰も飲み方の異常さを指摘してくれなかったの?」


 看護師は私を追い込んできた。


 「確かに肝機能の異常は二十歳代前半から指摘されていましたし、血圧も高いって言われていましたよ。でもね看護師さん、あなただって同じだと思うけれど、医療従事者が自分の勤め先で検査を受けて、異常な数値が見つかっても医者って、言わなくてもわかるよね、飲みすぎたんでしょう。って腹の中で思っているだけで、別段、指導なんてしないでしょう。 私がもし癌になったとしても、医者より先に自分の画像診断が出来ちゃうから癌告知の意味なんてない。」


 私はそう言い返した。


 「でもね、桑名君、ひとつひとつを掘り下げて欲しいの。あなたは私より医療者としての経験が長いんだし、アルコール依存症が繰り返しの病だってことも知っているでしょう。私たちナースだって患者さん達に社会復帰してほしいって願っているの。でもね、退院します、さようなら、お世話になりました。って言って、たったの1週間で舞い戻ってくる人が多すぎるの。」


 看護師はさらに続けた。


 「桑名君ってご両親のどちらもいないのよね。お母さまって、なんで亡くなられたの?」


 


 「遼平、おまえは医療者なのにどうして気付かなかったんだ!」


 十数年前の父の通夜のあとにも同じ言葉を投げつけられた。3年ぶりに会った母方の伯父にあたるこの人に容赦という言葉はないようだ。


 私の父も母も酒は飲まない。ただ父方の兄弟たちは父も含めてギャンブル好きだった。

父は亡くなるその日まで競馬を楽しんでいたし、同じ母親から生まれた弟も小遣いの中でパチンコ屋に通っていたそうだ。


 腹違いの三男は賭け麻雀で身を滅ぼすことになる。


母は十人兄妹の末っ子として生を受けた。


「産んでも産まなくても、どっちでも良い子」だったそうだが、出来ちゃったからには産んじゃった子供だったらしい。 十人兄妹はちょうど5対5の男女比で「よくもまぁ、うまいこと産み分けが出来たものだ。」だっだそうだ。


 男兄弟は皆、アルコール好きであり世代を超えて嗜好が遺伝し、私に受け継がれた。姉妹の中には一人だけ福島の場末でスナックを営んでいる者がいるらしいが、好きでアルコールを口に運ぶ女性はいなかった。


 日本にはアルコールの匂いがする街というものがある。


土佐、新潟、福島、なんとなく繋がっているような気がする。


 今にして思えばギャンブル好きの家系とアルコール好きの家系が相まって誕生したのが私であると言える。


こういう事に気が付いただけでも『酒歴発表』の原稿を書いた意味がある。

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